第5話 狼を追っ掛けてみよう
ルシエラさんからの説明を受けた後、俺とスライムくんは二人で洞窟の中で散策を開始していた。
今回の主な目的は2つ。
1つ目はあの狼に復讐をする事。
今の俺は攻撃する事だって出来る訳だし、あの狼は俺自らボコボコにしてやりたい所だ。
あれだけ俺に付き纏って来たんだから、それ相応の報いを受けて貰わないと納得いかないよね。
そして2つ目はスライムくんのレベル上げだ。
スライムくんの魔力量? ランク? が上がる事でスライムを量産出来る様になるらしいから、その為にもあの狼は狩る事には意義があるだろう。
魔王軍を結成するにあたって、ポータルは必ず必要になるだろうしね。
とは言っても、魔王軍の構成員がスライムか……あんまり格好が良くないな……
それにスライムの軍団が国を取り囲んだところで、あんまり存在感が向上しない様な気もするけど……まあ居ないよりはマシ、かなあ。
「あの、マスター、この洞窟の雑魚敵、おかしくないですか? ドラゴン、巨大な蜘蛛、血染めの熊。明らかに終盤のモンスターじゃないですかね?」
「そうかな? 少しだけ見た目が厳つい普通の魔物じゃない?」
スライムくんはどうやらここの魔物に不満があるらしかった。
確かに、俺もスライムくんも特別強力な攻撃手段がある訳では無いし、ここの魔物は今のは少しだ厳しいかもしれない。
とは言っても、やはりそこまで恐れる程でも無い気がする。
ルシエラさんに何回でも復活出来るって事を教えてもらったんだから、死ぬというのは大した問題では無いだろうし。
それに、ここにいる魔物は見た目が少しだけ強そうなだけで、どうせ斬ってしまえば他の雑魚と同じなんだから。
「まあ確かにスライムくんにとっては怖いかもしれないけどさ、俺という存在を頼りにしてくれても構わないんだぜ?」
「格好付けて言っても、マスターは単なる影じゃないですか。出来る事だって数秒の実体化と手だけが出せるだけですよね……」
むぅ……これでも俺はマスターなんだから、もう少し頼りにして欲しいな。
まあ俺の素晴らしさを間近で見ていれば、いつかは尊敬の念を抱く様になるか。
「大丈夫だよ。俺達が今狙っているのはただの狼なんだからさ。スライムくんの体当たりでワンパンだよ!」
「ワンパンって言うよりはワンタックルじゃないですかね?」
「そんな細かい事はいいの。」
これから戦うのはセクハラストーカーの狼、スライムくんでも問題無いと思う、思いたい。
それに、あの狼を倒せないとこれから先、スライムくんの成長も見込めないし。
スライムくんが強くなれば、ここにいる魔物達を倒してDPも獲得出来る。
そう考えるとやはり最初に狼を狙うのが最善手だと思う。
という事で、現在あの狼を追跡中だった。
あれだけしつこく追い掛け回されたんだけあって、あの狼の魔力を見分ける事は簡単だった。
今も直ぐそこで動きを止めて休んでいるのが目でみているかのように分かる。
積年の恨みを晴らしてやる! 覚悟しておけよ!
「マスター、やっぱり最初にその狼を狩りに行くの止めませんか? まずはスライムとかでレベル上げをした方がいいんじゃないですかね?」
「どこにスライムなんているの?」
「……居ないですけど……それでも僕としてはスライムとの一騎打ちを切望します。」
「あっそ。じゃあそろそろ狼に接敵するから。【
俺はスライムへと変身し、臨戦態勢へと移行する。
視覚が機能し始めて、薄暗い洞窟が見えてくる。
鼻には空気が、臭いが流れ込んでくる。
辺りには血の匂いが充満していた。
空気中に血液の一部が溶け込んでいるんだ。
そして魔力の濃度も同時に濃くなってきているのを感じた。
「あの、マスター? ここだけ雰囲気が違いませんか? 本当に狼なんですか?」
「……少なくとも形状は狼な筈だよ。俺も血生臭いのには気が付いているよ。大丈夫だって、スライムくんは死んでも生き返るんだから。」
「でも死ぬ時は絶対に苦しいですよ!? 出来る限りは死にたくないですよ!?」
「復活するんだからあーだこーだ言うなよ。守護者なら守護者らしくマスターに付いて来なさい。」
まあ確かに死ぬ時は苦しいだろうけど。
そんな事を気にしていたら、あの狼とは戦えない。
覚悟を決めて、真っ直ぐに伸びていた洞窟の曲がり角を左へと曲がる。
そして最初に見たのは、俺達が来る事を事前に知っていたかのように、こちらを警戒して視線を置く狼。
全身に鎖を巻き付け、口元からドス黒い地獄の業火を吐き出している狼、ヘルハウンドだ。
「えっと、あれは!?」
「まずは回避だろっ!! 馬鹿っ!!」
それを見て瞬時にスライムくんの体を元の道へと押し戻す。
がしかし、俺の体までは退避出来なかった。
超好熱の炎が俺の体を焼け焦がし、
まあいいよ、俺は影に戻るだけだし、痛みも無かったからね。
それに、MPが続く限り
でもあの狼、というよりは犬か。
あんなに強かったんだ。
犬が炎を吐くとか、それって反則じゃないか?
まあそれでも何度でも身体を作る事が出来る俺もチート地味ているけど。
「マスター!! あれって狼じゃないですよね? ヘルハウンドですよ!! 狼じゃなくて魔犬じゃないですか!! 殺されますよー!!」
「それよりも焼け焦げにされた俺の方を気にしてよ。」
「マスターは影じゃないですか。それよりもこれから殺される僕の方の心配をっ!!」
「何言ってんの? これからあいつを倒しに行くんだよ?」
「だったらマスター一人で……あっ、ヘルハウンドに
なるほど、仲間に
「よっしゃ、行ってくるよ!」
「頑張ってください。」
俺は影に戻り、ヘルハウンドへ忍び寄る。
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