第19話竹女
リアム・ルッドマン。
ルッドマン侯爵家の長男で、姉のマリルーとよく似た容姿の銀髪碧眼の美少年。
彼は3ヶ月前から夢を見る。
一人の少女が出てくる、不思議な夢だ。
夢は深い森の中で、その森には湖があった。
少女は、湖の中に浮かんでいた。
リアムはこれは夢だとわかっていながら、湖に近づくと、少女は閉じていた瞼を開いた。
とても鋭い目つきだった。
「君は誰?」
「竹女、桜島竹女よ。
よろしくね、リアム・ルッドマン。」
「俺を知ってるの?」
「知ってるわ。」
桜島竹女と名乗る少女は、長い黒髪と茶色の目に、病的なまでの青白い肌と真っ赤な唇、唇の下にホクロがあった。
歳の頃はリアムと同じくらいに思えた。
「これは夢だよね?」
「そうよ、貴方の夢の中よ。
やっと貴方とお話しが出来たわ。」
竹女は嬉しそうに言った。
「私、ずっと寝ていたの。
お母様の魔法で。
でも三年前ぐらいに目覚めたの。
目覚めたけど、私ここから出られなくて、なんとか出ようとしたけど、駄目だったわ。」
「君は湖から出たいんだね?」
「竹女って呼んで、リアム。
貴方の声で名前を呼ばれたいの。」
「わかったよ、タケメ。」
「ありがとう。
名前を呼ばれるのは久しぶりなの。
とても嬉しいわ。」
竹女は心底嬉しそうだった。
彼女は笑うと目が細くなる。
リアムはそんな彼女の笑顔を見て、ドキッとした。
「リアム、私はこの湖に封印されたみたい。
お願い、私はここから出たいわ。
どうか、助けて。」
「俺で助けれるかな?
どうすればいい?」
「私がいるこの湖まで来て、封印を解いて欲しいの。」
「でも、俺は封印の解き方なんか知らない。」
「リアムなら出来るわ。
リアムはこの世界でたった一人だけ、私の声が届いた、魔法使いなんだから。」
魔法使いと言われて、リアムは驚いて否定する。
「それは違う。
俺は魔法使いじゃない。
魔法使いはお伽話の中で出てくるもので、現実にはいないんだ。」
「リアム、魔法使いを否定しないで。
魔法使いを否定されると、私の存在も否定されてしまうわ。」
「竹女、君は何者なんだ?」
「リアムと同じ人間で、そして魔法使いよ。」
すると、彼女の周りが炎に包まれた。
あり得ない事に湖の中に炎が揺らめいた。
リアムはそれを見て、直感でわかった。
彼女が出した炎だと。
「感じるでしょう?私の魔法を、そして魔力を。」
そして、竹女は寂しそうに言った。
「でもね、いくら魔法が使えても、この中から出られないの。
でも私の魔法は湖の外にも届くみたい。
こうして…」
炎は湖から出て、リアムの近くまで来た。
驚いて、リアムが後ずさると、炎が消えて無くなった。
「私とリアムが繋がっているこの夢も、私の魔法よ。
ずっと助けてくれる人を探していたの。
でもいなかったわ。
世界中魔法使いを探しても見つからなかったの。
そしてやっと見つけたの、魔力を持つ魔法を使わない貴方を。
だから、リアム、私を信じて。」
竹女の必死な言葉を聞いて、リアムは答えた。
「俺はタケメを信じるよ。」
「ありがとう。」
竹女は安堵の表情を浮かべた。
「そろそろ魔法が解けるわ。
リアム、また明日、夢の中で会いましょう。」
「わかった、タケメまた明日。」
その日の夢はこうして終わった。
朝起きると、いつも通りの日常だった。
違うのは次の日の夜も竹女の夢を見るという事だけ。
わかった事が一つあった。
夢の魔法は大量の魔力を使う為、長くは保たないようだ。
そして竹女はリアムに魔法の使い方を教えてくれた。
リアムは魔法をすぐに使えた。
初めは小さな火だった。
ただ扱いが難しくてリアムは何度も火傷をした。
最近様子のおかしな弟を心配した、姉のマリルーが何度も会いに来てくれたが、夢の話しも魔法の事も言えないでいた。
コントロールも出来るようになった頃、裏庭でウィルデリア達に何故かリアムが魔法使いと分かってしまう。
そして、竹女の事も知っているウィルデリア。
彼女に、リアムはあった事を全て話した。
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