第15話 襲われている村を救ってみました1
エリスの調査報告を終えるために街へ向かわなければならないのだが、そもそもここはどこなのだろうか?
ルシエラさんは良い感じの立地って言っていたから、恐らく近くに人間は住んでいんだろうけど……。
「エリスはここがどこなのか分かる?」
「いえ……でも気候や植生から顧みるに王国に近いとは思います。」
「なるほど……」
【魔力感知】には小規模の集団を3つ程補足しているのだが、一つは移動しているから明らかに村では無いし、向かうなら動いていない方の集団なんだろうけど、どっちがいいかな。
俺の予想だと、移動している集団は隊商で、向かっている先がある程度の規模の街があると思うんだけど、この世界に詳しい訳でも無いからなー。
一応エリスに聞いておこうかな。
「大きく分けて3つの魔力反応があるんだけど、村っぽいのと、村っぽいのと、その一つの村っぽいのに向かっている集団。どこに向かうべきかな?」
「集団が向かっている村じゃないですかね? 小規模な村にはあまりキャラバンは立ち寄りませんから。」
「やっぱそうだよね。じゃあ俺の手に捕まって、飛んでいくから。」
「え、本気ですか? 落ちたら死にますよ?」
「いやいや……落とさないから! それに今のエリスの身体能力って相当高いと思うよ? 多分片手で鋼鉄捻じ曲げれるよ? そんな簡単には死なないよ!」
「それはお師匠様の言葉でも嫌です!! まだ強くなりたいんです!!」
あ、本当に嫌そうな顔してる……気絶している間に空なんて比にならない程の所を降りてきたのに……
まあ急いでいる訳でも無いし、歩いていけばいいか。
ダンジョン周辺の生態とかも一応見ておきたいしね。
「まあそこまで嫌なら諦めるよ。歩いて行こっか。」
「それでこそお師匠様です! 一生付いて行きます!」
どうせ俺とエリスは契約者だから、配下と違って嫌われる訳にはいかないからなー。
いや、配下にも嫌われちゃ駄目か。悪逆非道だと裏切りとか起こりそうで怖いし。
それでもやはり、飛んでいる方が景色も綺麗で良いと思うんだけどな……
何も変わらない景色の中で長々と歩き続けながら、俺は少しだけ後悔をしていた。
俺と違ってエリスはこういうのには慣れている様子で、鼻歌を歌いながら軽快に歩みを進めていたけれど。
そして小一時間程歩き続けるて、やっと景色が変わって川や森が見えてきた。
どうやらここら辺の森は燃えているらしく、森が見えてくる辺りで空が時刻はまだ朝だというのに、まるで夕焼けの様だった。
「ここら辺の森って燃えてるんだねー。こんなに激しく燃えていると森が焼け野原になりそうなのに凄いね。どういう理屈で燃え続けていられるんだろう?」
「いえ、お師匠様……これは普通に森火事だと思います。」
あ、そうなんだ。
物凄いアホみたいな発言をしちゃった……
エリスには折角師匠なんて慕われているんだからこのままのイメージを維持出来る様にもう少し気を付けて発言する事にしよ。
「今気付いたんだけど、村だと思っていた集団の数が減ってる気がする……しかも3割くらいも。もしかして村に向かっていたもう1つの集団って盗賊団とか何かじゃないかな?」
「確かに火事も起きていますし、何か変ですね。あの、急いで向かいましょう! 飛んでもいいので!」
結構格好良い性格してるんだな。
まあ急ぐ理由があれば受け入れてくれるって事なんだろうけど。
まだ小さいのにそういう心意気は偉いね。
「俺の弟子なだけあって格好良い所あるじゃん。じゃあ飛ぶよー。」
「あ、やっぱり待って――」
「そう言うフリは無視させて貰うよ? 村が滅びちゃったら少しだけ気分が悪いからね。」
影の翼を勢いよく羽ばたかせ、空高くへと飛翔する。
「高いです!! 高いです!!」
「そんな事言ってると気絶しちゃうよ? まだまだ加速するんだから。」
そう言いながら何度も翼を羽ばたかせて村へと向かっていく。
下を見てみると一面火の海へと化していた。
うわぁ……これって盗賊団側もただでは済まそうなのに、よくこんな事が出来るなあ。
こんなんでも盗める物があるのかな?
「これって、大丈夫ですかね……?」
「いや、大丈夫じゃないでしょ。」
俺がそう答えると、エリスは己の無力さを歯噛みしている様だった。
流石に赤の他人の死にまで自分の責任を感じる必要性は無いと思うけれど。
まあ未だエリスは子供だし全ての事を完璧にこなせない限りはそういう風に感じるのかもしれない。
俺としても罪の無い人間が殺されるのは少しは不快な気分になるけれど、それでも世界は弱肉強食なのだから仕方が無い側面もあるのだろう。
「あ、見えてきました。魔物に襲われているみたいです!!」
エリスが指さした先には、羽が生えた魔物、恐らくは悪魔とでも言うべき存在がいた。
そしてその魔物は逃げ惑う人間を襲っている様だった。
「エリス、二手に分かれても大丈夫か?」
「そうした方が多くの命を救えますよね……任せてください!」
「じゃあ落とすよ。」
「え、ちょっと待ってくださ――」
「ちょっとは自信を持って行動してみなよー。」
俺はそう言いながら、飛ぶ事への恐怖を克服してくれる事も願いつつエリスを地面へと落とした。
このドッペルゲンガーの身体能力から無傷で着地出来る事は明白だし、まあいいよね。
……今はまだ問題無いけれど、多くの命を救う、か。
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