弟への手紙

[フィリアサイド]




王城の、とある一室に幽閉された美女の姿がある。アースロイドの妻で魔王の妃であるフィリアの姿である。フィリアは、ほぼ毎日聞こえてくる、王都からの悲鳴に耳を塞ぎ、いつ、襲ってくるか解からない暴漢や、メイドの裏切り。毒入りの食事など、毎日の恐怖や孤独と、日々戦っているのである。


「アースロイド様の苦しみは、こんな物ではない。苦痛や苦しみ。悲しみを分け合うと誓っているのだ。アースロイド様の心を守り、人の心を魔王に飲まれない様に、私がいるのだ、」


「守って見せる。アースロイド様を・・・・」と言って、気持ちを奮い立たせるのであった。






しばらくすると、コンコンっとノックされ、「フィリア様。レギオンです」っと声がする。




ドアを開けると、レギオン。レイヤ夫婦の姿があり、二人をソファーに促した。メイドが紅茶を入れ、お菓子を置いて下がる。3人だけとなると、まず、レイアが、探知魔法で毒の判別をしてから、音声遮断の魔法をかける。すると、レギオンが笑顔で語りだした。


「今日は、なかなか面白い噂を聞きつけましてのう」そう言って、レイヤと顔をともに、「アハハハ」「宇フフフ」と笑い出した。「???」怪訝な顔をすると、ニコッとして、「最近、ある冒険者らしき者の噂が、ありませてのう。[仮面舞踏会]と申す3人組の、物凄く強い冒険者らしき者が現れて、オーグ10体とワイバーンを一瞬で倒したと。そして、その姿は、3色の刺繡入りのロングコートで、顔を仮面で隠しておった、との事。皆は英雄が現れたのではないか?と噂しております。」


「その3人組とは、もしや・・・」


「はい。カイン様達だと思われます。」


「あの子たちの他に、その様な事ができるのは、アースロイド様かクラリス様だけでしょうな。」


カイン達の元気な様子を聞くことができて、思わず涙がこぼれた。「元気でいてくれているのですね。アースロイド様も喜ばれますね。」久しぶりに部屋の中で笑い声が響いた。


「そして、その強さに肖ろうと、刺繡入りのロングコートを求める者が後を絶たず、国中で品薄になってるようでございますよ。ウフフ。」「まあ。[仮面舞踏会]が有名になれば、カイン様達はめだちませんからね」カインの元気な様子は、私やアースロイド様の癒しになるのだろう。「文でも送れればいいのだけれど、そういう訳にはいかないものね」っと残念そうにすると、「短い文なら、遅れますよ」レイヤがいう。


「私の杖とアリサ様の杖は、[兄弟杖]なのです。短い文なら大丈夫かと。」


「本当ですか。」そう言うと、可愛い弟に向けて、笑顔で文をしたためるフィリアであった。

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