第16話クロードVSサリア

 カキインッ




 サリアの剣が空を舞った。


 決着は早かった。

 クロードの剣がサリアの喉元を捉えた。



 サリアはクロードをひと睨みして、言った。


「降参する。」


「なかなかの腕前ですね。」


 瞬殺されての称賛は、嫌味にしか聞こえなかった。

 サリアは苦虫を潰しかのような思いをした。


(強い。

 おそらく、ニールよりも。)


 サリアは二人の腕試しを観戦していた、ウィルデリアを見た。

 クロードを惚けたように見る友人。


(ウィルデリア、お前の婚約者はもしかしたら、化け物かもな。)


 サリアの剣の腕前は、そこら辺の騎士にも負けない。

 それを赤子の手を捻るように負かしたのだ。



「認めて頂けましたか?アリサ嬢。」

「ああ、ブルーシア公爵はウィルデリアの婚約者として相応しい。」




 事の始まりは、サリアがネイト城があるベセラの都で聞いた噂話だった。

 ブルーシア公爵、クロード・ブルーシアは女遊びの激しい上に重度のマザコンであると。


 マザコンなのはまだいい。

 ただ、複数の女性と淫らな関係のある男性は許せない。

 大事な友人をそんな遊び人に、嫁がせるなどと、激怒したサリアは、ウィルデリアを部屋まで送りに来た公爵を待ち構えて、一戦交えたのだ。


(その腐った根性を叩き直してやる。)


 そう思ったサリアは、逆に返り討ちに遭った。



「ただし、今までの女性関係を清算する事。」


「今までの?」

 キョトンとするクロードにサリアは続ける。


「しらばっくれるな‼︎

 公爵は女遊びの激しい最低な男だと言う話しを、私は聞いた!」


「アリサ嬢。

 申し訳ない、話しが見えません。」



「失礼します。

 サリアさまはベセラで、公爵が複数の女性と関係がある遊び人だと言う、話しを耳にしまして。

 サリアさまはロウフィール嬢を心配されて、怒っているのです。」


 と、ニールが説明する。


「複数?私が⁈」


「クロードさまが⁈」


 ウィルデリアが驚くのはわかるが、クロードまでもが、驚きの声を上げたのを怪訝に思ったサリア達。


「私は、あ、ウィルデリア、私は、その話しは事実ではない。

 私はその…」


 クロードは恥ずかしいそうに言った。


「女性関係は今まで、まったく無いのだ。」


 このままではあらぬ誤解をされそうになると思った、クロードは正直に告白した。


 そう、クロード・ブルーシアは、今まで女性経験がないのをも、意味した発言でもあった。


 真っ赤になって言い切ったクロード。

 サリアは自分より年上の男性の、切実な告白を信じざるを得なかった。


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