第14話ブルーシア先代公爵夫人

「魔法使いが場所を知っている、か。」


 部屋に戻ったウィルデリア達は先ほどの事を話し合った。


「私はゾクッとしたぞ‼︎」


 サリアは自分の肩を抱いた。


「星見の巫女さまは何でもお見通しのようですわ。

 お会いしたかったのですが、仕方ないですわね。」


「でもその魔法使いを、どうやって探すんだ?」


「わかりませんわ。

 それは学園に戻る前までに、思い付かないといけませんわね。」



「お嬢さま方、失礼します。

 先代公爵夫人がお越しでございます。」


 ライラが二人に伝えた。


「わかりましたわ。

 ライラ、通してくださる?」




 ブルーシア先代公爵夫人は、昨日と同じくギラギラした、違うドレスを身にまとっていた。


 ウィルデリア達はこれがブルーシアの流行なのかと勘違いしていた。


「突然お邪魔して申し訳ありません。」


「いいえ、とんでもありませんわ。」

「ありがとう。

 実は…ロウフィール嬢にお願いがありまして。」


「私達は失礼します。」


 気を効かせたサリアは部屋を出た。

 気の効かないニールを引きずって。




「わたくしはクロードに酷い仕打ちをしました。」


「夫人…?」

「あの子の実の母を死に追いやったのは、わたくしも同然です。」


 先代公爵夫人は、自分が身重のブルーシア公爵の母にした仕打ちを、ウィルデリアに話した。


「あの子はわたくしの犯した罪を知っても、変わらず母と呼んでくれる優しい子です。

 ロウフィール嬢、息子の事をどうか、よろしくお願いしますね。」


「それは、わたくし方こそですわ。」


「ふふっ、それは良かった。

 ……あの子には亡くなったアベンヌの分も幸せになってほしいのです。」


 先代公爵夫人は涙を拭った。





 夕方、ブルーシア公爵と城の一角にある、薔薇園を散歩していた。

 ウィルデリアは夕日に映える、色とりどりの薔薇を見て感嘆の声をあげた。


「わたくし、こんなに素敵な薔薇園始めてですわ。」

「ネイト城自慢の薔薇園です。

 父が母の為に作らせたものです。」


「先代公爵閣下は、夫人をとっても愛しておられたのですね。」

「私もそう思うよ。

 ただ、母はそう思ってないらしい。」


「なぜですか?」


「恥ずかしい話し、父はしょっちゅう浮気を繰り返して…

 ああ、私は浮気なんてしませんから、ロウフィール嬢どうか安心して下さい。」


 急に焦り出すブルーシア公爵を可笑しく思ったウィルデリアは、「ふふっ」と笑い。


「どうか、ウィルデリアと呼んで下さい。」

 と言った。


「わかった、ウィルデリア。

 ウィルデリア、私のこともクロードと呼んで欲しい。」


 ブルーシア公爵も同じく名前で呼んで欲しいと、言った。


「はい、クロードさま。」


 と、微笑んだウィルデリアの笑顔は更に美しかった。

 ブルーシア公爵は顔を真っ赤にして、誤魔化すように天気の話しをしだした。


 ウィルデリアはそれに付き合った。


「今日の夕日はとても綺麗ですから、明日もきっと晴れますわ。」


「きっとそうですね。」


 夕日より貴女の方が何倍も綺麗だと公爵は言いたくなったが、勇気がなくて、言えないままその日は、終わった。

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