第9話 一歩外へと出てみよう

「あ、そういえば、僕が進化した事で魔物のポータルを作れるようになったんじゃないんですか?」


 ふと思い付いた様に、エクレアくんはそう口走った。

 確かに今ならスライムのポータルは作成条件を満たしている気がするけど……

 DPが足りないのではないだろうか?

 俺が倒した魔物ってヘルハウンドだけだし。

 まあ早めに作るほどお得ではあるらしいし、一応見ておこうかな。


「ダンジョンマスター」


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 ダンジョン名:影の迷宮

 守護者:0(召喚可)

 広さ:最小(拡張可)

 階層数:1(拡張可)

 形状:神殿

 ダンジョンポイント:10000

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 おお、DPめっちゃ増えてる!

 ヘルハウンド1体で10000DPも入るのか。

 これだけのDPがあれば、スライムの守護者の20体作れるよね?

 あと2,3体作っておこうかな。


『1つの階層に1体しか守護者は設置出来ません。』


 そういう制限も存在してるんだ……

 まあ、いくらでも守護者を召喚出来るなら無限に復活し続ける魔王軍を作れてしまう事になるからだろうね。

 誰目線で反則なのかは分からないけれど、確かに反則な気はする。

 俺は大人しく魔物のポータルを作りますよーっと。


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召喚可能ポータル一覧

スライムのポータル:1000DP

ウーズのポータル:1000DP

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 何とも言い難い、安いのか高いのか判断し難い値段設定だった。

 でも強くなればいくらでもこれくらいのDPは手に入るだろうし、どんどん使っていっても問題は無い気がする。

 ということで、取り敢えず両方とも5個ずつ作ろっかな。


『ポータルは5つまでしか設置出来ません。』


 ……本当にダンジョンに関するは制限多いな。

 まあいいや、じゃあスライムのポータル3個とウーズのポータル2個でいいかな。

 ポチっと。


 俺が召喚を押すと、5個の大きめな水晶が出てきた。

 スライムのポータルは水色、ウーズのポータルは緑色の水晶だった。

 大きめと言ってもダンジョンコアには遠く及ばない、手の平サイズなのだけれど。

 暫く見つめていても、何も出て来る様子はない。

 ルシエラさんが一日6体って言ってたから、最初に生れるのは4時間後ってことかな。

 最初に配下の産まれる姿を見たかったから少しだけ残念。


「これがポータルですか?」

「そうだと思うけど、魔物の生成間隔はあんまり早くないらしいからね。」

「そうなんですか……では、今度こそ狩りに行きましょうか。弱い魔物からですよ?」

「分かってるよ。」


 でもエクレアくんは弱い魔物って簡単に言うけれど、具体的にはどこへ向かえばいいんだろ?

 少なくともここら辺にいる魔物の魔力量は今のエクレアくんの魔力量よりも遥かに大きいから駄目だと思う。

 普通にルシエラさんに聞くべきなのかもしれない。


 という事でダンジョンの外に出てはみたものの、相変わらずルシエラさんは寝ていた。

 帰ってきた時も寝ていたし、この竜は用事が無ければ一年中寝ているんじゃないかな。

 まあいいや、起こそ。


「あのー、ルシエラさん、起きてください。……おーきーてーくーだーさーいーっ!!!」

「な、何じゃ耳元でっ! そ、そんなに大きな声で叫ぶでないわ! 我はそこまで耳が遠い訳じゃないのじゃ! まだピッチピチなのじゃ!!」


 俺の声が少し怖かったようで、体を起こす前に全身をブルっと震わせていた。

 おまけに目元に涙まで浮かべていた。

 ってこれは眠かったからかもしれないけど。


「あのー、俺の守護者のエクレアくんのレベル上げに行こうと思っているんですけど、弱めの魔物が出現する場所って知りませんか? 出来たら近場で帰ってきやすい所がいいんですけど。」

「うーむ、ここの近場だとそんな場所は無いのじゃ……お主はダンジョンマスターだから帰還も使えるし、そこの守護者も死ねば戻ってこれるじゃろ? 遠くてもよいのではないのか?」


 そう言えば【帰還】なんてスキルもあったっけ。

 確かに無理して近場を選ぶ必要も無いのか。


「じゃあそれなりに遠くてもいいです。」

「僕は嫌ですよー!! デスルーラなんてしたくないですよー!!!」

「うるさい、配下でしょ、我慢してよ。」

「まるでふんたーみたいな言い方ですねっ!」


「じゃあ弱い状態で襲撃されて殺されたいの?」

「……いいでしょう。僕は最強の守護者になります!!」


 それだけで納得してくれるんだ。

 エクレアくんチョロっ。

 まあ元から配下なんだし、それくらいでないとね。


「話は済んだようだし、送ってやるのじゃ。準備は済んでおるのか?」

「あ、はい。俺は大丈夫です。」

「僕も大丈夫です。」

「それなら我の背中に乗るのじゃ。」


 ルシエラさんの背中まではかなりの高さがあるけれど、エクレアくんはひょいっとジャンプをしていた。

 あの丸っこいボディーのどこにそんな力があるんだろう?

 それと、ルシエラさんの背中が蒸気を上げながら溶けていたけどいいのかな?


「では行くのじゃ。」


 ルシエラさんは羽を徐々に羽ばたかせ初め、上昇していく。

 こんな狭い所を通って行けるのだろうか、

 そんな風に考えていたら、想像と違った。


 スピードを更に加速させながら、洞窟の天井をぶち壊していく。

 俺は当然何の影響も無かったけど、エクレアくんはぺちゃんこに潰れていた。

 到着しても死んでなかったら、慰めてあげようと思った。

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