第4話

「やあ、こんにちは。元気かい?」

 風のあいさつに、木の葉は無理に笑って答えました。

「僕はいつでも元気ですよ」

「そうだね。そうだったね。でも、変だよ。みんな変だよ。どうして誰もいないんだろう? この森は、以前からこんなに静かだったかい?」

 風は何も知らないのだ・・・。それが自分のせいだなんて、思えないのだろう。

「みんな、どこかへ行ってしまったんです」

 木の葉は静かに笑って、言いました。

「僕も行きたいんです。遠くの世界へ・・・。連れて行ってください。あなたと一緒に・・・」

 風は困ったように、木の葉の周りをぐるぐる旋回しました。

「でも、それは無理だよ。君はだって、しっかりと枝にくっついているし、枝はしっかりと木につながっているんだ。そこから離れるのは無理だよ」

 今、大樹の力は弱まりつつありました。木の葉もそれを知っていました。木の葉をしっかりと支えていた枝は、もうすでにその力を失っていたのです。次に強風が吹けば、それで最後だと、木の葉は感じていました。

「・・・連れて・・・いって・・・」

 その一瞬、木の葉は枝から離れ、空中を漂いました。ざざざざと音を立てて、大樹はいっせいに枝を揺らし、たくさんの木の葉たちが舞い落ちるさまは、まるで、吹雪のようでした。風は木の葉をもとの枝に戻そうとして、焦りました。下から吹き上げて、木の葉を吹き飛ばしました。

「どうして?」

 風は大樹に向かって叫びました。

「君の力はもっと強かったはずだ。それなのに・・・」

「・・・もう、死ぬんだよ」

 大樹は静かに応えました。

 風は、声を上げて叫びながら、ごうごうと吹いていきました。

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