第20話繋がる夢

 ライラのお嬢様がサリアともう一人、少年を部屋に連れ帰って来た。

 彼女はすぐに、紅茶とお菓子を三人分用意した。


 テーブルの上にはスライムのスラスラの入った瓶もあった。

 スラスラは何故か元気よくピョンピョン飛び跳ねている。


「スラスラに魔力を分けて頂いて、ありがとうございますわ。」


「いいや、それぐらい大した事じゃないよ。」


 少年、リアム・ルッドマンが答えた。


「だいぶ分けて頂いたようですが、ルッドマン君はお身体は大丈夫ですか?」


「大丈夫、俺から分けたと言うより、このスライムに吸い取られた気分だ。

 よっぽど腹が減ってたんだね。」


 リアムが瓶を撫でるとスラスラがさらに速く飛び跳ねる。

 瓶自体がガタガタ動く程に。


「ルッドマンに触れられて嬉しいのか?」


 サリアはスラスラを覗き込んでそう言った。


「ロウフィールさん、アリサさん、貴女達はタケメの知り合い?

 彼女の事をよく知っているようだ。」


 リアムの疑問にウィルデリアは答えた。


「竹女をよく知っているのは、わたくしの方だけですわ。

 サリアは竹女の事は話しでしか知りませんわ。」


「君はタケメにあった事があるの?

 それならおかしい、彼女は俺と夢の中でしか会えないはずだ。」


「わたくしは竹女の母です。

 母と言っても、わたくしの前世が竹女の母の桜島チヨという魔法使いでしたわ。」


「前世⁈ロウフィールさん前世の記憶があるって感じの人なの?」


「そうなにりますわ。」


 ウィルデリアはこれまでの経緯をリアムに話した。

 リアムは黙って耳を傾けてくれた。



「病?それはタケメから何も聞いてないよ。

 ただ彼女の顔色が青白かったのが気になっていたけど…」


「そうですか…

 竹女にかけた魔法は恐らく、完全に解けていないですわ。

 魔法で病の進行が止まっているかもしれない。

 だから彼女は目覚めても封印の中で生きているのだと思いますわ。」


「ウィルデリア、桜島チヨのかけた魔法は永遠じゃなかったのか?」


「永遠に解けるはずのない魔法のはずでしたわ。

 そう、誰かが解くまでは。

 でもまさか、自分から目覚めてしまなんて思いもしませんでしたわ。」


「だけど、そのおかげで俺はタケメと出会えたし、魔法使いとして目覚めたよ。」


「ああ、運がいいなあ。

 ウィルデリア、それで、これからどうするんだ?」


「ルッドマン君、竹女に伝えて欲しいですわ。

 チヨとして前世の記憶を持っている、わたくしの事をお話しして下さい。」


「わかった、今晩タケメに伝えたるよ。」




 夢の中でリアムは竹女に、チヨの記憶があるウィルデリアの事を話しした。


「お母様が⁈」

「正確にはタケメのお母さんの記憶を持つウィルデリアって子だよ。」


「ウィルデリア…お母様、それでも嬉しいわ。」


 竹女は胸に手を当てて、喜んだ。


「タケメ、君が病気だって聞いたけど、今、身体はどう?大丈夫?」


「大丈夫、何も痛いのや苦しいのはないわ。

 あとね私、食べ物や水分をとってなくても平気みたい。

 お母様の魔法か、この封印のせいかしら?

 」



 竹女は湖を見渡して、リアムに向き直る。

 そして、リアムに触れようとするが、ガラスのような壁がそれを遮ぎる。


 リアムは自分の手を竹女の手に重ねた。

 見えない壁のせいで触れられないけど、竹女は嬉しかったのか、微笑んだ。


 その笑みを見たリアムも釣られて笑った。


「タケメ、これからどうするか、ウィルデリア達と相談しょう。

 きっとここから出られるよ。」


「リアム、ありがとう。

 お願いね。」


「ああ、任せて。」


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