Ⅸ. 他の物書きさんを見ると萎縮する
このタイトルは、まさしく私のことです。
このコラムで散々人の作品を読んで云々と書き散らしてきたのに、こうなのです。
じゃあ読むなよと思うでしょう?
いいのです、今はスランプですから。
スランプから脱しようという意志すら最近失ってきていますし。
早速の脱線から本題へ戻ります。
私が書けていた頃は、できるだけ他人様の作品を読まないようにしていました。
他人様の素晴らしい作品を読んでは萎縮し、自作の至らなさに悲しくなるからです。
自分のような者がしょぼい作品を書いてどうなるんだろう、という虚しさに苛まれてしまいます。
そうやってインプットなしでいろいろ書いていると、文体が明らかに独りよがりで癖が強くなってしまうのを感じます。
そういうときは、書いているものとかけ離れたジャンルの商業作品、それもどう逆立ちしたって太刀打ちできない大御所の文学作品、さらに言えば、近年の創作の流行と雰囲気が違う海外ものを読んで、表現を学んでいました。
思うに、他人様の作品を読んでつらくなってくるのは、相手が自分と近いレベルだと勝手に思っているからで、その僅かの差で
「この人はこんなに面白い物語を書き、美しく表現している」
「この人は賞を取っている」
「この人は多くの読者に支持されている」
というのを見せつけられて、嫉妬し傷つくのです。あまり認めたくないのですが、自分の傲慢さからくるものだと思っています。
他人様の作品を読むと萎縮してしまうタイプの人は、行き詰まったときには段チ・ハイパー・エクセレントレベルの作品を読めば、悲哀を覚えることは比較的少ないはずです。
凄すぎるものには、嫉妬の入り込む間隙がなくなるのです。
当社比でしかないのですが、苦しまずに済みます。
危険なのは作品を読むことだけではありません。
私のようなタイニーハートぼっちは、読書量と見識を誇り広く創作仲間とお付き合いしている物書きさんをSNSなどで見てしまうと、胸がちくちくします。そういうリア充物書きさんの一人が
「こうして交友・知見を広めないといい作品は書けない」
と言っているのを見てしまったときなどは、もういい作品なんて書けなくていいと思いました。
作者の深い知識が基礎にある作品は、知的で重厚な匂いがして素晴らしいものです。
しかし、他者の声を遮断し、自分の世界だけをひたすら掘り下げていった作品の中から聞こえる声というのもよいものでしょう?
だからきっと大丈夫、と自分に言い聞かせています。
私と同じタイプの方へ。
執筆中に自分を萎縮させてしまうものがあれば、遠ざかりましょう。
書いている作品の中では神様でいられるのですから、その神性を傷つけるものごとから自由でいましょう。
何かあったら「ブロンテ姉妹」という、引き籠って妄想の世界を書き散らしていただけにもかかわらず大文豪になった英国姉妹のことを思い出してみましょう。
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