第23話ニールの休日?
エジェカ学園があるのは、リードシアの王都の東区、貴族や富裕層が住む区域でその男は歩いていた。
アリサ公爵家の使用人、ニールだった。
彼は王都にいる、知り合いの冒険者と会う為に今日はお仕事を休みにしてもらったのだ。
(てか、これもある意味仕事だから、休日ってわけじゃないようなあ…….。
まあ、いいか!)
細い事は気にしない。
今更気にしても、遅い気がする。
久しぶりの休日だゆっくり楽しもう。
彼は向かう先は、リードシアの北区の宿屋。
宿屋の名前は宿木。
その宿木に泊まっている、昔馴染みの冒険者と会う為だ。
宿木に着くと、女将さんに声をかけられた。
彼女はニールが、冒険者をやっていた頃からの知り合いで、彼女も元は冒険者だった。
「いらっしゃい、ニール。
ずいぶんと久しぶりねぇ!」
「久しぶりだね、リリー。
マリウスはいる?」
「いるよ。
食堂で朝飯を食べてるよ。」
「ありがとう。
食堂だね、行ってくるよ。」
宿木は繁盛しているようで、ニールが食堂に着くと大勢のお客さんが食事を楽しんでいた。
宿木の食事は美味しいと有名で、元冒険者の女将、リリーの弟子である姉妹が切り盛りしている。
姉妹はロナとミラという名で、巷で有名な美人姉妹。
ニールは真っ直ぐ目的の人物の席の向かいに座った。
彼のお嬢様の黄色豪華な金髪と違って、淡い金髪の青年、マリウス。
その若さで冒険者の中でも上位に立つ人物。
「マリウス、おはよう。
久しぶり〜‼︎」
ニコニコと笑顔のニールと反対で、マリウスはどこか具合が悪そうだった。
「ニールさん…お久しぶりです。」
「二日酔いか?」
「はい、昨晩。
情けない事に麦酒一杯で撃沈しました。」
「相変わらず弱いね。
あ、ロナ〜、俺は本日のおすすめで。」
「あいよ‼︎」
ちょうど料理を運んで来た、ロナに料理を注文した。
「ニールさん、二年ぶりですね。
噂でどこかの貴族に仕えてると小耳にしましたが、本当ですか?」
「うん。
引退して、何やろうかなあってなった時ね。
アリサ公爵閣下が声をかけてくれたんだ。
使用人兼護衛として雇ってもらったの。
それより、マリウス!
聞いたよ!もう活躍しまくりじゃん‼︎」
「いいえ、それほどでも…
ニールさんと比べたら、僕なんて。」
かつてのニールを引き合いに出す、マリウス。
でもその若さで活躍するマリウスも中々の物だ。
「俺は中位クラスの冒険者だったよ。
上位のマリウスと比べたら、全然…。」
「それはニールさんが上位に上がる事を拒んでいたからですよね?」
冒険者の上位クラスは人数が少ない。
そして色々、面倒臭いのだ。
「上位は面倒な縛りが多いからね。」
「確かに…。」
「それに、スラム街出身の俺は、身分証欲しくて冒険者始めたからね。
最終目標の市民権を買う事も、中位クラスから可能だったし。」
この国はスラム街出身者には市民権はなく、まとも職にありつけない。
だからスラム街出身者は食う為に、冒険者に入る話しをよく聞く。
ただ冒険者を続けるにはお金がかかる。
冒険者の身分証には維持費がかかるのだ。
それも高額な。
その分稼ぐ事も可能だが、命の危険も伴う依頼もあるのだ。
安息を求めるなら、中位クラスになって市民権を買い、冒険者を引退する。
ニールの考えもわからないでもない。
「ニールさん、お待ちど‼︎
本日のおすすめ、ビーフシチューだよ。」
出されたのは熱々のビーフシチューとパンだった。
「わあ、美味しそう‼︎
いただきます‼︎」
嬉しそうに食べ始める、元先輩冒険者を見てマリウスは目を細めて笑った。
「ところで、ニールさん。
僕に用件があって来たんですよね?」
「うん。
あのさ、マリウス。
俺と一緒に死んでくれ。」
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