2.

毎日が、毎日同じように流れていた。私にはそれが心地よかった。だから、何事もなく過ごせている今が、ふとした隙に失われてしまったら。そう思うと怖くてたまらなくなる。でもこう思うのと同じくらいの頻度で、こんな毎日が無くなってしまえば、壊れてしまえばいいとも思う。人が生きている理由とか、愛とか憎とか、そんな余計なことまで。人という生物は考え方も感じ方も大体ひとつのパターンにまとめられて、ついやってしまうあの行動とか、恋をする理由とか八つ当たりや責任転嫁をしてしまう理由もみんな同じ。ストレスを解消するためにする行動がコレです。人間には様々な欲求がありますがその欲求を叶えられない時に欲求不満となり葛藤が起きます。男性は女性より脳の何かの大きさが二倍で、ナンチャラホルモンっていうのが10倍だか20倍だか多いから性欲が強いのです。だから女性に性交を求めるのはごく自然で仕方の無いことなのです。こんなことを保健の授業でやると、見た目が違うだけであの子とその子と私とで何ら違いはなく、いくらアイデンティティを確立しようが無意味。結局は生まれたてみたいに何も出来なくなって憐れに死んでゆくのだ。と、他愛もないことを浅く考え込んでしまう。息を吸うと熱くなった空気が喉と肺を焼いた。熱風が身体を嬲った。葉っぱがそよぐ。水面が規則的に揺らぐ。顔を顰める。なんだか幸せだ。こんなにも意味の無いことを考えられるだけの知能をもって、こんな辛い世界に生まれられて。だから失いたくない、この他愛なく素晴らしい毎日を。いけないこととは思いつつ、帰りの自転車に乗る前にイヤホンを耳にさした。曲のミックスリストを再生。耳から伝わる音響が脳内を蹂躙し、身体が感じる気温とは別になんだかあつくなってきて、ペダルに足をかけ思い切り漕ぎ出した。何も聞こえない。ベースとギターとドラムとキーボード、それから張り裂けそうな歌声以外、何も。この感覚がたまらなく快感だった。刻まれるリズムに合わせて足を動かす。揺れたイヤホンのコードが頬を掠め、くすぐったさに首を振った。曲が盛り上がりを見せるほどに息が上がり、胸が痛くなり、走る自転車の速度は上がって景色は瓦礫のように流れて行った。

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