怒り

 なんだよ、なんだよ、なんだよそれは。

 つまりそれは先輩の初恋を利用したってことじゃないか。

 女の子の初恋を――利用したってことじゃないか。



 しかも幼なじみだぞ。

 幼なじみ。



 たぶん、ずっと好きだったんだろうなあ。

 きっと、ずっと好きだったんだろうなあ。


 一途に、想い続けていたんだろうなあ。……天才だけど、どっかぎこちない、天宮雨音先輩のことだから。



 ああ、うらやましいな、……葉隠真が、うらやましい。

 僕がその立場だったら――ぜったい、振ったりしないのに。

 天才であることを理由に振るだなんて、たいした愚行だ。



 でもそれ以上の愚行を犯しているのは、やっぱり、どう考えたって、フォローの余地のかけらもない――結社だ。



 ……先輩は、恋愛相談室を開いてる。

 先輩は、学園の、恋愛のキューピッドって呼ばれてて。たくさんのひとたちの恋愛をかなえている。

 先輩は、そして大好きな幼なじみをも、とある女の子とくっつけた――。




 それは結社とやらの指示だった。




 ぜんぶ、やらされてるんじゃねえかよ。

 先輩の意思じゃないんじゃ、ねえかよ。



 恋愛、かないました!

 ありがとうございます!



 よかったね、と薄く淡く、微笑みながら。

 あの愛想臭いわかりやすい作り笑いの下でどれほどの想いをいままで噛み殺してきたのか――。



 結社。

 僕はそんなの、許さない。

 許せない。

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