cASE_NO:000-3-edD Of BEginninG-[Adara-part:A]
初部活の活動、活動目的を全員で確認した後で、職員室の顧問教師・
「なーんか1つ達成したって感じだね!」
「なーにいってんだよ。書類書いたのも説明したのも
指摘したの
「いいのよ。りりあんがそう思ってくれてるならなんか達成はできたんじゃない?」
「縫至答乃よ。お前は甘すぎるぞ」
「どこから目線だ君塚子々吏」
「ケンカはやめてくださいねのうちゃん先輩」
「「これが通常」」
「なんだかんだ仲良いよねーのうちゃんとししりん」
何が楽しいのか、スキップしながら言う華厳だが
「んー。そんなことはないよ。きっと気が合うだけ」
「ないな……え?ん………?!」
縫至答の回答に、初めは否定的だったものの、その言葉を受けて疑問符が飛んでしまう君塚。
「……気が合う!?」
「うん。違うか?君塚よ」
「なんでのうちゃん先輩は君塚さんにだけその態度なのかわからない」
西央が笑いをこらえながらぼそりと独り言のようにつぶやく。
「え?そうかな?最初からこうだからかなぁ」
「今更変に普通にされても違和感だしな…」
「何気にあれよねー?この中で一番付き合い長いのってのうちゃんとししりんだよね」
「付き合いっていうか、因縁に近いけどね」
「だなぁ。悪かねぇけど、それも」
「だな君塚」
「ほらやっぱり」
そんな会話が駅近くまで続いたところで、縫至答が用事がある、と申し出た。
「用事?」
華厳が、どこかしら落としたトーンで聞き返した。
「うん」
「えー。みんなでお茶でもしようと思ってたのにー」
「もう、それなら先に言ってよ、りりあん。施設に予約入れちゃったんだ」
華厳の駄々に対して返す縫至答の声には申し訳なさが滲み出すぎていた。
「……それなら仕方ないか」
「あ、このあと莉理亜たちはそっち行く感じなのか?ならごめんけど、あたしもここで別れるわ」
「えー!?ししりんもー!?」
「うん。このあと予定あってよ。みんなで行ってきな」
「私は大丈夫だよ、りりあん」
君塚の申し出に続いて西央がなだめるように言う。
「私も平気ですけど、一緒していいんですか?」
縫至答とともに年長の八飛宮も答える。
「ほんとー?ありがとー!実はこのあとくらんちゃんも来る予定なんだー」
「えー?そうなの?なら行きたかったなぁ。もう、ちょっとちゃんと先に言ってよりりあん!」
「ごめん!すっかり!」
「くらんちゃんってあの他校に通ってる莉理亜の知り合い?」
「そう!あ、そうか、なんだかんだでまだあったことないもんね、ししりん」
「おう、また今度セッティング頼むわ」
「うん!必ず。のうちゃんもね!」
「うん。よろしくね。じゃ、ここで」
「残念だけど、またねー!」
「お疲れ様です、のうちゃん先輩、君塚さん」
「お二人とも、またですー」
そうして縫至答と君塚、華厳と西央と八飛宮はそれぞれに別れて歩いていく。
「縫至答乃よ」
「なによ。君塚子々吏」
「施設いくのか」
「そうよ。なに」
「いや、あたしもそうなんだよ。同行でもOK?」
「そうなんだ。いいよ別に」
「そいつはどうも」
凸凹コンビがついに二人きりで移動の経路を共にすると言う、縫至答にとってみればありえないイベントが発生した瞬間である。
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一行と別れた
車内が比較的空いていたこともあり、肩を並べて座席に座る。
「なにしに施設いくの?」
「定期検診。先月都合でスルーしてるからな」
「そうなんだ。まあ、病気じゃないからね。1ヶ月くらいスルーしても平気か」
「そっちは何しにいくんだよ」
「私は気になることがあって、
「アポ取れてんの?あのひとめちゃくちゃ忙しいだろ」
「今日は結構所内にいるって。朝のうちに確認しといたんだ」
「所内いたところで捕まるのか?」
「まあ、多少待つ覚悟ではある」
「それは殊勝なこってす」
「今日の定期検診は
「うん。定期はいっつも別。結果とかはフューネ先生だけど」
「そのあだ名、あまり言わないほうがいいじゃないの」
縫至答がそれとなく周囲を見回しながら口にするが、周囲の乗客とはそれなりに距離があるか、談笑したり、ヘッドフォンを装着している状態で、どうやら二人の会話の内容に関心のあるものはいないように見受けられた。
「大丈夫大丈夫。これだけじゃ誰も気づかないって」
「まあ、そうかな。それに、反応するようならもう知ってる人ってことか」
「だろうよ。何も知らねーでこのあだ名からフルネーム想像できるやつなんていないって」
言い切った時、二人の端末が同時に震える。
合わせたように二人同時に端末を開くと、メッセージアプリの星籠部のグループに、華厳からのメッセージが入っていた。
『今度こそみんなで遊ぼうね!絶対だよ!あと二人とも喧嘩しちゃダメだからね!!』
「まったく。莉理亜はあたしらをどういう仲だと思ってんだ」
「まあ、ケンカは実際ちょくちょくしてるからね」
「ケンカっていうのかあれ」
「そう見えててもおかしくないんじゃない?」
「……まあしかたねーか。ってかさ、縫至答乃」
「何よ、君塚子々吏」
「なんでお前、あたしに対してだけそんな態度違うんだ?」
「……そうかな?」
「自覚なしかよ!」
「そんなことないよ?」
「あるわボケェ。ほかのやつらにはだいぶ優しめなのにあたしだけ扱い雑じゃね?」
「何、嫉妬してるの?」
「ち、ち、違うわ!そういうことじゃなくてよ」
「なーに焦ってんだか……んーそうねぇ。確かにそうかもね」
「どうなのよ」
「強いて言えば、一番巣に近いのが君塚子々吏といる時なのかもしれない。ケンカしてる時が巣ってわけじゃないけど、最初の出会いがちょっと特殊じゃない?私たち」
「ああ、まぁ。初めましてーとかよろしくーって感じじゃなかったからな。あたしのせいで」
「そう、君塚子々吏のせいでそうだったのが、この態度に繋がってるのかも」
「ふーん…意外と男っぽい性格なのか?縫至答乃は」
「そんなつもりはないけど…あ、次だ、降りよ」
「おう」
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天頂からはやや傾いてきた陽の光に照らされたその施設は、その概要を知っていればそうであるほど、入るのにやや気後れしてしまうような、厳とした雰囲気を持ってそこに佇んでいる。病院というにはやや物々しい雰囲気が、そこには蔓延していた。
独立行政法人対特殊事案専従研究施設、組織名「斑鳩総研」。
そこは、都市伝説というには現実味を帯びすぎているキャリアの最大の特徴であるムーンギフトを研究、並びにキャリアの支援・援助を行っている組織体の研究施設であり、その組織体である斑鳩総研の本拠地でもある。
ムーンギフトは、未だその実態が正確には解明されていない未知数の現象だ。実際に感染が確認されている人間はキャリアと称されているが、それ自体は通常の伝染病や疫病のように空気・接触・飛沫などの経路で感染する事案は確認されていないため、キャリア=感染者という表現は正確ではないという意見も散見されているが、確認されているキャリアを一番多く抱える日本がその研究においては先駆者となり世界をリードしている現状があり、その先陣を切っているのが斑鳩総研である。その斑鳩総研が5年前に発表した論文に掲載された呼称がムーンギフト、キャリア、という言葉だった。そしてこれらの現象を総括する事象そのものを示す単語がムーンギフトシンドローム、通称MGSとされている。
このムーンギフト自体は"感染”すると、その人間の個体に備わった潜在能力にまつわる技能を開花させるものであるとされている。
その実、その潜在能力の開花がなぜ引き起こされるのか、何が原因なのか、その原因が、身体的な何かに起因する先天的なものなのか、外部の影響に起因する後天的なものなのか、それすらも現在は不明とされている。しかし、様々な感染者の事例を検証し統計を算出した結果、そのキャリアの感染したタイミング・時間帯・場所の確認が取れたもののうちのほとんどが昼夜を問わず、とある条件に共通性がある可能性が浮かんできた。それは地球の衛星である月が、空に肉眼で確認できるサイクルにある、というものだった。
これが、現在確認されている感染者ーキャリアに関して最も関連性と確実性の高いデータであるため、その共通項をとってその現象はムーンギフト、並びに総括して先述の通り、ムーンギフトシンドローム、ムーンギフト症候群、MGSなどと呼ばれるようになった。
これらMGS関連の分野研究の先駆者であり、フラッグホルダーであるのが斑鳩総研である。世界を牽引するその研究力、調査能力を裏付ける保有サンプル数は、世界でも特に群を抜いている。
縫至答 乃と君塚子々吏が向かったのは、東京都目黒区自由が丘に存在する斑鳩総研の心臓とも言える中心施設『斑鳩総研枢機院』である。
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