第14話 チュートリアルが終わりました

「ルシエラさん、ここら辺の魔物は大方狩り尽くしたと思います。」


 ルシエラさんに言われた通り、魔物を狩り終えた俺は報告に来ていた。

 俺としては、ダンジョンが襲われる心配もせずに居られるこの状態のままが良かったのだけれど。


「うむ、よくやったのじゃ。今のお主なら十分一人前のダンジョンマスターとして活動していけるのじゃ。」


「あんまりダンジョンマスター的な活動はしていないんですけど……こんな俺でも大丈夫ですかね?」


「うむ、真竜の一角たるこの我が保証してやるのじゃ。魔王にでも狙われない限りはお主の守護者だけでも十分に活動していけるのじゃ。」


「えええ……エクレアくんだけじゃあ流石に無理だと思うんだけどな……」


「守護者ってお師匠様と一緒に居たあのブラックウーズですよね? ブラックウーズのランクはBですから、ベテラン冒険者にでも襲撃されない限りは大丈夫だと思いますよ。」


 ブラックウーズの癖にランク高っ!

 スライムが進化しただけなのに……

 スライムって弱過ぎてが進化する事なんて滅多に無さそうだし、そんなもんなのか?


「うむ、お主が心配し過ぎているだけじゃ。それにダンジョンが襲われたらメッセージが届くし、【帰還】を使えばいつでも防衛出来るじゃろ。」


「あ、メッセージとかも来るんですね。それなら確かに大丈夫そうですね。」


「最後に何か聞きたい事はあるか? 今なら何でも答えてやるのじゃ。」


「えーと、そうですね、影の俺が進化したらどうなるんですか?」


「うむ、知らない事は答えられないのじゃ。」


 うん、そんな所だと思ってたよ。この竜って言葉遣いだけは格好付けてるけど、声色からしても恐らく子供だと思うし。


「じゃあもういいです。」


「そ、そうか? もう少しだけ何か話したい事はないのか?」


 いや、そんな目で見つめられても困るよ。

 聞きたい事なんてもう無いし……無理やり何か捻り出そ。

 えっと……?

 うん、やっぱり何にも無いな。適当にアドバイスでもして貰って顔を立てよ。


「あ、じゃあ最後に役に立つアドバイスとかをお願いできますか?」


「そうじゃな……契約者と瓜二つの身体で人前に出ると少し都合が悪いかもしれんな。人間の世界に行くならこれでも付けるがよい、ほれ。」


「あ、ありがとうございます。」


 そう言って渡されたのは、狐の仮面だった。

 ……寧ろこんな仮面を付けている方が厄介事に巻き込まれそうなんだけどなあ。

 別に双子って設定で通せばどうとでもなる気がするし。

 まあ、一応は貰っておくけど。


「えっと、ダンジョンの移動ってどうやるんですか?」


「その契約者も含めてダンジョン内に入ったら我が勝手に終わらせるから、気にする必要は無いのじゃ。ここを離れて良いのなら、ダンジョンに入るが良い。我が良い立地に移動させてやるのじゃ。」


「あ、はい。あの、今までありがとうございました。ルシエラさんの事は忘れません、余裕があったらまた顔を見せにきます。」


「う、うむ。お主が死ねばもう二度と会うのもこれで最後になる。という事で、我のとっておきの本当に役に立つアドバイスじゃ。お主は強さも相まって油断しているようじゃが、アストラル体だからといって油断していると死ぬ。それだけは気をつけるのじゃぞ。さらばじゃ。」


 あ、影に対しても攻撃する方法って存在するんだ……

 一応気をつけておこう。


「じゃあ、行こうか。」

「はい、お師匠様。」


 ダンジョンの扉を開けて、俺とエリスの二人が入り終えて直ぐに、ダンジョン全体が上下に大きく揺れ始めた。

 そして数秒間揺れ続けた後、徐々に震動が和らいでいき、静寂が流れる。


「終わったみたいですね。」

「そうだね。」


「……あの、僕の存在は無視ですか? 折角復活したというのに。」

「あ、ごめん。ダンジョン内がスライムとウーズだらけだったから気付かなかった。結構増えてるな。」


 今のダンジョン内には数十匹もの配下で溢れていた。

 ポータルが結構頑張ってくれたんだろうなー。


 そしておまけにエクレアくんも復活していた。

 俺の時間感覚は狂い気味だから分からないけれど、リスポーン時間って案外短いのかもしれない。


「それより、今しがたダンジョンの引っ越しをしたんだ。一回外に行ってみよう。」

「はい!」

「あ、そうなんですか。僕も気になります。」


 ダンジョンの扉を開けると、そこには地平線まで続く平原だった。

 ひえー、こんな何にも無い所に立地しているのか。

 こんな田舎に国なんて作れるのかなー。


「あ、お師匠様、一度街へ戻っていいですか? ダンジョン調査の報告に行かないと追加の調査隊が来てしまうので。」

「うん、いいよ。じゃあエクレアくん、留守番よろしく。」


 ダンジョンの防衛は必須だろうし、エクレアくんは見た目が魔物だから随行も出来ないだろうから、許してね。


「……まあ僕は出来るだけ安全な所に居たいですし、いいですよ。適当にダンジョンを大きくしておきます。」


 街には人も多いだろうし、冒険者にでもなれば多少は存在感も増やせるかな?

 多分正体がバレると魔物扱いだろうし、気を付けて行こ。

 俺とエリスの二人で外界へと出ていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る