第18話リアム・ルッドマン

 クロードはウィルデリア達を、ブルーシア公国とリードシア王国の国境まで、送ってくれた。

 別れ際に、手紙のやり取りを続けると約束して。




 長期休暇はまだあったが、実家には戻らずに、真っ直ぐエジェカ学園の寮に戻ったウィルデリア達。


 その目的は魔法使い探し。

 星見の巫女さまが言ってた、ウィルデリアのすぐ近くにいる魔法使い。


 近くにいるなら、学園の人間しか考えられない。

 何故なら以前感じた、魔法を使った形跡も学園内での出来事だったからだ。



 ウィルデリア達は裏庭に立っていた。


「ここでしたわ。」


「魔法の形跡とやらはまだ感じるのか?」


「もう流石に残っていませんわ。」


 ウィルデリアはポケットからスライムの入った瓶を取り出した。


「だからこそ、スラスラの出番ですわ!」


「スライムをどうするんだ?」


「実はクロードさまがスラスラを使って、魔法使いを探してみたら、と提案されましたわ。」


サリアは瓶の中の薄紫色の物体を見つめた。


「スラスラの餌は魔力ですわ。

 魔力のある人物を特定出来るのではないかと、クロードさまの推測ですわ。」


 ウィルデリアは瓶の蓋を開けると、スライムは瓶のから飛び出して、地面を転がって行った。


 そのまま転がり、ベンチのあたりで止まる。


「誰かいるぞ!」


 サリアはベンチに座る男子生徒を指差した。

 銀髪碧眼の同じクラス、リアム・ルッドマン。


 ウィルデリア達はベンチに近づいて、スライムを回収した。

 ベンチの少年を見ると静かに寝息をたてていた。


 二人がその場を立ち去ろうとした、その時。


「…タケメ…」


 竹女の名を呼ぶ声が聞こえた。

 ウィルデリアはリアムを再び見ると彼は間違いなく寝ているようだ。


(寝言?)


「ウィルデリア、今…」


「サリアも聞こえました?

 わたくしもですわ!」


(竹女、と、確かに言ってましたわ。)


 ウィルデリアはリアムを問い質そうと、その身体を揺り起した。


 突然、寝てるところを、起こされたリアムは驚いた。

 同じクラスの二人が、目の前にいたのだ。


「ロウフィールさん?アリサさん?」


「ルッドマン君、今、竹女って言いましたわよね?」


「タケメ?…ああ、夢に出て来る少女の名前だよ。」


 リアムは大あくびをした。


「その少女はどんな容姿でしたの?」


「うーん…黒髪の色白で目つきが鋭い子。」


「顎にホクロはありませんでしたか?」


「あったよ。

 って、なんでわかるんだよロウフィールさん。」


 疑問に思ったか、リアムのツリ目がウィルデリアを覗き込む。


「ルッドマン君、貴方は魔法使いですか?」


「………」


 ウィルデリアの質問に黙り込むリアム。

 サリアは二人のやり取りを黙って見ていたが、ここで口を挟もうとした瞬間。

 リアムが答えた。


「魔法使い、かもしれない。」


 リアムは手のひらから、そっと小さな火を出して見せた。


「3ヶ月前から夢を見るんだ。

 タケメという少女が出る夢で、初めは会話だけだった。

 ある日の夢で、タケメは俺が魔法を使えると言ってきた。

 彼女の教え通り、念じるだけでこうやって火を出せるようになった。」


 リアムがもう片方の手を突き出した。

 手のひらを開くと水の塊が出た。

 両手を合わせるようにすると火と水が混じり合い、それらが渦を巻く。


「水も出せた。

 練習すると、思うがままにも出来るようになった。」


「竹女の居場所はわかりますか?」


ウィルデリアの問いにリアムはしばらく考えてから言った。


「多分だけど、迷いの森にいると思う。

 なんとなくだけど、そう感じるんだ。」


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