第31話:頼みにくいが………
テキパキとテントを畳んでスカートの中――実際にはスカートの中にある収納具の中に収納していく。
タクトも小物やテーブルと言った物をバッグの中に片づけると、村へ帰る帰路となった。
道中は特に問題なく歩く事
既に夕方近くとなっており、日も落ちかけて薄暗い中冒険者
扉を開けると初めて訪れた時とは違って少々騒がしい雰囲気だった。
「ぉぉ、冒険者。と言っても子供連れか、頼みにくいが………」
カウンターで慌ただしくしていた初老の男性は、扉の開く音に反応したのかこちらを見ると判断に迷うと言ったような複雑な顔で話しかけて来る。
エリナがその声に返事をすると、初老の男性は何かを思い出したように顔を明るくさせる。
「そう言えばメイドの嬢ちゃんはA級だったな、それなら安心だ」
そう言いながらゴソゴソと棚から出したのは一枚の依頼書。
タクトと姿を隠したミニエルが覗き込むと、人探しの依頼の様だった。
「これは?」
エリナも依頼書を見ると、これを出した意図を探ろうとする。
男性は二度三度深呼吸して気持ちを落ち着けると、それでもやや早口に話し出す。
「ここから三軒隣の村長家の子がな、昨日から帰ってきてないんだ。こんな小さな村だ、子供なんて何度か見回れば大抵見つかるもんだが、今回に限って村中で探しても見つかりやがらない。外に出ちまったんじゃないかって話をしてたんだよ」
話を整理するに、どうやら村長の子供が昨日から戻らず村人総出で捜索するも見つからないとか。
村人で外に出られる程鍛えたものは極僅かしかいないので外の捜索に手を貸して欲しいと言った内容の様だ。
「その子の特徴とか教えてくれないか?」
子供の方からの質問に少し戸惑うも、冒険者向けに作ったのであろう要点を纏めた資料を取り出して見せて来る。
「年齢は7歳。赤い短い髪の女の子で当時来ていた服の色は白ですか」
エリナが似顔絵付きで書かれたそれを読み上げると、タクトの方を見る。
タクトが一つ頷くと、男性に行ってきますとだけ伝えエリナはタクトの手を取り歩き出す。
「済まない、頼んだ」
二人と見えない一人の去り行く背中に感謝の言葉を伝え見送るのだった。
◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
先ずは村長家に向かったが、誰も居なかった。
皆捜索で忙しいのだろうと言う事で近くに居た村人から話を聞く。
普段は友達と村の中心にある広場で走り回ったり、畑の近くで虫を取ったりなどして遊んでいるらしい。
割とお転婆な性格らしく、好奇心旺盛だとか。
昨日も広場で友達と遊んでいるのを見たが、広場は何度も探したが手掛かり一つなかったとの事。
昼過ぎに友達と別れてご飯を食べた事を村長から聞いていたらしく、それをそのまま伝えてくれた。
その後また遊びに出かけたのだが、そこから先は友達とは遊んでいない様で行方が判らなくなっている。
ある程度話を聞いた後、村人は畑の方を探しに行くと言い残し去って行った。
「村の内部は土地勘のないから足手まといになりそうだな」
話を聞きながら黙って考えていたタクトが口を開くと、エリナもそれに賛同する。
ミニエルは上空から何度か確認すると言って空高く飛び上がるも、それらしい姿は見えなかったと降りてはまた飛び上がっている。
「まずは村の外に出たかどうか確認致しましょう」
「じゃあ村を区切っている塀を一周見て回ろうか」
どうやら考えている事は同じ様な内容だったらしく、三人はここから一番近い塀を起点にぐるりと一周しながら塀を調べてみる事にした。
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