17話 少年愛は最高だぜ
どうもこんにちは。
「あーっ! ショタコン盗賊!」
「ハァ? 何言ってるのお前」
あ、そうだよね。この世界にはショタコンと言う言葉はないのか。じゃあ何て呼んだらいいんだろう。男児好き変態盗賊?
「アンタ……。顔を合わせるなり何失礼なこと言ってくれてるの……?」
うっわやべぇ。聞こえてた。
「全部丸聞こえだよ! もうちょっと自分の心の声を隠す努力をしろよ!」
あはは……。すいません。
適当に笑って誤魔化そうとしたけれど、そこで彼女は気づいてしまったらしい。私がベクティナくんと手を繋いだままであることに。
「何ソレ。見せつけてくれちゃってるの――?」
「ヒィィ!!?」
怖い怖い! ホント何なの、この人! 自分の推しをディスられた
あ、そっか。今この人からすれば、自分の最推しがどこぞの喪女とラブラブ恋人繋ぎをしている状態なんだ。これはただ、逸れないように強く握ってるだけなんだけど。まぁそんな事情を知らなければ、万死に値することだよね。
それを察して、私は掌を解く。
でも彼女は許してくれない。
「おいもっとその子から離れろよ。手も洗え、彼の残滓を一切身体に残すな。そしてその子の全身を消毒しろ。お前みたいな奴が触れていたら汚れちゃうだろ」
おうおうおう。随分と言ってくれるじゃん。まぁ、概ね同意なんだけどさ! それでもそれなりに傷つくよ!!
「ちょっと環さん。離れないでください」
ぎゅっ。おい。どうしてだ。ベクティナくんが私の手を再び握って来た。ヤバいってこの状況。これまでならまだ言い訳できたかもしれないけど、君から握って来ちゃだめだよ。それも、この人の目の前で!
「ファッ!?」
思わずしゃっくりが出た。ヤバい。ホントにヤバい。ショタコン盗賊の髪が逆立っている。何かこんな感じの妖怪を本で読んだことがある。名前は忘れたけど!
「何でお前なんかがその子に手を握られてるんだよふざけるなよあーしだってまだ触れたことないのに死ねばいいよ殺してやろうか流石にここじゃ不味いからぶん殴るだけで済ませてやるよさあ覚悟はできてるんだろうな歯食い縛れ」
やめて。そんな怖いことをペラペラ言わないで。右手を握りしめないで。私の運動神経じゃ、あなたの拳は避けられない。
どうすればいい? 殴り合って勝つことなんてできないから、いっそ言葉で打ち負かすとか? コミュ症な分、地雷を踏み抜くことには自信があるよ!
「あなたそんなことじゃ、ショタコンの風上に置けないね。イエス男児ノータッチの精神dアッッファァ!?」
申し訳ありません、突然変な声を出してしまいました。でもこれは仕方ないよ! 彼女、ノーモーションで私の頬にグーをかましてきたんだもん! うわマジで痛い。
「お前、1発で済ませておきたいなら、もう黙っていなよ」
はい、黙ります。これ以上ややこしいことにはしたくありません。あっ。でも大丈夫かな。今の1発のせいで、ベクティナくんがドン引きしてる。これじゃあもう好かれないんじゃ――
「アッッハァン!!」
反対の頬に、今度はパーの感触が入った。うわぁ。めっちゃいい音したよ。
でも何で? 黙ってたのに。
「さっきも言っただろ……。お前心の声が隠れていないんだよ」
うーわー。もしかして私、思考することすら許されない生き物なんですかね?
まずいよ。私の存在そのものが否定されかかっている。どうにかして、生命体としての尊厳を守らないと。
私がダラダラと汗を掻いている一方で、ハリリタの方もちょっとまずいことになっていた。
さっきから、私に対する彼女の態度がおかしいことに、一味の連中が気づいたみたい。
「あの……、親分。さっきからどうしたんですか?」
「まさか、あの男の子が本命だなんてこと、ないですよね?」
「――――!!!???」
ハリリタの背筋が凍りつく。同時にベクティナくんも、鳥肌を立てていた。まぁあんな過激派お姉さんに狙われているとなったら、誰でも身の危険は覚えるよね。
「――ら、……く……ばれ」
「え?」
「お前ら! 歯ァ食いしばれ!!」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
ヤバイヤバイ! あの人、とうとう周りの人間を見境なく殴り始めた!!
どうしよう、逃げないと。怪獣並みの被害を出す奴が、ここにもいた!
「ベクティナくん、私たちは逃げ
ガッッッジャア――――ンン!!
「環さーん!」
あれ。なぜだかベクティナくんの声が遠くから聞こえる。そして全身が痛い。そして私は天井を見ている。
うん。これ多分蹴り飛ばされたんだね。
それを自覚してから、私はようやく口を開く。
「――ッ、痛ぁい! 何すんのさ!」
バキリ、バキリ。
ヒイィッ!? 指鳴らしながらこっちを睨まないで!
「あんたはもう黙ってなよ……」
私を睨みつけながら、ハリリタはベクティナくんに近寄っていく。危ない、逃げて、そいつは変態だ。そう注意する前に、彼はショタコン女の脇に抱えられてしまった。
「えっ。え!?」
「欲しいものは手に入ったから――。お前たちも、達者でな」
「親分!? どうしたんですか」
「うわああぁぁぁぁぁぁ――――――――――んんんんんん!!!!」
あの女! さっきノータッチを伝えたばかりなのに、ショタを抱えて走って逃げおった! マジでダメ人間呼ばわりされても文句言えないよ!
全身が痛い。でも助けに行かないと。仲間をあんな変態女の所にいさせる訳にはいかないからね。
お前も十分、変態女だろうっていう突っ込みはナシで。
「待てコラァァァァァァ!!!!」
私はどこに行ったかよく分かっていない2人を探して、避難所を駆け回った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます