第4話 ドラゴンに話を聞いてみよう。

 ……ダンジョンの扉は閉まったままなのだけど、スライムくんってどうやって通る気なんだろ?

 少なくとも俺が人間だったら通れない気がする。


「スライムくん、ここ通れる?」

「一応僕だってスライムですよ? 体は柔らかいと思います。あと、普通に開けばいいじゃないですか。」


 ああ、確かにその通りだ。

 影として生きてきた影響で考え方が変質してるんだ……少し意識して気を付けなければ。

 そもそも俺の前世は人間だったのかどうかが定かでは無いんだけど。

 あ、でも実体化した際はやっぱり人間だったし人間か。


「マスター、先行きますよー?」

「あ、うん、どうぞー。」


「きやぁあああああ!!!!!!」


 先に行ったスライムくんの悲鳴が聞こえてきた。


 どうやら何かが緊急事態にでも直面しているらしい。

 もしかしたら狼に奇襲された可能性もある。

 急いで助けに行かなければ! って、あれ……?


 急いで駆けつけてみると、スライムくんは泡を吹いて気絶しているだけで、外傷などは無そうだった。

 でも、どうしてこんな状態で気絶しているんだ?


「あの、ドラゴンさん、どうしてスライムくんは気絶しているんですか?」

「我はドラゴンではない。ルシエラという名前なのじゃ。」


 いや、名前とかはどうでもいいんだけど……

 ドラゴンなのに一々名前なんてあるんだ。

 でもプライドは高そうだし覚えておいてあげよ。

 ルシエラね、おけおけ。


「あの、それでどうしてスライムくんが気絶しているんですか?」

「初めて竜を見た反応としてはこれが普通なのでは無いか? お前を付け回していた狼も我が目を覚ました瞬間に逃げていったぞ。」


 えええ……スライムくん情けなさ過ぎるよ。

 まあスライムだから仕方が無いのかもしれないけど……


 それとも本当に俺が図太いだけなのかな?

 まあ確かに、影になってから何が起きても死にそうには無いって思ってはいるけれど。

 多分、死ぬ前から俺はドラゴンとか怖がっていなかったんじゃないかな?


「そういうもんですかね。」

「そういうものじゃ。お主の精神が図太過ぎるのじゃ。それにしても随分と遅かったのう。」


「そうですか? 30分くらいしか経っていませんよね?」

「十分過ぎる程長いのじゃ。3分くらいで出てくると思ってたのじゃ。待ちくたびれたのじゃ。」


 スキルを試していたり、新しいスキルの獲得とかあって楽しかったからかな。

 楽しい時間って早く過ぎるって言うしまあ仕方が無いか。


「はあ、そうですか……それで、どうして俺なんかを待っていたんですか? 暇なんですか?」


「ダンジョンの説明をする為に決まっておるのじゃ。我のが勧めでダンジョン経営を始めたというのに失敗されては目覚めが悪いしのう。説明、聞きたいじゃろ?」


 確かに説明が少なすぎるとは思っていたけど、この竜が教えてくれるのね。

 このままダンジョン経営とかをすることになったら詰みそうだとは思っていたけど、それなら最初に説明をしておいて欲しかったな……

 でも言い方から察するに、話し相手が欲しいんだろうな。


「おい、心の声が聞こえているぞ。そんな風に憐れむなでないわ!」

「おっと、聞こえているんでしたたね。もう少しプライバシーに配慮して欲しいです。」


「別に常時盗み聞きしている訳ではないのだが……。まあよいわ。それより聞きたい事はあるか?」


 聞きたい事か……個人的には魔王軍を作って存在感を増やしていきたい所だけど、守護者を量産するにしても圧倒的にダンジョンポイントが足りなさそうなんだよね。

 ダンジョンポイントの獲得の仕方を聞いておくべきかなー。


「ふむ、確かにダンジョンポイントについては知っておくべきであろうな。

 ダンジョンポイントの獲得方法は主に3つなのじゃ。

 まず1つ目は冒険者を倒すことじゃな。その冒険者が持つ魔力量がDPに変換されるのじゃ。

 そして2つ目は魔物を討伐することじゃ。こっちも魔物が保有する魔力量に応じて手に入る。

 3つ目は他のダンジョンマスターを倒す事じゃ。倒したダンジョンマスターが持っているDPを全て奪えるから中々に効率は良いのじゃが、そんなに多くはないから難しいと思うのじゃ。」


 なるほど、つまり普通に戦っていれば手に入るって事かな。

 まあ存在感を増やしていきたい俺にとっては勝手に得られるって認識で大丈夫そうだね。


「あとはあんまり無いですね。」

「守護者についても聞きたくはないか? あと魔王軍とかも言っておったじゃろ。魔物のポータルとかの説明も必要じゃろ?」


 魔物のポータル……魔物を召喚する奴かな?

 本当に魔王軍を作るなら必須になるんだろうけど……まあダンジョンマスターになんてなった時点で後戻りは出来ないか。

 

「じゃあそれも教えて下さい。」

「内容が少し複雑だから心して聞くのじゃぞ。

 まずDPを使って召喚する守護者とポータルで召喚出来る魔物は根本的な存在が違うのじゃ。

 まず守護者というのは育成する事が可能で、知性も有するのじゃ。

 しかし魔物は違って成長もしなければ、知性も持たない、基本的には本能と命令にだけ従って生きておるのじゃ。

 そして魔物のポータルを作るにはそのポータルが生成する魔物の魔力量よりも守護者の魔力量の方が一段階高い必要があるのじゃ。

 まあそう言う訳で、最弱のスライムを大量に作るとしても、そこで気絶しているスライムを育てる必要がある訳じゃな。」


 なるほど、守護者は育てていけば魔王の右腕とかにもなり得る。

 ポータルで作れる魔物は量産型のモブであまり強くはないと。

 でも折角育てた守護者に死なれでもしたら嫌だな……


「守護者は死んでも一定時間が経過する事でリスポーン、つまり復活するから安心するが良い。」


 じゃあ危ない所にも連れて行っても大丈夫だね。

 復活する所ってあまり想像出来ないけれど。


 俺は影だから無敵、スライムくんも復活出来るから無敵。

 つまり、俺達は最強なのでは?


「あとダンジョン外から守護者を連れてくる事も可能じゃ。やり方は……まあその時は我が立ち会ってやるから安心するのじゃ。」


 へー、じゃあ外でボス級の魔物がいたらスカウトしてみようかな。

 まあ連れてこないといけないならあんまり機会は多く無さそうだけど。


 他に聞いておくべき事ってあるかな?

 ダンジョン以外の事だけど、ステータスにある存在感についても聞いておこうかな。


「あの、存在感ってステータスがあるんですけど、どうやったら増えますか?」


「存在感? 聞いた事が無いステータスじゃな。適当に契約者でも作れば増加しそうじゃが……」

「その話もっと詳しく。」


「適当に人間の契約者にでもなれば、その契約者にとってはお主の存在が大きくなるじゃろ。人間に契約を申し出れば相手次第で契約が出来る筈じゃ。基本的には魔力の共有とかそんな感じの事が出来るのじゃ。他の方法と言えば、お主が言っていた通り魔王になるとかじゃろうな。」


 ふーん、人間と契約か。

 言うだけで出来るなら簡単だろうし、人を見つけた時は手当たりしだいに声を掛けていこ。


 その後スライムくんを実体化した手で叩き起こして、狼探しへと向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る