第71話 ネコババ禁止
ライフル。
正確にはライフルに似た何か。
ライフルと火縄銃が合体したような見た目のそれは、魔力結晶の核によって魔法弾が撃てるようになっている。
こんな武器、まだ開発できてなかったはず。
案はあったが、空論として没になっていたものだ。
僕もめんどくさくて「むりむり」と無能の振りしてシカトしていた。
だってこんな所で武器革命起きても後々めんどくさくなるだけだったしー、なのにあのデモナスめ。余計なことしやがってって感じだ。
「他にもある。これとか」
ガシャガシャと様々な武器を取り出して並べた。
拳銃やら手榴弾やらバズーカみたいなのもある。いやこれはロケットランチャー?よくわからない。
手に取り透視してみると、ずいぶん簡単な作りだ。
なのに内部にある魔法陣が色んな強化を行うことによって凄まじい威力を出せるようにしているってところ。やだなぁ。
「逃げ出す時に忍び込んで盗んできた。どうせ私は裏切り者だったからな、こうなれば相手をとことん困らせようと爆破もしてきた。ざまーみろだ」
「………」
過激派…。
でもこれはこれで手土産としては嬉しい。
僕の魔法は相手の魔法や武器の構造を知れば知るほど無力化の成功率が上がる。
これで人間側の驚異は無くなった感じだ。
…いや、他にもあるかもしれないから油断はしないけど。
「他にも情報があるぞ。聞くか?」
ニヤニヤしている。
「対価はなんですか?一応怪我とか治しましたけど」
こういうのはギブアンドテイクだ。
「わかっている。今のは助けてくれたお礼としての物だ。これからが重要な情報…」
お礼の物ってことはこの重火器はくれるらしい。
ありがたく貰っておこう。
「変なこと要求しないでくださいよー」
「私だって常識くらいある」
影としての常識が世間一般とずれてないことを祈ろう。
「耳を貸せ」
警戒は怠らないまま、耳を傾けた。
シャドウが言う。
なるほど。
魔王はそういう作戦に出たわけか。
「と、こんな感じだ。さっさとこの土地から逃げた方がいいが、噂によるとそうもいかないようだな。魔法使いに聞くところによると土と木の縁は一年間切ることができないから、樹木を他の国に移動させるにしても一年間土から切り離してその時を待たないといけないとか。だから、ウィル・ザートソンはこの国から出ずに浮遊している。本当か?」
「本当です。魔法使いはわかっているなぁ、一般人の方々、ってか王様が送りつけてくる兵士は煽っていると勝手に怒ってますけど」
「無知は罪だな」
否定はしない。
「それで、何を御望みで?」
「しばらくは匿って欲しい。戦力が欲しいのなら手伝うが、頃合いを見て出ていくつもりだ。だから、その間の宿をお願いしたい」
「まぁ、そのくらいなら。何も盗らないなら良いですよ」
「はっ、まぁ武器を盗んできたから仕方ないか。いいよ、盗難防止の魔法でも掛けると良い」
大人しく両手を差し出す。
「では失礼して」
人差し指で手の甲を軽く叩くと肉球と時計のマークが浮かび上がって魔法が定着した。
条件指定したから変なことしない限りは無害だし、この森を降りた時点で無効になる。
安心安全。
「はい、できました」
シャドウが手をさする。
痛みはないはずだけど。
物は試しと、ベッドに置いてある銃に触れようとした瞬間、手がすり抜けて何も掴むことができなかった。
「盗む意思を見せた時点で発動するのか。便利な魔法だな」
「重宝してますよ」
今より小さいときのわたあめと大福が食べ物盗難の常習犯だったからね。
ネコババ禁止魔法。
ささやかだけど効果は抜群だ。
「では、ゆっくりしていてください」
武器を全て影収納するとシャドウの部屋を後にした。
さーて、研究研究っとー。
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