第7話先代ブルーシア公爵

 クロード・ブルーシアの母親は落ちぶれた貴族の家の娘だった。

 家族を助ける為にある伯爵の家で雇われていた。

 真面目で働き者の彼女は伯爵家の皆んなから気に入られていた。


 ある日の晩、伯爵の屋敷で夜会が開かれた。

 その夜会には先代のブルーシア公爵も招かれていた。

 そこで彼女は先代の公爵に気に入られ、一晩共に過ごした。

 彼女は身ごもった。

 それを知った先代の夫人が怒り狂って公爵家の力で伯爵家から彼女を追い出した。


 実家に帰った彼女は、なんとか子供を産んだがすぐに亡くなってしまう。


 産まれたのは先代公爵によく似た男の子の赤ん坊だった。


 公爵家には夫人が産んだ一人娘しかいない。

 先代公爵は赤ん坊を引き取ったが、その世話を何故か夫人に任せた。

 夫人は先代公爵から任されたとはいえ、赤ん坊には複雑な感情しかなかった。


 不思議な事に夫人は、次第に大きくなるに連れて先代公爵に、似て育いくクロードに愛着を感じる事になる。


 そして、実の娘のアベンヌと別け隔てなく接する事になっていた。


 そんな夫人を見て先代公爵は夫人と息子に贈りものをした。


 先代公爵は、公爵が実の母に付けられた名前を改名させて夫人から名前を取り、名付けた。


 公爵夫人の名前はクローディア。


 まだ幼い公爵はすぐにクロードの名前に馴染んだ。


 時々間違えて呼ばれる、エリオスという名前に反応をしてはいたが。





 若干若白髪のある長い黒髪をひとまとめにした、ギラギラした出で立ちの青年、クロードはウィルデリアからの返事の手紙を何度も何度も読み直した。


「セシル。」


 クロードは自分の使用人の名前を呼んだ。


「いかが致しましたでしょうか、クロードさま。」



「私はやはり、ロウフィール嬢に一目惚れをしたようだ。」

 穏やかに笑う主人にセシルも嬉しそうに笑った。

「それは素晴らしい事です。」


 恋は盲目である、ウィルデリアからの手紙がなんとか読めたのはさて置き、その汚い字も可愛く感じた公爵は確信した。


 一目惚れなんてないと思っていた。


(あったんだ。母上の言う通りだった。)


「セシル、すぐに返事を書こう。

 何か、贈り物もつけよう。

 彼女に似合いの美しい物がいい。」


(そうだ、贈り物は母上に相談をしよう。)


 彼は少しマザコンでもあった。


 クロードの着物のセンスは彼の育ての母、クローディア似であった事は、後になって知る事になるウィルデリアだった。









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