第72話 解体します
「シャドウが逃げただと!!??しかも武器庫まで破壊されたというのか!!」
ガシャンと王様が投げたグラスが影の人の額に当たって中身をぶちまけた。髪からワインが滴り落ちる。だけど、顔を上げることは出来ない。
これは間違いなく影の失態で起こったことなのだ。
影はシャドウの事を軽視していた。
さんざん痛め付けて、もう抵抗する気力すらないと思い込んでしまっていたのだ。
その油断から来たのが、この結末だ。
「こやつらを即刻死刑に──」
『なに、また新しく作れば良いんですよ』
コツンと靴音をたてて一人の少年が現れた。
「デモナス…」
『もちろん、素材と金は必要ですけどね』
ひょいと手すりに座り、影達を見下ろす。
『ねぇ、人間の王様。あいつら要らないのならオレに頂戴よ』
デモナスに指されて影達の肩が跳ねる。
「構わん。持っていけ。素材も金もだ。それで忌々しいウィル・ザートソンを始末できるのならいくらでもやってやる」
『やった!』
「ただし、忘れるなよ。貴様らとの同盟はウィル・ザートソンを討伐完了までだ」
『そっくりそのままお返しします。それでは!』
パチンとデモナスが指を鳴らすと、影達は恐怖の表情に反してすくっと立ち上がり、デモナスの示す方向へと歩いていった。
デモナスが消える。
それを確認して、王はデモナスの消えた箇所を睨み付けながら言った。
「…ふん。悪魔め」
ガチャガチャと銃を弄くってみる。
精霊達は基本的に鉄がそんなに好きではないのだが、僕の作った人工精霊達はそんなことはない。
ゆえに、
『ウィル様そこってどうなってるんすか?』
『大層な形状しているのに中身スカスカなんですね』
『ネジ落ちましたよ』
戦闘要因の男組に囲まれている。
『へぇー、こうなっているんですねー』
今回はメナードも参加。
僕以外直せる自信がないから手を出さないみたいだけど、視線が気になる。
なので。
「ロック君。このノートにイラスト付きで詳しくメモしておいて」
「ヒウロ。弾薬種類ごとに並べておいて」
「グロウ。解体のしかた覚えて」
と、各自仕事を与えた。
『ウィル様、私は?』
「メナードはわたあめたちが来ないように見張り」
『かしこまりました』
面白そうなものなら何でもオモチャにちゃうからね。
用心用心。
こうしてむさ苦しい男のみの空間で無心に銃を解析していき、ようやく全ての銃の構造の把握し終えたのだった。
『これ、次攻撃されたら届きますね。どうしますか?』
「そうだねぇ」
銃でこれだから、大砲もきっと飛距離も威力も増していることだろう。
「ほんとはやりたくないんだけど。僕の渡した
『了解です!』
「グロウもね」
『はいはい。了解ですよーっと』
もともとグリフィンは気性が荒いからね。
でもそこは我慢してもらわないと。
それをヒウロが鼻で笑ってる。
君もだよ?
その翌日。
案の定攻撃された。
大砲の弾は着弾し、煙をあげて消えた。
もちろんこちら側のダメージはゼロだけど、なんだかなぁ。
『高度あげようか?』
アヴァロンからの提案に頷く。
「そうだね。三人が戻ってきたらそうしようか」
地上付近でロック、グロウ、ヒウロの三人が軍隊に向かって攻撃していた。
どうみてもあれ、対悪魔用の部隊だよね。
千里眼でコザ平野を見てみると、兵士はいるけど休戦状態になっていた。
シャドウの言う通り、僕が倒されるまでは休戦同盟を結んだってのは本当だったのか。
まったく大迷惑だよ。
地上で爆発が起きてる。
試しにビーズで魔力経路を繋ぎ変える魔法具を作って、それで銃を殴ってみてって指示したんだけど。良い感じに誤作動が起きて自爆してる。
ただ、死人も出てるみたいだから、そこは改良しないとね。
出来る限りの死人出したくないんだよ、僕。
そ知らぬ場所で死なれても別に関係ないんだけど、自分の手は汚したくないって感じ。
わがままだけど、もう命はお腹一杯だから要らないんだよね。
「おかえりー」
ただいま戻りましたと三人がそれぞれ報告してくれた。
幸いにも怪我はない。
「先にお風呂にはいっておいで。そのあと報告会をしよう」
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