第28話灰色の城
時は数刻前に遡る。
アリサ公爵家の馬車で、王城である灰色の城に着いたウィルデリア達。
馬車から降りた瞬間、早速注目の的になっていた。
派手な美しさのウィルデリアと、儚気な美しさのサリア。
特にはウィルデリアの横にいた、サリアの正体が男装の麗人サリアだと知った時の周りの反応は凄かった。
先に城に着いていた、それぞれの自分の親と久しぶりに会って挨拶をする二人。
ウィルデリアの父親のロウフィール侯爵は着飾った娘を見て目を細めた。
親バカからか、褒めちぎるがその言葉が欲しいのは父親ではなくて、クロードに言って欲しいもので、クロードに早く逢いたいウィルデリアはさっさと父親から離れて先を急いだ。
釣れない娘に、どこか哀愁漂う侯爵の後ろ姿を見兼ねて、その肩をポンポン叩いて慰めたのは、アリサ公爵だった。
そんなアリサ公爵だが、気合いの入った妻の仕立てたドレスを、まさか娘が着るとは思いもよらなかったようで、その変貌ぶりにも驚いていた。
一方の公爵夫人は娘を見て心底嬉しそうに、機嫌よくサリア達を送り出してくれた。
二人の後ろから公爵夫人の、娘の自慢話の声が聞こえた。
ウィルデリア達が通る度に、周りにいた人達の視線は二人に奪われる。
好意や嫉妬などの悪意ある視線を感じて、サリアは緊張する。
普段の着慣れないドレスだった事もあって、落ち着かなかった。
それに気がついたウィルデリアはサリアに言った。
「緊張してますの?
わたくしもですわ、でも二人一緒だからきっと大丈夫。
それに、緊張しているのは周りの方々も一緒ですわよ。
だって、サリアったらまるで月の女神の様ですもの。」
「揶揄うのはやめてくれ。
自分の事は自分が一番知っている。
私は今の姿を女装だと言われないか心配してるんだ‼︎」
「サリアは元々性別が女の子ですもの、今の姿が普通です。
普段の男装の方が変わっていましたわ。」
はっきりと言う、ウィルデリアに少し傷ついたサリア。
二人は国王夫妻に、王女達そして最後に王太子の順に挨拶をした。
王太子アレクセイ・リードシアの前で、サリアが青白くなったのを見たウィルデリアは、一言だけ挨拶をして、サリアを連れてすぐにその場を去った。
王太子のいた広間から、少し離れた部屋の椅子にサリアを座らせて、ウィルデリアは飲み物を取りに行った。
その間、座っていたサリアに一人の少年が近寄った。
銀髪につり目のリアム・ルッドマンだ。
「やっぱり、アリサさんだね。
アリサさんによく似た綺麗な人がいたから、気になって声をかけたんだよ。
おかあさまは一緒じゃないの?」
「ウィルデリアなら、飲み物を取りに行ってくれた。」
「それなら、一緒に待とうね。
隣いい?」
「構わない。座ってくれ。」
「ありがとう。
顔色悪いけど大丈夫?」
「大丈夫。
もう落ち着いてきたから、平気だ。」
サリアの隣りの椅子にリアムが座った。
部屋から広間がよく見えた。
二人して広間を眺めていると、ウィルデリアが二人分の飲み物を持って、歩い来ていたのが見えた。
そのウィルデリアは一人の青年に声をかけられ、足を止めた。
ウィルデリアは青年をあしらうが、それでも食い下がらない風の青年を見て、サリアとリアムは同時に椅子から立ち上がった。
その時、長身の男性がウィルデリア達の間に割り込んだ。
長い黒髪に端正な顔立ちの男性。
ギラギラした出で立ちの彼こそは、ブルーシア公爵クロードその人だった。
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