第2話 高校時代


高校1年の秋です。ふとしたきっかけで一つ年上の彼女と出会いました。


「悩んだりする?」

「え、別に悩みなんかないけど」

「ふふ、これからね」


こんな会話が頭に残っています。


それから1、2ケ月後ですね。ある予備校の数学セミナーで偶然に一緒になりました。


でも学年が違うのに、セミナーは一緒?おかしいじゃないか。ウソをつくなよ。


そんな声が聞こえてきましたが、そんなことはどうでもいいでしょう。

まあ、いろいろあるんですよ。そのあたりの事情は、ここでは割愛させて下さい。


その帰りの電車、彼女の隣が空いていましたが、恥ずかしくて、私は座れませんでした。座ればよかったのに。黄色のセーターを着ていました。

これはカラー映像で頭の中に残っています。


ほんの少し斜め前に立ったままで話をしていました。

30分ほどの車内デートでしたが、あれは、よかったなあ。


次の覚えているのは2年生になった5月頃、K駅から高校までの約10分の朝の通学時のことです。


「おはようございます」

「あら、この時間?」

「うん」


いい1日の始まりでした。


そして、その年の秋。学校祭の時です。


「ちょっと歩きましょうか?」

「うん」


校内をなんとなく二人で歩きました。


「ねえ、どうしたの?眼帯なんかして」

「うん……ちょっと友だちとはぐれちゃって……」


私はバカですね。後で分かったのですが、前日に彼女は「彼」と喧嘩して泣き腫らしていたのです。


翌年2月、彼女たちは受験。(もちろん「彼」も受験です!)


その結果、「彼」は現役合格、彼女は浪人。私は高校3年、同じ受験生になりました。


6月頃、校内誌に卒業生の進学先が発表され、「彼」が誰だかはっきりと分かりました


「しっかり勉強した人が合格します。あなたも頑張って下さい」


そういうハガキを頂きました。


よし、同じ受験生、頑張れば同級生だ!、単純ですから、そう張り切りましたが、まあ、世の中、そんなに上手いきません。


高校3年は辛かった。本当に辛かった。


全く成績が伸びませんでした。理系でしたが、数学と物理に大きな弱点がありました。教科書的な基礎を確認する問題は出来ますが、受験問題のような応用力を試す問題がダメでした。それに加え、得意だった国語も英語も全く伸びず、散々な1年でした。


3月末、ハガキを頂きました。北陸に向かう夜行列車内で書いたハガキです


「あなたはどうだった?」


彼女は合格、晴れて女子大生。私はかすりもせず、落ちて浪人。


「大丈夫。焦らずに頑張って」


数日後、そんな励ましの手紙を貰ったことを覚えています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る