第25話ウィルデリアのコネ
その日、サリアの部屋にウィルデリア達は集まっていた。
サリアの使用人のニールが、手練れの冒険者を仲間に引き入れたらしい。
ウィルデリア、サリア、リアムの三人に自慢の手料理を振る舞いながら、報告をするニール。
「俺の昔馴染みですが、マリウスって上位の冒険者です。
信用も出来て腕も立ちます。
ただ…」
「ただ…なんですの?」
「ロウフィール嬢、申し訳ありません。
ブルーシア公爵に顔が効くと話ししちゃいました…」
ニールは、悪びれもなく言った。
「その事をチラつかせたので、マリウスは協力をする気になったのですが…
なので、ブルーシア公爵に根回しをお願いします。」
これにはサリアが怒った。
「お前、ウィルデリアに相談も無しに勝手に物事を進めるな‼︎」
「サリア、よいのです。
結果、貴重な人材を得られたのですから…」
「おかあさま、だめだよ。
ブルーシアに顔が効くとはいえ、まだ婚約段階なので、きちんと相手の伺いを立て方がいいと思うよ。」
「確かにルッドマン君の言う通りですわね。
ニール、今度からはちゃんとわたくし達に一言、相談してから交渉するよに。」
ウィルデリアはそう考え直して言った。
「かしこまりました。ロウフィール嬢。」
ウィルデリアはどうして、ブルーシア公国の影をチラつかせて、マリウスが靡いたのか気になったので、その事をニールに訊ねた。
「マリウスの親が商人なんですよ、それでだと思うんですが。
今、公国との国交が回復したので、商売のためにブルーシアのお偉いさんと繋がりが欲しいのかもしれませんね。」
「そうですか。
では、そのマリウスさんと直にお会いしてみてお話しなければいけませんわね。」
その8日後、ウィルデリアはマリウスを呼び出した。
マリウスはウィルデリアが初めて会う現役の冒険者だった。
金髪に長身の良く鍛え抜かれた肉体は、趣味の良い服の上からでもわかる、顔立ちが整った好青年だ。
「ウィルデリア・ロウフィールですわ。」
ウィルデリアは自己紹介をして、横の二人もマリウスに紹介した。
「わたくしの友人のサリア・アリサとリアム・ルッドマンですわ。」
「マリウスです。
お初にお目にかかります。」
ウィルデリアはマリウスの丁寧な口調に驚いた。
冒険者は皆、柄が悪いのだと思っていたからだ。
心の中でウィルデリアは、自分の冒険者への偏見を反省した。
「単刀直入に言いますわ。
マリウスさん、わたくしはある目的の為に、迷い森に行きたいのです。
道中の護衛を貴方にもお願いしたいと思っていますわ。
場所が場所なだけに依頼金も貴方の言い値でお支払い出来るように努力しますわ。」
「ロウフィール嬢、依頼金より、僕はブルーシア公爵との繋がりが欲しいです。
僕の親が商人をしていて、商売の為に公国との繋がりがどうしても必要としているのです。」
「失礼だが、御商売は何を?」
サリアはマリウスに訊ねた。
「塩です。塩を作って売っています。
ブルーシア公国との国交が断絶する前までは、大陸の西部の国々と取引をしていました。
国交が断絶していた時、輸出が出来なくて在庫が溜まってしまい大変だったそうです。
規模を縮小してなんとか乗り切りましたが…
ブルーシア公国との国交が回復しつつあるので、それで…。」
昔みたいに商売がしたいと言う、家の為にマリウスはブルーシア公爵との繋がりが欲しいのだ。
今はまだ国交は完全には回復していなく、物流の行き来がまだ出来ていない。
繋がりが出来ればあちらでの商売もし易くなる。
マリウスの語った理由に納得したのかウィルデリアは。
「その件ですが、なんとか出来そうですわ。
ブルーシア公爵、クロードさまとの場を設けますわ。」
クロードには手紙で前もって伝えていたので、予め許可を取ってあった。
彼は快く返事をくれた。
「ありがとうございます、ロウフィール嬢。」
「いいえ、お礼にはまだ早いですわ。
ニール、マリウスさんに正式に依頼をしたいのですが、どうすればいいのですか?」
「冒険者ギルドに行って、マリウスを指名で依頼の手続きをしないといけません。
それは俺に任せて下さい。」
「ええ、お願いしますわ。
それからマリウスさん、依頼金ももちろんきちんとお支払いしますわ。
危険に伴う対価として。
どうかよろしくお願いします。」
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