第89話 作戦開始します!!
魔王が身構えた瞬間、僕と魔王の間にとあるものが割り込んで視界を遮った。
『なっ!?』
それは、百の腕と五十の頭を持つ異形の巨人。
最もそのうちの七割が翼となり、空を飛んでいるが、魔王はそれを知っているようだった。
『 ヘカトンケイル…っ!?』
の人形だ。
うちにある残ったビーズをほぼ全て。
ドラゴンの国にある剪定された枝と、煌竜様の提供してくださった一部を注ぎ込んで完成させた。
「シャドウ、手伝ってくれてありがとう」
それを操っているのはシャドウだ。
得意の影繰りで、まるで本物のように動くのを見るのはまさに圧巻だ。
「ふん。お前のためじゃない、私のためだ。それに…」
ニヤリとシャドウが悪い笑みを浮かべる。
「こんだけデカイものを操ることが夢だったからな!!それだけだ!!」
シャドウが何かを引くような動作をすれば、人形のヘカトンケイルの腕が動き、手に持った武器を振り下ろした。
僕の杖に収納していた世界の業物シリーズ。
役に立ってよかった。
最も結界で阻まれてしまっているが、魔王の視界をさえぎる目的は達成されている。
「さて…」
踊りますか。
トン、と、軽く地面を蹴り、回る。
「疑似同調開始。オベロン、お願いいたします」
水色の魔力が僕を中心に波紋のように広がっていく。
どこまでもどこまでも。許された限りどこまでも。
魔法使いたちが結界解除の魔法を唱えている。
結界を薄くしたところに集中的に攻撃が当てられ、破られた。
ダメージはまだ少ない。
鉄の雨が下から飛んでくる。
ヘカトンケイルと護衛のヒウロが被弾した。
もう少し…。
カチリと、指定の場所へと到達した感覚。
「同調完了」
待ってましたとばかりにオベロンが魔力を言葉に絡ませた。
『目覚めよ、これは精霊王オベロンの命令である』
ヘカトンケイルが魔王によって破壊された。
間に合え。
「『捕獲せよ』」
オベロンと声が重なり、発動した。
「結界に穴を開けたぞ!!!そのまま予備の天の鎖を打ち込み固定せよ!!!」
「魔法部隊!!早く詠唱を!!」
「魔王が巨人をやったぞ!!撃て撃て撃てぇえ!!!」
天空城が砲撃によって揺れている。
魔王軍は不甲斐ない。
使い魔に押されとるではないか。
魔王はあの場から動かぬ唐変木。
あれだけ最強を謳っていたが、ハッタリであったか。
『どうです?兵器の性能は?』
悪魔の癖にこっぴどくやり返されたデモナスがドヤ顔で言う。
「…まあまあだな」
先ほどの砲撃で、結界を貫けたのは楽しかった。
抜け駆けで銃身ゴーレム全て失ったのを指摘したら、あれも想定だったとバカな言い訳をしていたが、案外そうだったも知れぬと思ってしまうほどには大砲を放つのは楽しい。
『いい加減素直になってくださいよ。ほら、あそこもいけそうですよ』
「おおあそこか。標準を合わせよ!!」
砲身が唸り、発射した。
そのままドカンと結界を破壊するはずだったが、予想外の妨害が入った。
『あれは人間の女ですね。生意気に結界を貼って防ぐなんて』
変な箒の乗り方をしたおさげの女が、大砲を防いでいた。
「王の攻撃を妨害するとは…。まずはあいつを狙え」
「はっ!!」
女に向かって弾が飛んでいく。
が、それをことごとく弾いていった。
途中悪魔の妨害が入ったが、あの女は剣を使い反撃し、さらに切り落とした。
魔法部隊がざわついていた。
本来魔法使い達は肉弾戦には向いていない。
「狼狽えるな!魔力が尽きればただの人間だ。撃て撃て!!」
砲撃部隊が追撃する。
そうだ。
魔力を使いきらせてしまえば我らの勝利なのだ。
焦ることはない。ここはじっくりと追い詰めて──
「?」
ぐわんと地面が揺れた気がした。
「な!なんだこれ!!?」
「うわあああああああー!!!!」
「助けてくれ!!飲み込まれ…ぎゃああああ!!!」
「止めろ!!燃やすな!!」
「キノコが!!キノコの逆襲っ!!」
途端に上がる阿鼻叫喚。
何事かと視線を地上に戻すと…。
「……」
『……』
蔦の化け物と目があった。
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