第63話 素材不足

街から戻ると、ユーハから手紙が来ていた。

最近変装術を会得したらしく、国内彷徨きながら情報屋みたいなことしてるらしい。

報酬にお前の作る薬寄越せと言われた。

そんなことしなくても言えばあげるのに。


『お仲間いませんでしたっけ?』


と、メナード。


「スブドイ?さんとは別行動らしい。あっちはあっちで温泉巡りだって。いいなー」


実に楽しそうだ。

そういう対岸の火事見て笑う姿勢は嫌いじゃない。


「ゴタゴタ終わったらみんなで行くのも良いよね」


全員人間に化けてワイワイと。面白そう。


「ぶはぁー!疲れましたぁー!」

『ただいまぁー!!』

『ふぇー……』


門を潜って時間差で帰ってきたマリちゃんとクーとリンリン。

手には大荷物。何かと思えば服だった。

あと箱。じゃらじゃらと音がしている。


最近つるんでいるこの三人。

見た目が同じ年齢のように見えるので(実際は違う)気が合うらしい。


しかもルーン魔術同好会なるものを結成し、今じゃマリちゃんは僕以上のルーンを使いこなしている。


「なに買ってきたの?」

「あ!お師匠見てください!この前遠目してたときに見付けた服なんです!完全一緒って訳じゃないんですけど、少し手を加えたら王都で流行っている服とデザインが同じになるんです!」

「ほほーう」


最近ボーっと熱心に遠くを見詰めているから、きっと遠目を使っているんだろう事は予想していたけど、王都を見ていたのか。


「それは?」


さっきからチラチラと見える謎の箱。

化粧品入れ??


『これはビーズです!!宝石では無いのですが、色をつけた木のわっかや丸のものを糸で繋げてネックレスにするのです!!』


リンリンが珍しく敬語を使っている。

相当テンションが高いな、それほどまでに嬉しいのね。


『服にもつけられるし、その…』


もじもじと恥ずかしそうにするクー。


『偽物だけど…、ティアラが被れる…』


キャッキャッと周りで二人も楽しそうに跳ねている。

ティアラか、女の子好きだもんねそういうの。


見せてもらうと、なかなかのものだった。


「…………」


良いアイデア浮かんだ。


「僕にもこれ少しくれるかな?」


三人はビックリしてこちらを見る。


「え、お師匠もティアラ好きなんですか?」

「ティアラっていうか、ブレスレットとかは好きだね。もしかしたらこれで凄い良いものが作れると思うんだ。上手く行くかはわからないけど、実験だね」

『坊っちゃんの良いアイデアって言葉…、こわい』


クーが冷たい目を寄越してきた。

大失敗は小さいときたけじゃんよぉー。


「はいどうぞ」

「ありがとう」


マリちゃんからビーズを受け取った。

大切に使います。


ビーズの鑑定をすると、思った通りだった。

色んな種類の木材の破片。

しかも中には杖を削った時に出る欠片を加工した物も多い。


「ヒノキ、イチイ、ブナ。おお、珍しい。サクラがある」


木にはそれぞれ独特の性格と魔力特性がある。

それを踏まえて魔法使い達は杖を作るのだが、このビーズを使って魔法具が作れると思った。


世界には似たようなものはたくさんある。

といっても魔法具として使うのはまれだけど、魔除け位ならたくさん。

一種類の木を削り出して作る物は、意思が宿り、大切に使ってやれば同調した精霊が宿る。

つまり、九十九神に昇華するのだ。


これから作るのはそこまではいかないけど、せめてマリちゃん達の魔法の補佐をしてくれる、かつお洒落な装飾品にしようと思ってる。


んだけど…。


「………センスが壊滅的」


かっこかわいく作ろうとしたんだけど、ワケわかんなくなる。

駄目だ。

僕はあきらめて普通の作ろう。








そうしてビーズの魔力があるものから相性を考えつつ作ってみたのがこちらになります。



「……うん」



可もなく不可もなくって、感じ。


思ってたんと違う。

もっと、こう、追い風みたいな付属をつける感じにしたかったんだけど、わずかにテンションが上がるってくらいにしかならなかった。


何がいけないんだろう。


魔力は問題ない。

相性もオーケー。


杖を作る訳じゃないけど、不足している物はそんなにないはずたけど。


一旦休憩しながら考えてみた。


複数使ったから上手くいかなかったのか?

考えてみたら、杖には必ず軸となる性質のリーダーみたいなものがある。

それがこのブレスレットにはない。なんとなくそれが原因な気がする。


「リーダー核になり得る素材か…」


頭をフル回転させたけど思い付かなかった。


仕方ない。

一旦保留にするしかないかな。

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