033.とかされる
部屋に行きたいとは言ったけど、寝室に行きたいとは言ってませんよ、ルシアン!…と抗議したいけど、我慢する。
そして、お仕置きは私を恥ずかしがらせたいから、寝室なのね。
他に私が恥ずかしがるとか、嫌な事って何かあったかな?
家に閉じ込められても別に嫌じゃないしな?お買い物禁止されても困らないし…。うーん…?我ながら、本当に一般的な淑女らしくなくて残念です…。
結果、お仕置きは寝室です、と。酷い!!!
ベッドに下された私の横に、ルシアンは腰掛けると、頰にキスをしてきた。
「どんなお仕置きがいいかな。ミチルはどんなお仕置きがいいですか?」
お仕置き内容を、お仕置きされる本人に聞くとか、新手過ぎる!
それ、地味に自分の弱点を曝露する事になるよね?!
って言うか、私が秘密を教えない前提ですね…。
まぁ、そりゃそうだよね。秘密を教えたくなくて、あんなヤバイベビードールネグリジェを自ら着たからね…フフ…本当に、顔から火が出る程恥ずかしかったですよ…!
「あの…」
「うん」
「秘密と…言う程のものでも…ないのですけれど…」
ルシアンの顔から表情が消えた。
私が秘密を明かそうとしてるのが分かったからだと思う。
「ルシアンは…私が、他の方の元に嫁いでいても、愛されるとおっしゃいますけれど…」
奇跡が起きて愛される事もあるかも知れないけどさ、でも、それじゃ駄目なんですよ。
私、気が付いたんです。
ルシアンが皇都に行っていた時、王子やジェラルドにどれだけ笑顔を向けられても、甘い言葉を囁かれても、優しくされても、全然心が動かなかった理由。ヒロインのキャロルが出て来るからだと思っていたけど、そうだとしても好きになる時は好きになってしまうものだと思う。
二人に心が動かなかった理由は、キース先生の事でもなく、最初っからルシアンの事が好きだったんだって事に。
だから捨てられた後の事とかばっかり考えてたんだと。
いや、何を今更って言うかも知れないけど。
だから、駄目なのだ。
他の人と結婚して愛されても、そんなの意味ない。
だって、その人はルシアンじゃないから。
「…私、多分、最初からルシアンの事しか見てないのです」
こういうの、説明難しい。
自分自身ちょっと曖昧だったりするし。
「ルシアンと知り合って、図書室で会話するようになって、間も無く、好意を…抱いていたのだと…今なら分かります…別に読みたい本なんて…ありませんでしたから」
顔が熱い。
恥ずかしくて俯いてしまいたい。
でも、駄目。
ちゃんと、目を見て言わないと、こういうのは伝わらなくなっちゃう。特にルシアンはなんか、細かいから。
好きと愛してるの違いで痛感しました、はい。
無表情だけど、ルシアンの瞳が揺れた。
「ルシアンが皇都に行ってから、王子やジェラルドは確かに私に好意を示して下さいましたけれど、私はモニカや他の令嬢に恨まれないようにする事しか考えてませんでした。
ルシアンと婚約が決まってからは、ルシアンが皇都で好きな人を見つけて婚約破棄される事ばかり気にしておりました。そうなったら一人で生きていけるようにと、魔力の勉強を始めたぐらいで…」
ルシアンが私の手を握る。
「本当に、何故今更こんな事を言うのだと思うかも知れませんけれど、私、ずっとルシアンの事しか見ていないのです。
私が口下手で、態度に出さない所為で、ルシアンをずっと不安にさせていたのだと思います。
モニカ達の結婚式の夜に、気持ちが伝わったと思っていたのですけれど、先程のレシャンテとの話を聞いてしまって、伝えきれてないのだと…秘密だなどと言う妻の気持ちを信じろという方が難しいですよね…。
…ただ…恥ずかしかっただけなのですけれど…それでルシアンを不安にさせるぐらいなら、ちゃんとお伝えしようと…」
ルシアンの目を真っ直ぐに見つめる。
「ルシアン、私、ずっと貴方だけを愛しています。他の誰かに愛されても、意味がないのです。
私が欲しいものは、ルシアンなのです」
…よし!言えた!
言えたよ!!
…なのに、何故ルシアンは無表情のままなの?!何故なの?!
ミチル的世紀の告白なんですけど?!
ルシアンの顔が赤くなった。
「!」
まさかの時間差?!
ルシアンは顔こそ赤いものの、無表情のまま、口元に手を持っていく。
「…ルシアン?」
えっと、赤くなってるんだから、伝わったと思っていいんだよね?
「…ずっと…?」
「え?」
「ずっと俺の事を、ミチルも想っていた?」
頷く。
「信じられない…」
ひどっ!
って、私の愛情表現が足りないからか…。
とは言え、どうすれば信じてもらえるんだ…。
「どうすれば、信じていただけますか?」
キスとか?
でもそれはいつもしてるし…。
「ミチルが欲しいのは…俺…?」
これはかなり動揺してるのでは?
私の前でも俺が出てるし。それとも、さっき聞いちゃったから解禁になったのか?
「そうです。ルシアン以外、いらないのです」
混乱してるのか、ルシアンは右手で右目のあたりを押さえた。
うっすら開いてる左目から色気が…。
イケメンって凄いな、隙あらば色気出すんだな!
「頭が爆発しそう…」
とてもルシアンとは思えない発言に、今のルシアンが通常じゃない事だけはよく分かった。そうさせたのは私だけど。
っていうか、私の予想としては、めっちゃ喜んでくれるルシアンの図、だったんだけど。
ずっと予想外の反応で、もはやどうしていいのか分かんない。
いや、考えてみれば、このイケメンが私の予想通りの行動をしてくれた事なんて今まであっただろうか、いや、ない。
って事で、ある意味通常運転だった、うん…。
ふぅ、とため息を吐いて目元から手を離したルシアンは、顔の赤みもなく、いつも通りに戻っていた。
えぇ、復帰早くない?
さっき爆発するって言ってたのに?!
なんか、許せん!もっと喜ぶとか動揺して欲しい!
ルシアンを押し倒すと、色気のある目で下から見てるし、口元には笑みを浮かべてる。
手を伸ばして私の髪に触れると、髪飾りを外してしまう。ルシアンは私の頭を優しく掴むと、私の顔を引き寄せた。
唇と唇が触れる。
上になってるのは私だけど、完全にルシアンが優位です!
意味分かりません!
やっぱり私は肉食女子にはなれなさそう!
「私の全ては」
耳元でルシアンが言った。
「ミチルのものですよ」
なんだこの、強制的に肉食女子にされそうな空気感は!なんて恐ろしいんだ!!
言葉遣いも気が付けば戻ってるし!いや、好きだけど!
「ミチルからは、しない?」
ナニヲデスカネ?!
って押し倒したから、そう思われても仕方ないね?!
また顔を引き寄せられて、噛み付くようなキスをされた瞬間、世界が反転した感覚がした。
目を開けると、ルシアンが私の上にいた。上下逆転したらしい。
ルシアンは上体を起こすと、シャツを脱いだ。
ルシアンと目が合う。金色の瞳に見つめられて目眩がした。
私の唇にルシアンの指が触れる。
「ミチル、名前を呼んで」
「…ルシアン」
「私が欲しい?」
質問に顔が熱くなる。
「そんな風に言わされると分かっていたから、秘密にしていたのです…」
っていうか、下手したら監禁されるかなって思ってた。
ふふ、とルシアンは笑う。
「愛する人に、自分の事を欲しいと言われたいだけですよ?ミチルは、私に言われたくない?」
「意地悪ルシアンっ」
そんなの、聞くまでもないのに。
聞くまでもない。
そうやって、勝手に思って、私は不安にさせてたんだよね。
「ルシアンの…好きにして下さいませ」
困ったような顔になるルシアン。そんな顔まで色っぽいって凄いな?!神様、ちょっと私にもこの色気の片鱗をぷりーず!
「そんな事を言うと無茶苦茶にしますよ」
無茶苦茶?!
無茶苦茶ってナニ?!
「昼も夜も、分からないぐらいに、私だけを見るようにして、私だけを感じさせて、私の声しか聞こえないようにして…」
病んでる!
笑顔が仄暗い!
「そんな事をしなくても、私はルシアンのものですのに」
ルシアンは苦笑いを浮かべる。
「ミチル、私のものだから、じゃないんですよ。私だけのものにしたいから、閉じ込めたいんです。他の男の目に貴女が触れる事すら許しがたいのに」
凄いな?!
ヤンデレ、半端ない!
「分かっていないでしょう?私がどれだけミチルを欲しているのか?」
魂結びつけちゃうぐらいに好きだって事は知ってるよ?!
ルシアンの唇がまぶたに触れる。
「私を見て」
目を開けて、目の前のルシアンを見る。
うぉ、イケメンが超至近距離に。あぁ、ヤバイ、本当カッコいい、血圧上がる。
「好き…」
思わずこぼしてしまった私の言葉に、ルシアンはとろけそうな目を見せた。とろけるのはね、私がです!
「そんな目で見られたら、とけます…」
「とけてしまったら、私が全て舐めてあげますよ」
なんか卑猥!
「ミチル…」
唇が重なる。触れるだけのキスの次は、唇で唇を噛まれる。柔らかい舌が、私の下唇を舐めた。それから、大人のキス。
呼吸を忘れそうになる。
唇が離れて、新しい息を吸い込もうとしたら、また唇を塞がれた。
ルシアン!死んじゃう!
鼻呼吸、吸うのはいいけど、吐くの苦手なの!
「ミチル、目を閉じないで。目を開けて、貴女を欲しがってる私を見て」
まぶたを開けると、ルシアンが恐ろしい程の色気を出した目で私を見ていて、心臓が激しくはねた。
いつも、死にそうになるから、最中は目を瞑って、言い方は悪いけど、耐えてやり過ごしてる。
だって本当に死にそうで!
どうでも良いけど、さっきのルシアンの言葉、やばくないですか?
言葉だけで私の魂、刈り取られそうじゃない?!
「る…ルシアン…」
「なぁに?」
ルシアンの唇が耳朶を噛んだ。
「…っ!」
こ、これは、私、死んじゃうかも!
転生しちゃうかも!!
いつもされてる事の筈なのに、なんかもう駄目だ!
恥ずかしいとか、もうそういうことじゃなくって!
「ミチルは私の声も好きだと言ってましたね」
背中がゾクゾクする。
「私の声で、何て言われたい?ミチルの好きな言葉を言ってあげる」
むむむむむむ、無理っ!
無理!もう許して欲しい!
閨事での言葉攻め、断固反対!
こんな!こんな頭も心臓もおかしくなる行為だなんて知らなかった!話の中のヒロインが異常に反応してて、ハッ、言葉ぐらいでこんな、とか思ってたかつての自分、今すぐ土下座せよ!
「やだっ、もう、無理…!」
「もうって…まだ始まったばかりなのに…?」
困ったようなルシアンの声に、耐えられなくなって、ルシアンの身体を押しのけようとしたら、腕を掴まれ、ベッドにそのまま押し付けられてしまった。
うぅ…っ!女って不利だ!こんなの、絶対勝てない!
「だって、ルシアンがっ!」
「私が?」
ルシアンの唇が首筋に触れる。次に、ちりっとした感覚。
キスマーク付けられてるー!しかもそんな分かりやすい所に?!
本気ですか?!家から出れないよ?!
まさかさっきの、閉じ込めるの本気?!
「いつもと、違う…っ」
クスッと首のあたりから笑う声がする。
「いつもはね、手加減していたから」
手加減?!
手加減てどういう事?!
「本当は、もっと時間をかけてミチルを愛したいって思ってた」
いやっ、今までのだって、十分そのっ!
「ようやくミチルの心が手に入ったのに、無理をして嫌われたくなくて、我慢してたけど」
嘘でしょ?!
嘘だって言って!!
ネグリジェ着てするぐらいの方が心臓の負担が少ないって、どういうことなの?!
耳元で言わないで!お願い本当、止めて!!
「私が、どれだけミチルの事を愛してるのか、思い知らせてあげる」
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