第86話 決戦前夜

決戦前日。


『トランスフォオーーーーム!!!!かんっりょー!!!』


ビシィッ!!と、まるで戦隊もののように決めポーズをするアヴァロン。

早朝になってようやくリンゴの元から戻ってきた。

魔力の流れが大幅に変わったが、何があったんだろう。

いや、だいたい想像つくけど。

上を見れば本体アヴァロンの翼が増え、さらに頭の上に半透明の輪っからしきものが確認できる。


『かっこいい!!』

『アヴァロン凄い!!どうやったの!?』

『ふふーん!アヴァロンの裏技なのです!』


どやり顔アヴァロン。

確かに裏技ではある。

なんせアヴァロン、あのリンゴの元で魔王と同じく土地融合を果たし、おまけにティターニアとその連れのリンゴの臭いの男の人に色々知恵を授けてもらったらしい。

というか、アップルツリーマン実在したのか。

ただの伝説かと思った。


それにしても…、帰ったのかと思ったら、まさかのアヴァロンの元にいたとは。

深夜ごろに鳥居からひょっこり出てきて心底驚いた。

道理で昨日の返答がティターニアではなくオベロンだったのか納得がいった。


「ちなみに僕が貸し出し要請をしたのはアルデガンノの方だったのですが、なぜオベロンが来ているのです?」


と、七歳程の体躯の僕そっくりのオベロンが鼻で笑う。

双子ですかと言いたくなるほどの似ている容姿で唯一違うのは髪と瞳の色がエメラルドグリーンなところ。そして背中の羽である。

金細工で造られたような見事のトンボの羽を広げて、オベロンがフワフワ浮いてた。


『お前ティターニアの時と対応が違うじゃないか。ワシ、妖精王だぞ?』

「勝手に姿写し取られていい気分な訳ないじゃないですか」

『過ぎたことを気にするな。むしろ感謝してもいたいものだ。ワシがこの姿のおかげで妖精のなつきやすさが上がっているんだ。そうだろ?』


オベロンが同意を求めるようにメナードの方を見るが華麗にスルー。


『お前んところの精霊どもは本当お前そっくりだな』

「お褒めに預かり光栄ですね」

『褒めておらん』


日頃の行いが悪いせいですよ。


「それで、オベロンさんはアルデガンノさんと同じ能力使えるんでしたっけ?」

『バカにするなよ。妖精王たるワシが出来ることなどない。むしろアルデガンノよりも高性能だ』

「なら別に問題ないですね」


やることさえやってくれれば文句はないのだ。

ただしうちの可愛い女子陣に手を出せば髪を焼く。


幸いにもウィンデーネが緊急と知らせてくれたので女子陣はちび達以外隠れてもらっているけど、まったくもう。


『それに、あやつはワシに無断で土地を盗んでいるようだから、返すもん返して貰わんとなぁ』


クツクツと笑っているオベロン。

なるほど、この自己中心的の強欲オベロン王は、自分のものに断りもなく汚されたから自らの手でお仕置きしたい、と。

それが目的か。

ならば、断ることはない。


「では、オベロン王。これから作戦を伝えます、もし何か改善点などがありましたら教えてください」

『うむ!』














カツン、と、革靴で床を踏みつける。

様々な魔物がその人物に注目している。

魔界の頂点に立ち、そしてこの戦争で世界の主になる人物。


『期は熟した』


真白の頭にはルビーの王冠が飾られている。


『先刻、あやつから宣戦布告を受け取った。水面下で根を張っていた魔導根を焼ききり、俺様の侵食した土地を奪い取り、更には忌々しい杭を雨と共に土地に埋め込んだ。これは挑発だ』


元々あの地に住まう主に無断で侵略していたために強度がそこまででなかった。

だが、魔王の魔導根を焼き払うだけでも万死に値する、が。


『魔王様?』


笑みが溢れる。

奴もそれなりに準備をしているだろうが、俺様とて遊んでいたわけではない。

アイツさえ手に入れば、それだけでいいのだ。


奴は知らないだろうが、魔界以外の土地にも根を張り巡らせ、魔力を吸い上げている。

前回以上の力を蓄えた俺様に敗北などあり得ない。


デモナスの予想外の行動には驚いたが、所詮末端だ。

この戦場に参加することは出来んだろうが、人間側からなにかするだろう。


『明日、ウィル・ザートソンに総攻撃を加える。魔界の力を示す時だ!!!!』

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