第66話 雨降って地が固まる

あれ?おかしいですね。

なんでこんなに胸がムカムカするのでしょう?

なんでですかね??

アヴァロンちゃんとか平気なんですけど、ウィンディーネさんとかがお師匠と一緒にいるとモヤります。

胸焼けでしょうか?


と、朝食後に食べたシナモンケーキを思い出すマリちゃんの端でウィルがルアーシャに抱きつかれて硬直していた。










「…首絞まってる」


見事にけいどうみゃくキまってますヒメサマ…。


『あれ?』


慌ててルアーシャが離れる。

血が脳にいく。助かった。


『私に会っても気絶しないのね?』


可愛らしく首を傾けるルアーシャ。

言われてみれば。


「ほんとですね」


なんででしょう?形が人に近いからでしょうか?


ふーん、とつまらなさそうにするルアーシャがちらりと何故かマリちゃんを見た。


『嫉妬しなくても大丈夫よ!私とウィルは幼馴染みみたいなもんだから』

「しっ…、嫉妬なんかしてません!」


顔を真っ赤にしてマリちゃんが反論した。

まさかこの世に姫様に反論する人間が生まれようとは。


「それに!幼馴染みなのは私もです!」

『ほーう?じゃあ幼馴染みのライバルなのね』

「ですね!!」


バチバチと二人の間に火花が散る。

なに?幼馴染みライバルって。


「とにかくケーキを用意したので、行きましょう」

『そうね!楽しみ』









ルアーシャの前に置かれた超巨大ケーキ。

だって煌竜様フォルムから人型フォルムになると思ってなかったから。


『うーん!美味しい!』


というのは杞憂でした。

ぺろりですか。流石ですね。


「ルアーシャさんなかなかイケる口ですねぇ」

『あなたの作ったこのチェリーパイもなかなか美味しかったですよ』

『「 ふふふふふふふふ 」』


そして何故か二人はバチバチしながら仲良くなってた。

意味がわからないけど、仲がいいなら良かった良かった。



「えええ!崖の下に落ちて三日も動けなくなっていたんですか!?」

『そーなの。もー、お腹もすいたし、痛いし寒いし、ああこんなところで石になってしまう(※竜の死は石になる)んだと悲しんでいたところに、ウィルが現れたの!信じられる?まだ小さな子が大きな私を気遣って手当てをしてくれたのよ!』

「キャーッ!そんなの知らなかった!!なんで兄さん教えてくれなかったのかしら!」

『それで、パンをハニーミルクでふやかして、優しく食べさせてくれたの!でも他の人間に見付かるといけないからって、迎えがくるまで匿ってくれたの!』


いつの間にか、二人はバチバチが消え、すっかりお友達になっていた。


『クーにもお手伝いできたら良かったのに』

『私もろくに手伝えなかったしー』

『何いってるの?雨風を防いでくれたじゃない、今でも感謝しているんだから』


それを静かに見守っている。


人型になってくれたお陰で僕が正気を保てているのは良いんだけど、女子会になっててちょっと寂しい。仲間に入りたい。でもガールズトーク始まっちゃっているし。

あ、大福やわたあめ、アヴァロンまで…。


『あの、私も行ってきてもよろしいでしょうか?』

「いってらっしゃい」


そしてメナードが追加。


羨ましい。

奥歯ギリイ。


『ウィル様よ、こっちで一緒にボーイズトークしましょう』

「ありがとう…」


グロウの優しさにホロリ。


そんなわけで、ガールズ達を気にしつつボーイズトークに花を咲かせていると、視線が。

振り替えると姫様とマリちゃん。


『きいたわ!ウィル!困っているみたいね!』


突然ボーイズエリアに飛び込んできた姫様。

人型であってもお転婆なのですね。


お陰でそこに置かれたクッキーが全て宙に舞いました。


全部落ちる前に回収しましたけど。


『私の一部を貴方にあげてもいいわよ』

「???」


つまりどう言うこと?


チッチッチッと人たち指を揺らす姫様とマリちゃん。


「ふふふふふふふふ」

「どうしたのマリちゃん怖いよ」


ずずいと僕の前にやって来て、マリちゃんお手製のビーズ作品を取り出した。

まさか…!!


「お師匠が作品創作に苦戦しているの知っているのです!さあ!一緒に完成させましょう!!」


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