第2話 目覚め 2 惑溺
アスペクト比2. 35:1のスコープ・サイズのマドわくが、カベのサイズで、はまっています。レースのような
みはるかすクラランの街。
船はほんらいの
いつものように、ソルの心は共有(授業)からはなれ、一人歩きをはじめていました。
空想のなかで、ソルは
「きけ、今あかす」
「
「かくじの
「
「なにもないものは、死を
クロス・ボーンのドクロの
ラッパ口の
夜ふけて彼は一人、
もう見あきた
「ドッ」
「そりゃ、だれかが
そう、彼はつぶやいた。
かんおけみたいにデカい、キズだらけの
ホヌ(海亀)の
×月○○日 べたなぎの
そもそも今回は、出だしから
×月○△日 とつぜんヘヤの中が暗くなった。日ぐれにはまだ早い。ほほをマドにおしつけのぞきこむと、
生臭く、湿った空気。カミナリを孕んだ黒雲。うねり狂う海。風紋が横に走る壁波が、眼前にそそり立つ。船は大波をよじ登りはじめ、泡立つ頂点へ至る。あまねく三角波を見はるかし、待ち受けるコンクリートの海面へ真っ逆さま。
「ギャーーーーーース」
雷鳴と雄叫び。
雷雲と見誤った、灰色の羽毛に覆われた翼は水平線を隠し、青白い光を帯びて羽撃けば、轟と共に海神の三叉の鉾を落とす。
一羽撃きで小舟を空へ吸い上げる竜巻は、帆をズタズタの端切れに変えていた。甲板に水夫の姿は見あたらず、何人海にのまれ、空へ舞ったか分からない。上も下もなかった。
マストも舵も折れた。泡立ち逆巻く波は、見る間に黒い
「…………ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「ねぇ」
「ソルゥ」
「ねぇ」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「ねぇ」
「……」
目の前を、フリルでもられた
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「やくそくしたよねぇ、
「……」
はなしなら聞いてたじゃん。とソルは思っていました。
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「
「……」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
シュザンヌが、ラメでキラキラした目をパチパチさせながら、しゃべっています。
「ソルはぁ、わかっているのかなあぁ?」
「……」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
ソルはシュザンヌの、
顔のまんなかに
ソルなら、話はちゃんと聞いています。
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
ルームはいつも、にぎやかです。子らは
人々にとって、アーカイブ化は
「ドコかで、ダレかが、ナニかによって、ジドウテキに、そのツド、コマメに、バックアップしてくれているハズ」
その気になれば、
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
シュザンヌは
「……」
「……」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
二人でちょっと、だまっていました。
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「ジュリとは、ちゃぁんと、はなしてるぅ?」
「……」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「ねぇ、ジュリとちゃぁんと、はなしてるぅ?」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「……」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
もう、ここまでノイズが大きくなると、
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「××★△■○Хと☆◆!」
基地外じみたキセイが、シュザンヌの
「▲◇★☆☆彡◎◆×!」
それへキセイでおうじたひょうし、背中と背中がぶっつかりました。
「ちゃぁんうっ!」
シュザンヌの声がふるえ。
「――うんとジュリと
いいつづけた後、ニガ
「んんもぉう、ダメじゃない」
ソルにむきなおり。
「ジュリと
聞きなおしました。
「……」
「……」
ジュリの方をむき。
「ジュリィィー、たのむよぉー、ジュリィィー」
りょう手を合わせ、おねがいポーズでいいました。
「ふえぇぇぇー?」
ジュリが大げさにのけぞったまま、ふりかえらず
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「たのむよぉー、ジュリィィー」
ほほえみながらも、合わた手のひらをハートマークにかえました。
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
「ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ……」
なぜ自分にだけ
「バイン!」
くぐもった音と同時、
ルームは、ちょっとしたパニックになりました。泣きだした子を中心にして、女子が
「どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ、どよ……」
「あーうるさい。うるさい、うるさい。とにかく、うるさい!」
心の中で、さけびつづけるソル。彼はほんとうに、うるさいのが大キライでした。このうるささにも、彼は
ちょうどさっき、彼は見ていました。マドが暗くなる
クルクルまわる青い
クモはおなかから、白いアワをふきだしました。
「プビョプビョプビョ」
黒い
「プビョプビョプビョプビョプビョプビョ」
子らとシュザンヌは、いつまでも見とれていました。
「プビョプビョプビョプビョプビョプビョプビョプビョプビョプビョプビョプビョプビョプビョプビョプビョ……」
ツツジの花びらには、赤、白、ピンク、ストライプ、まだら、などがあり、かりこまれた
かがんだままでいて、つかれてしまいました。クッションのきいた花ダンで一休み。
立ち上がってまた、さいかいします。ねんのため、
ゴミかとおもったそれは、たしかに生きています。ソルが、はじめて
「これ、さわんのかよ」
はじめて、そのことに気づきました。でも、もう時間がありません、だいぶたっています。しかたなくかくごをきめて、りょう手をつっこみます。
鳥はつかんでも、あばれませんでした。
このまま、にぎりつぶすこともできると、ソルがかるく
「うっわ、スゲッ」
「うっわ、スゲッ」
ジュリがとびのき。
「チョっ、こっち、むけないでよ!」
「……」
人はあいてを
「げぇー、すげぇー」
「うっわ、すげー」
「……」
「しらないんだ、こんなことして」
「……」
「いいと、おもってんの?」
「……」
「かってなこと、しちゃいけないんだよ」
「……」
彼は歩きだしました。
「チょっ、どこ、もってってんの?」
ふりかえって、
「リトリート」
――といいました。
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