第2話



「ありがとうございます、またお越し下さいませーっ!!」

ハキハキとした喋り方に優しい声音。

反り腰気味だが綺麗な姿勢、動きと共に流れる長髪。

富士の山に積もる雪の様に白い肌、はやや栄養不足で血色が悪いのだが。

誰が見ても美しく可愛らしい、また会いたくなるタイプの女の子。

「いやー今日も早朝なのに元気だねー、ハイナちゃん。いつものお客さん達も全員買い物済ませた様だし、今日はもう上がって学校の支度しに帰りな」

「ありがとうございます店長さん!!少し片付けしてから上がりますね。それから、その〜………」

草間家から徒歩十分のコンビニ。

平日の早朝四時から登校前のギリギリまで杯那が働くコンビニ。

店長が何処にでも居そうなオッサンのコンビニ。

そこにはモジモジと両手の人差し指を捏ねる美少女看板娘と何処にでも居そうなバーコード頭の店長が朝のピークタイムを終えて話していた。

「廃棄のお弁当かい?持ってっていいよ。って本当はダメなんだけどね〜。どうせ捨てて焼却場で燃やされるくらいなら、勤労学生兄妹の胃袋で焼かれた方がお弁当も幸せだろうよ!それに、ハイナちゃんが入ってからうちも繁盛してるからね」

「やったーーー!!!いつもありがとうございます店長さん!!ではでは、片付けして帰りまーーーすっ」

念願叶ってご機嫌な杯那は手際良く片付けを終え、ビニール袋に廃棄のお弁当を詰め自宅へと帰って行く。

家に帰ると夜勤のバイトを終えて寝ている兄の布団を掛け直し、冷蔵庫にお弁当が入っている事をメモに残し、兄の大学の授業日程を見てアラームをセットしてようやく自分の着替えをする。

その後薄切りの食パンにうっすら苺ジャムを塗って片手に持ち、鞄を肩に掛けて登校する。

今日は時間に余裕があるからか走らない様だ。



「おはようハイナ。昨日の数学の宿題わかった??」

「おはよう。あー、あれ私も手こずったけどわかったよ!」

「ハイナ〜、その問題解き方教えて〜」

「わかんない子みんなおいで!サクッと説明します」

「ハイナ、1インチって何センチだっけ?」

「ん??2.54センチ」

「ハイナ、ペリーの黒船四隻の名前は?」

「サスクェハナ、ミシシッピ、サラトガ、プリマス」

才色兼備、彼女自身を表すのにこの言葉程に適したものは無いだろう。

その人の良さと頭の良さ、表情の明るさから老若男女問わず人気の妹。

通う高校には入学当初からファンクラブが陰ながら存在するらしい。

そして、入学当初からブラコン疑惑も薄々と噂されている。

が、真実は友達の愚痴話の合間に兄の愚痴を適当に作って話している所為で兄話が過多になっているだけなのだ。



「起立、礼」

「「「ありがとうございました!!」」」

「ハイナ帰ろ〜!!」

「うん、帰ろ〜」

下校のチャイム後、いつも通り帰宅部仲間と真っ直ぐに家へと足を進める。

家に着いた後は兄の居ない内に自身の下着を洗濯して晩御飯の支度と宿題、そして予習をするくらいで1日が終わる。

はずだった。

「や、やぁ、おかえり、杯那」

「え、お兄ちゃん!?今日三限までで、その後バイトだったでしょ??どうしたの??」

まさかのエンカウント。

驚きの妹と焦る彼女の下着達。

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