第24話ニールの休日2

 ニールの一言を聞いて、唖然としたマリウス。


「ニールさん、何を言ってるんですか?」


「ごめんごめん。

 俺が使えてるとこのお嬢様が、て言うよりお嬢様の友人が、迷いの森にご用があって、行きと帰りの護衛を依頼しょうと思ってさ‼︎」


「よりによって迷いの森ですか?

 いくら積まれても、その依頼は受けれません。」


「場所が場所なだけに、やっぱり無理か…だよね。

 俺も行くのやだもん。」


「貴族の娯楽に付き合えるほど、自分の命を軽んじてません。

 ニールさん、すみませんが他をあったって下さい。」


 マリウスに断られたニールは、熱々のシチューを食べがら考えた。

 他をあたれと言われても、ニールが信用が出来る腕の立つ冒険者などなかなかいない。


 ニールはふと思い出した事を口に出してみた。


「マリウス、そのお嬢様の友人が、ブルーシア公国のお偉いさんに顔が効くと言ったらどうだ?」


 途端にマリウスの目が変わった。


「それは本当なんでしょうね?」


「うん、本当だよ。

 お嬢様の友人がブルーシア公爵の婚約者様だからね。」


 マリウスは少しの間、考えこんで言った。


「その依頼、受けます。

 日取りは?」


「まだ、決まってないんだ。

 また連絡するから、しばらくこっちに居ててね。」


「わかりました。」


 そう言って、マリウスは席を立った。


 ニールはシチューをゆっくり味わいながら、心の中で、ガッツポーズをとった。


 今日の目的は達成した。

 食事を終えたら、真っ直ぐ帰るのみ。


 久しぶりの休みだから、楽しんでから帰ってもいいが、早くお嬢様達に報告がしたい。


 数分後、ニールは自分の馬鹿さ加減に呆れてしまった。




(財布がない…)


「嘘でしょう⁈」


 幸い、宿屋の女将は昔馴染みのリリーだったからよかった。

 リリーは呆れていたが、食堂の皿洗いで許してもらえた。


 もちろん、ロナとミラ姉妹にも呆れられた。



「ニール変わらないね!

 そんな、うっかり屋な所。」


 リリーがクスクスと笑いながら言った。


「ニールさんはうっかり屋さんだったんですね。

 女将さんから凄く腕の立つ人だと聞いて

 いましたから、イメージ崩れちゃいましたよ。」


 厨房担当のミラが野菜を切りながら話かけてきた。


「腕が立つ程じゃないよ。

 俺ぐらいの者、いくらでもいるけどな。」


「またまた、謙遜しちゃって‼︎」


 ミラはそう言ってが、ニールの実力レベルの人は、確かにいくらでもいる。

 だから冒険者を辞める時、どうやって生計を立てようか悩んだ。

 市民権を得たが、次は職に困った。

 

 運が良かった事にアリサ公爵に拾ってもらえた。

 冒険者の頃から懇意にしていたから、そのご縁での採用だった。


 もし拾ってもらえなかったら、今頃どうなっていただろうかと、たまに考えてしまう。


(男装の令嬢サリアさまとロウフィール嬢)


 面白い令嬢二人とは、出会えなかったろうなとニールは思った。


「なにニヤニヤしてるの?ニールさん?」


 ミラは、にやける優男を見てまた呆れた。


「いや〜、ちょっとね…」


 ニールは気を取り直して、目の前の大量の皿を洗った。




 ニールは皿洗いを夜中に終えた。

 リリーに再度、頭を下げてエジェカ学園の寮へ急ぐ。

 その途中、ある青年を見かけた。

 その青年は城の中にいるはずの人だから、驚いた。

 何より、一人でこんな時間にこの場所にいるはずがないのだから、他人の空似だと思った。


(びっくりしたな。

 暗かったから見間違えたかな?

 でもよく似ていたな…)



 王太子、アレクセイ殿下に…




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