第62話 嵐の前の静けさ

3日過ぎたが、大分馴染んだらしい。


『アヴァロンおはよう』

『今日も浮いてるねー』

『あれ?三人とも同じサンダル?可愛い…』


大福、わたあめ、アヴァロンの三人は昔からの友達どころか、生まれた時にはとなりに居た姉妹。むしろ三つ子。


『あ!おか、じゃなかった!ウィルおはよーう!!』

『ほんとだ!ウィルおはよう!』

『よーう!!』


良かった良かった。

呼び名が“おかーさん”から“ウィル”になった。

慕われてると分かるから嫌って訳じゃないけど、なんだがむず痒いし性別??ってなるからこれで安心。


「今日は何して遊んでいるんだい?」


三人して地面に絵を描いてる。


………なんだこれ?丸い…、アザラシ??


『今ねぇ、みんなが出来ること教えあってるの!』


アヴァロンと遊びはじめてから言語能力が上達した大福が言う。

やっぱり遊ぶ相手によって急成長するなぁ。


『これが、わたあめね』


木の枝で丸いアザラシを示す。

あ、このアザラシはわたあめだったの。

その頭の突起は耳か。


『わたあめのヨダレは痺れ薬ぃー。血は眠くなる薬ー。パクンと食べて、動けなくして、叩いて潰すの』


可愛く言っているが、潰される寸前だったラビリンガスを思い出す。

ちなみに僕は戦い方を教えてない。

犯人はグロウとヒウロだ。


『大福は空を飛ぶ。グロウやヒューロほど早くないけど、裏道とか素早い。あと、あれできる、アクロバティック格闘』


なんだそれ。そんなの教えた記憶ないぞ。


『姿変えながら喉元に噛みつくぞ。がおー!』


可愛い。

両手をあげてライオンの真似をしている。


『アヴァロンはね、物凄く大きい風とお友達。体で潰したり出来るけど、それしたらみんな困るから、風に頼んで竜巻作って貰うの』


逆三角形を手で作って、落とす動作。

どかーんの効果音にて、砂で作った山がチョップで破壊された。


子供は無邪気だが、残酷である。


そうか、アヴァロンさんは鳥と言うよりも竜の一種と考えた方が良さそう。煌竜さまは空一杯に光る玉を作り出して落下させるという恐ろしい攻撃をなさるけど、とっても綺麗なんだよね。

まるで夜空が落ちてくるような錯覚に囚われる。


まぁ、超絶痛いけどね。



『ウィルはどこ行くの?』

『どっか行く途中だった?』


そういえばと大福とわたあめが話を切り替えた。


「これから壁に行くんだよ。なんでも、偵察がウロウロしているんだって」


へー、と言う二人に対し、アヴァロンが『!』と顔を上げて僕を見た。


『あの黒いの食べて良い!?』

「ダメです。お腹壊します」

『ぶー』


吸血鬼の手下だろう。


下手に体内に取り入れない方がいい。


「魔王さんが僕の事そろそろ攻撃して来るかもしれないから、偵察だね」


迷路を抜けて、なにかやっている所までは視えた。

そっから先は視え無くなったけど、明らかに何か仕掛けてくる気だ。


『私たちも行こう!』

『捕まえられるなら捕まえたい!』

『手伝う?』

「止めなさい」


めんどくさいことになるから。


言うことを聞いて、ふざけないことを約束してから三人と壁に向かった。










グロウとヒウロとロックが揃ってる。

最近暇だったから久しぶりに並んでいるの見た。


「どんな感じ?」


ロックに聞く。


『グリーンドラゴン一体と、あとはカラスと蝙蝠です。三つ目なんで、魔物ですね。あれ』

「ふーん。ほんとだ」


バタバタと森の周りを飛び回っている。

もっともアヴァロンと僕の結界で中に入らないようだけど。


カラスが僕を見付けて口を開いた。



『ガアーーーッ!!ウィル・ザートソン、発見セリ!!!!発見セリ!!!!』

『発見セリ!!!!発見セリ!!!!』


カラスが大合唱。


グワグワと音波が響いて、何かをしようとした。

ああ、これはいけない。


手を振った。


途端、カラスが形をなくして黒い羽の固まりになって霧散した。


「…僕の真似しようたって、完成まで待ってあげるわけないじゃん」


次元の穴に落とそうとした。


バカだね。

そっち方面なら、僕は魔王の力を凌ぐほどの実力者なんだよ。


グリーンドラゴンを見詰め、干渉する。


「魔王に言っておいて、そんなことしなくても受けてたつよって」


次は上手くやってみせる。


グリーンドラゴンは一声鳴くと、去っていった。



さて、そろそろまた忙しくなりそうだ。

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