第15話ヤキモチと告白



 薔薇園の後、クロードはウィルデリアを泊まっている部屋の前まで送ってくれた。

 道中、話の尽きない二人だった。

 ウィルデリアはとても名残惜しかった。

 もう少し話ししたかった。


(後で晩餐会で会えますわ。)


 そう自分て言い聞かせて我慢する。



 部屋に入ると、ライラとネイト城のメイド達が湯浴みの用意をしてくれていた。

 晩餐会に着て行くドレスを選んでから、赤い薔薇の花びらが浮くお湯に、湯浴みをした。

 たっぷり時間をかけて、飾られたウィルデリアはとても美しい淑女に仕上がった。



 晩餐会はウィルデリア達とブルーシア公爵、先代公爵夫人、そしてブルーシア公爵の親しい貴族数人が招待されていた。


 皆、次期ブルーシア公爵夫人のウィルデリアの美しさを褒め称えてくれた。


 ただ、ウィルデリアは晩餐会であまりブルーシア公爵と話し出来なかったのが残念だった。


 アウロラ・ネイサン伯爵令嬢が、公爵に頻りに話し掛けていたのだ。

 ウィルデリアは見てて面白くなかったが、婚約者は自分だと言い聞かせて我慢した。


 せっかくの御馳走も楽しめなかった。



「綺麗な令嬢だったな。あのネイサン嬢。」

「わたくし達より大人びた感じの方でしたわね。」

「嫌味か?

 それはアレだ、嫉妬だな。」


 ニヤニヤと笑う友人を無性に引っ叩くなってきたウィルデリア。


 リロット・ネイサン伯爵令嬢は豊満な体型の金髪の美しい令嬢だった。

 歳はウィルデリア達と同じく16歳。

 公爵と仲よさげに話していた。


(お似合いでしたわ。)


 モヤモヤしたまま、その晩眠りについた。






 その日の朝食、黙々と食べるウィルデリアをライラ心配した。


 今朝、なんだか機嫌が悪いお嬢さまに、ライラは心配した。

 機嫌が悪いのは昨晩の夜会が終わって、部屋に戻って来た頃からだ。


 よく食べてるから体調不良はないのだろうけど。


「ライラ、大丈夫だ。

 ただのヤキモチだから、気にしなくてもいい。」


「ヤキモチ?

 晩餐会でいったいなにがあったのですか?」


「公爵が美人の令嬢と話しをしていただけだから。

 あの公爵なら大丈夫だろう。

 ウィルデリアにぞっこんだからな!!」


「そうでしたか。」


 ライラは一安心する。

 恋をしているウィルデリアの反応は正常だ。

 ヤキモチは誰しもがするものだから。






 朝食を食べ過ぎて、お腹が苦しい。


 ウィルデリアは、ネイト城の階段を上り下りするのも苦しかった。


「ウィルデリア、どこか具合でも悪いんですか?」

「大丈夫ですわ、クロードさま。

 ちょっと朝ご飯を食べ過ぎただけですわ。」


「そうでしたか。

 ブルーシアの食事がお気に召したようで良かった。」


 朝食後クロードが誘いに来たのだ。

 なんでもウィルデリアに見せたいものがあるようだ。


 クロードと二人きりになったので、先ほどまでのモヤモヤした気分がなくなり、ドキドキして楽しい気分になった。


「着きました。」


 黒塗りの大きな扉の前に二人は立ち止まる。


 クロードが扉を開くとそこには、部屋中に美しいステンドグラスの窓があった。


「綺麗…」

「ネイト城自慢のステンドグラスの間です。」


 ステンドグラスに見惚れるウィルデリアを、クロードは部屋の中央にあったソファに、座らせる。


「朝の早い時間から誘ってすまない。

 実はウィルデリアに早く会いたかったんだ。」


「まあ、それは…」

「昨日も会ったのに、セシルにはあまりしつこいと嫌われるって言われたよ。」


「いえ、わたくしもクロードさまに、早くお会いしたかったですわ。」


「そうか、ウィルデリアも同じ気持ちなら嬉しい。」



 続けてクロードは、この婚約が、実は星見の巫女の占いによってのものだと語った。


「この国では運命の人を占う、ならわしがあって、私の相手にリードシア王国の王族の姫とビオラの占いで出ました。」


「まあ…でも王族でしたら、わたくしではなくても良かったのではないのですか?」


「ウィルデリアで良かったよ。

 それを確かめる為のお見合いだったから。」


「確かめる?」


 クロードは照れたように言った。


「ビオラは、私が一目惚れする相手がその人のようだとも言っていた。」


「………」


 聞いた途端。

 ウィルデリアは顔を真っ赤に染めて、一言も返せなくなった。


(可愛い…)


 クロードはそう思って彼女の隣に座って、静かにウィルデリアを眺めた。



 しばらくすると、ウィルデリアは口を開いた。


「クロードさまは前世を信じますか?」

「前世?」

「わたくしは…前世の記憶がありますの。」


 突然の告白に驚く、クロード。


「と言っても、前世の記憶が目覚めたのは、つい最近の事ですわ。」


 ウィルデリアはクロードの目を真っ直ぐ見つめて、前世の自分の話しをした。


 スライムがいないから、ウィルデリアの言葉だけで、信じもらえるか確信はなかった。


 話し終えると、クロードは急に立ち上がった。




「大丈夫!君に娘がいうとも、この気持ちは変わらない!!」


(あ…信じてもらえましたわ)



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