Ⅳ. 句点は文意に沿って設置
いろんな方の文章を読ませていただくと、たまに、うぐっ、と来るものにぶつかることがあります。
「句点打たないと死ぬ症候群」罹患者の手で著された、やたらめったら句点「、」を打たれた作品群です。
カクヨムをはじめとする小説投稿サイトだけでなく、ブログ、知恵袋などでもよく見かけます。
溺れかけている人の息継ぎを見るようでキツイです。
また、句点を打ちまくるという症状は年配の方に多いと聞きます。実際、一気に文章から若々しさが消えて、デジタル機器に不慣れな高齢の方っぽい雰囲気が醸し出されます。
例えば、私の作品『虹とトライフル』の一文を、軽度の「句点打たないと死ぬ症候群」風に表記するとこうなります。
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彼は、パズルでもやるように、保存容器の置き場を、あちこち替えて、冷蔵庫の奥にあったものを、目の前に引っ張りだした。
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句点というドラッグに侵されきった重度の人だと、一文節ごとに打ったりします。
もうそれは小説ではなく、助詞のついた体言や用言の羅列です。
句点は打たなくても死なないんですけどね。
おそろしく読みづらい文にはなりますが。
さらに句点については、まだまだ言いたいことが。
句点は、文にリズムを与えるだけでなく、文意のパーツを区切るために打つべきです。しかし、文のビジュアルを重視しているのか、何となく字数バランスのいいところで句点を打つ人がいます。
先ほどの文でバランス重視型の句点の打ち方を例示します。
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彼はパズルでもやるように保存容器の、置き場をあちこち替えて冷蔵庫の、奥にあったものを目の前に引っ張りだした。
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文の見た目のバランスを重視するあまり、違和感が発生しています。
このような、文意を毒し、文の美しさを損なう有害な位置に打たれた句点は身近に潜んでいます。かく言う私も逃れられてはいません。
このような句点の問題から逃れる手は、私は二つあると思っています。
一つは「長たらしい文は程よく切り、句点を控えめに」。
また例示しますと、
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彼は、パズルでもやるように保存容器の置き場をあちこち替えた。そして、冷蔵庫の奥にあったものを目の前に引っ張りだした。
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こうすれば、句点を打つ位置を少なく抑えられ、かつ主語述語、修飾部分と被修飾分の関係が明瞭で、読者さんに分かりやすくなります。
ついでに個人的な意見を言うと、長いセンテンスは文意にぶれが生じやすいので、どうしてものとき以外は書かないほうがよいと思います。
かといって、読点「。」でぶちぶち切った文を並べ立てられた作品は、読んでいると何だかイラッと来ることも多く、過ぎたるは及ばざるがごとし、どころか、及ばざるに及ばずという状態になります。
何ごともバランスが大事です。
そしてもう一つの手は「音読すること」。
必ずしも声を出す必要はありません。脳内で音声を再生しながら、句読点のpauseをやや大げさ目にとって読んでみましょう。
すると、文意が点にぶった切られておかしくなっているところを見つけやすくなります。
さらに、他人に読み上げてもらうともっとよく違和感を検出できます。ハードル高めですが、文章に精緻さを求める方は一度トライしてみてくださいませ。
そして最後に、例文のオリジナルの姿。
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彼はパズルでもやるように保存容器の置き場をあちこち替えて、冷蔵庫の奥にあったものを目の前に引っ張りだした。
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