旅立ち

ぼくが、殺す?アースロイド様を?姉上を?




僕は、頭が真っ白になって、その場に座り込むと、エルザとアリサが、支える様に、抱きしめた。その様子を見ながらアースロイド様は辛い表情で言葉を繋げる。「お前達に過酷な使命を与える事に、謝罪する。すまん、だが、お前達にしか、できない事なのだ。お前達にしか、この国を託せないのだ。我が弟達よ。」最早、反論などできるわけもないのであろう。「わ・が・じ。まじだ・・・。」僕達3人は、お互い泣きながら、首を縦に振る。それを見るクラリス様夫妻とレギオン夫妻も涙をこらえている。


「あなた達だけに辛い思いはさせません」姉上の声のあと、アースロイド様が続く。「私とクラリス夫妻は、これから、すべてを壊すために、極悪非道の限りをつくす。まさに、魔王の如く。おそらく、それによって、私の心は壊れるであろう。フィリアには、私の心が、人のままでいられるように、私の心を守ってもらう。そのために、フィリアは、城に幽閉され、最早外にでる、表舞台にでる事はない。」ということだった。


それは、姉上は一生、城で閉じ込められて。アースロイド様の心を守って生きるってことである。そして、レギオン夫妻は、そんな姉上を守る役目だった。


そして、やさしく、美しい笑顔で、それでいて、眼に涙を溜めて、姉上が語りだす。


「次に、私達姉弟が合うのは、貴方が英雄として、私とアースロイド様を討つ時ですね。立派な姿を楽しみにしていますよ。」そう言って、僕を抱きしめ、頬にキスした。


クラリス夫妻は、エルザとアリサの側に赴き、「私達は、エルザ、アリサ、お前たちが討ってくれよ。」そう言って、抱き合った。エルザとアリサは、もう声にもならない様に泣き声をあげ、しがみついていた。


外は、茜色に染まり、涼しげな風が吹く中、泣き声が、響いていた。いつまでも・・・。












そして、どれほど時がたったのだろう、日も暮れたころ、アースロイド様が、鞘は黒く、だが、刀身は赤く、燃えるような一振りの刀、[炎龍刀・阿修羅]をくださった。


エルザには、クラリス様より、[剛槍・ライオット]すべてを貫く、白銀の槍。アリサには、レイヤ婆さんより。[海杖・ウロボロス]魔力を海ほどの範囲に広げ、周囲の敵を討ち滅ぼす、魔法の杖を、授かった。


そして、最後に、姉上から、3色の僕達の名が刻まれた指輪を授けて、「この指輪は、あなた達しかつけることはできません。赤はカイン、白はエルザ、青はアリサがつけなさい。この指輪を持つ者同士は、いつでも、念話で話せ、居場所もわかるようになっています。これからの、旅に役立つ様に。そして、結婚の、お祝いも兼ねておくりますね。」僕たちは、少し恥ずかしそうに、指輪を互いに左手の薬指に付け合った。レギオン爺さんから、当座の資金を受け取り、アースロイド様から、声がかかる。


「では、旅立つがよい!旅の成功を期待する!」の一言。


僕たちは、横一列に並び、「「「ありがとうございました。行ってまいります。」」」と言って、礼を尽くし、ドアを出て、屋敷を旅立った。外は、満天の星空であった。

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