デートしましょう

「……へ?」


 心底理解ができないといった表情で。

 先輩は、小さな子どもみたいな声を発した。


「先輩が振られて結社がクソ喰らえなので僕とこれからデートしましょう」

「あの、私が振られた話と、結社と、その、……木守くんと私が、デートする、ってことに、なにか一貫した関連性があるのですか――」

「先輩。クソ結社とはいつもどうやって連絡を取りあってます?」

「え。ガラパゴス型ケータイで……」

「ガラパゴス型ケータイって珍しいですね。興味があるので見せてくれませんか」

「えっ、うん……」


 先輩は、白衣の胸ポケットをごそごそしてクリアブルーのガラケーを取り出した。

 ……うん、なんかやっぱり思うけど、このひとこういうところ素直だよなあ。やたらに。



「古代の遺物!」



 僕は大きくそう言うと、その小さな端末を先輩の手から取り上げた。

 えっ、えっ、とわけもわかっていないらしい先輩はとりあえず放っておいて、ガラケーを開きカカカカとボタンで操作する。

 ……ああよかった、クラスの友人がオールドなマシン好きで。おかげさまで、こうしてこの端末を前にしても、戸惑わなかった。今度ドーナツとかおごってやるよ、友人。



 そんで素早く連絡帳を開き。

 結社、との登録名をすぐに見つける――やっぱりあんまりにもこういうとこ素直だ、先輩。

 ……登録されている番号が、じつはぜんぜん違うとかいうフェイクも、考えられなくはなかったけれど。うん。たぶん、ない。先輩だから、たぶんない――それより先輩がわれに返る前にやるべきことを済まさねばならない僕は、ボタンを押して、躊躇なくその番号に電話を――かけた。



『はい、こちら結社。どうした天宮、今日は来るのが遅いと思っていたら――』



 そんな電話の出方するのかよ。うっそだろ。

 はいこちら結社、って。


 心のなかでそんなふうに突っ込みつつも、僕はそっと深呼吸をした、……世間に名高い錬金術結社を、成り行きとはいえ敵に回すということに、なんも感じていないのかといえば、そりゃ僕だって多少は緊張しているさ、――そりゃ、ほんの多少はね。

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