虚無の仕事術 ヌルオードライブ

この稿はSF技術であるところの相殺航法、ヌルオードライブを語るものでないことを先に明記しておく。


安上がりの科学では、あまり上等なものは手に入らない。

「ヒトの中の魚、魚の中のヒト」

ニール・シュービン 著

垂水雄二 訳


私の考えた虚無の仕事術ヌルオードライブ(Null Officework Drive)を紹介する。

まず、仕事に入る前にしっかり回復をしておき、負の時間軸方向(以下:過去もしくは過去方向)に希望を配置する。

次に、正の時間軸方向(以下:未来もしくは未来方向)に虚無の仕事を配置する。


すると、過去に置いてきた希望からは斥力が発生し過去からは遠ざかろうとする。

未来の仕事からは重力が発生しそのままにしておくと虚無に呑まれる。

そこで、虚無に呑まれないように過去の希望に向かって仕事から逃避すると結果として未来方向に時間と仕事が進んでいく。

この時、主観時間は極限まで引き延ばされ長く感じることはアインシュタインの相対性理論によって語られている。(注1)


また、仕事が終わった場合の過去、未来方向の出来事はどうなるのかと言えば、過去においてきた仕事からは残業という名の重力と帰宅圧力という斥力が発生することが知られている。

ここで、残業のシュバルツシルト半径を脱出できなければ「ひかり」の回線速度をもってしてもソーシャルゲームに復帰出来ないことは自明である。

無事、帰宅圧力が上回った場合、過去の仕事からは斥力が発生し、無限遠の未来の希望からは引力が発生する。

未来への希望に向かって全速力で加速していき、加速する物体の主観時間と相対時間はズレが生じることはアインシュタインの相対性理論によって知られている。

加速する物体の主観時間に対して相対時間が長くなるので

「一瞬の夢の様だった」

とのことを楽しんだ人間は口をそろえて言うのだ。


そうして、楽しい時間が終われば目前にはまた虚無の仕事があり、人生は続く。




注1

“熱いストーブの上に1分間手をおいてご覧なさい。1時間ぐらいに感じられるでしょう。可愛い女の子と一緒に1時間座ってみなさい。1分ぐらいにしか感じられないでしょう。”

という旨のことをアインシュタインは記者に語っている。

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