第13話ブルーシア公国へ

 ウィルデリアがブルーシア公国に招待されたのはその二カ月後だった。

 ちょうど学園が長期の休みの期間だったのだ。

 ブルーシア公国へはメイドのライラとロウフィール家の護衛数人に友人のサリア、サリアの使用人のニールも同行してくれた。


 国境にはブルーシア公爵直々に迎えに来てくれた。

 公爵のギラギラした出で立ちにサリア達は驚いたが、ウィルデリアと付き合いの長いサリアはすぐに慣れた。


 国境から数日かけて、ネイト城のあるべセラの都についた。

 白い石造りの建物が美しい大きな都だった。


 べセラの都を抜けるとネイト城があった。


 ネイト城は先代の公爵が建てさせた城で、その絢爛豪華な造りは目を見張るものだった。


 先代ブルーシア公爵夫人がウィルデリア達を出迎えてくれた。

 美しい黄緑色の髪の貴婦人だが、ギラギラしたドレスは流石は親子だと納得した。


「先代ブルーシア公爵夫人、クローディア・ブルーシアです。

 ようこそ、ネイト城へ。」


「お初にお目にかかります。

 ウィルデリア・ロウフィールですわ。

 そして、友人のアリサ公爵令嬢。」

「サリア・アリサです。」



「お美しいお嬢様方ですこと。

 長旅、お疲れでしょう。

 直ぐにお部屋に案内させましょう。」



 案内された部屋は貴賓室なのだろう。

 とても豪華な造りでウィルデリア達はまたしても驚いた。

 その日、時間も遅いという事で、ウィルデリア達はそれぞれの部屋で食事をして休んだ。



 翌日、ウィルデリアの泊まる部屋に訪れたサリア達は、部屋中に飾られた、たくさんの百合に驚いた。


 今朝ブルーシア公爵から贈られた、上品な香りがする白百合の花だった。


「まるで花屋だなあ。凄い量だ!」


「ブルーシア公爵の素晴らしい気合いの入れようですね。

 愛されてますね、ロウフィール嬢。」



「ブルーシア公爵はお優しいのですわ。

 わたくしが差し上げた御守りも常に持ち歩いてるそうです!」


 嬉しそうに語るウィルデリアにサリアは気づく。


(まさか、ウィルデリアは公爵の事が⁈)


 聞けば、公爵は何度もやり取りする手紙にも、魔法、魔法と書いたウィルデリアに引かなかったらしい。


 公爵の出で立ちはアレだが、優しい性格だとこの数日でわかったサリア。


「ウィルデリア、良い婚約者が出来て良かったな!」

「ええ、でも全ては竹女の場所を占って頂く為ですわ。」


「竹女の為でも、正直な所ブルーシア公爵の事はどう思うのだ?」


「素敵な方だと思っていますわ。」


 その表情は恋する少女の顔だった。

 それを見たサリアは友人の恋を応援したくなった。




 ウィルデリアは頂いた白百合の花をイメージして、ドレスの色をクリーム色にした。

 本当は純白のドレスを着たかったが、生憎と持って来てなかったのだ。


 その意図に気づいたのかブルーシア公爵はウィルデリアに微笑んだ。

 とっても嬉しそうに。


 ウィルデリアは照れたようにうつむいた。


 いつも通り男装のサリアはそんな二人を見てむず痒い気持ちになった。


「ロウフィール嬢、アリサ嬢。

 こちらは私の従兄弟のバレリオです。」


 ブルーシア公爵は隣の長身の男性を紹介した。


「ブルーシア公国の宰相を務めています。

 バレリオ・デルーカと申します。」


「ウィルデリア・ロウフィールですわ。」

「サリア・アリサです。」


「実は2日後に会う予定だった、星見の巫女さまは、バレリオの娘で、私の従姪になる。

 名前をビオラ・デルーカ。」


「会う予定だった⁈」


 ブルーシア公爵は申し訳なさそうに言った。


「すまない、ビオラはおたふくにかかってしまい、今は会わせれないんだ。」


「まあ、星見の巫女さまのご容態は大丈夫ですか?」


「容態はあまり良くないらしい。

 ビオラはロウフィール嬢に伝えたい事があるようで、バレリオ。」


「娘は、『ロウフィール嬢の探しているお姉ちゃんは魔法使いが場所を知っている。

 見つけたかったら魔法使いを探して、魔法使いはロウフィール嬢のすぐ近くにいるから』と。」



 星見の巫女の伝言を聞いたウィルデリア達は驚いた。

 そして思い当たる節がある、ウィルデリア。

 以前、学園で感じた魔法の形跡。


(星見の巫女さまの言うことが本当なら、学園にいるんだわ。

 魔法使いが。)


「星見の巫女さまに、ありがとうございます、お大事に、とお伝えくださいませ。」


「ロウフィール嬢、ありがとうございます。

 娘に伝えます。」



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