第61話 家族が増えました

ウィル様が見知らぬ精霊の女児を連れて戻ってこられました。

青い羽を持つ、白髪の子供。

見た限りだと大福よりも小さい。


『どちら様です?』


創ったわけでは無さそうですが。

同じであるならばウィル様が教えてくださる筈ですから。


「まさかっ、隠し子…!?」


マリさんが混乱のあまり妄言を吐き出されました。

一体誰のだというのでしょう?ウィンデーネだとしても羽があるのはおかしいです。


ウィル様はポリポリと頭を掻くと、にへ、と笑います。


「この子ね、アヴァロンらしい」


集まっていたみんなが一斉にどよめきたちました。

だって信じられません。現に森は未だに空を飛んでおりますし、アヴァロン自体もそこにおります。

半透明の鳥は優雅に風に乗り、この森を守っているのですから。


それよりも気になるのはその気配です。

集中しなければ分からないほど薄いですが、何故魔王の気配がするのです?


………………。

……………………え??まさか??


危うく思考がマリさんと同じになりそうになった所で、ウィル様が説明をしてくださいました。

どうやら魔王の毒が黄金のリンゴの木に吸収されて、この子が生まれたらしいです。


それにしてもですよ?


だとしても何故リンゴの木と毒が混ざって誕生なのですか??


『おかーさん、アヴァロンが説明する』

「その呼び方は止めなさい。どうぞ」


おかーさんという単語で一斉に使い魔達が明後日の方向へ視線を逸らしました。

皆さん身に覚えがあるみたいですね。

仕方ありません。ウィル様は同じようなものですから。


「お、おかーさん???」


いけません。

マリさんが更に混乱されてます。

あれ?お師匠が産んだってこと??でも男じゃ??

とあらぬ方向へ暴走し掛けております。後で説明をしておかないと変な誤解をされてしまっては大変ですからね。


『よいしょ』


ウィル様が手を離すと、羽ばたいてもいないのに浮かびました。

背中の羽は飾りなのでしょうか。


『アヴァロンね、みんなと遊びたくて、体の一部を千切ったの。でね、リンゴの木にお願いしたら手伝ってくれたの。ドク?も体を作りたかったみたいだから協力してくれた!』

「ということです。遊びたかったみたい」


なるほど。


「いわゆるライムの分身体の上位版ですか」


スライムのライムは、仕事が多くなると分身して仕事をこなす。

改めてアヴァロン本体を見れば、スライムに近しいようにも見える。基本体が自然寄りだとできるのかもしれませんね。


「ということで、大福、わたあめ。色々教えてやってね。妹みたいなもんだし」

『いもうと!』

『わたしたちの、いもうと!』


ずっと人型グループ内で末っ子だったからか、嬉しそうですね。

よろしくと、ずっと浮かんだままのアヴァロンの手をとって、早速駆け出していきました。


「おかーさん、お師匠がおかーさん」


忘れてました。

早くマリさんの混乱を解かなければ。















アヴァロンの服を作った。

生まれたときに来ていた白いワンピースも可愛かったけど、やっぱりもうちょっと可愛く着飾ってもいいと思う。


「こんなもんか」


本体のフォルムも配慮し、色合いを明るめに。

容姿が、毒のせいか分かんないけど、顔がどことなく魔王に似ているから黒と赤は避ける。

余計な誤解を生まないようにするためだ。


アヴァロンは不思議なことに、地面に降りることができない。


足が地面に着けることができない。


人に下ろしてもらう事は可能だけど、押さえてもらわないと勝手に浮かんじゃう感じ。

靴はいらない?と訊ねたら、二人とお揃いのが良いと言われて作った。


「にしても、まさかな活用方法だったなぁー。まさか分身体の肉付けを手伝うなんて」


無事だった方の毒瓶を眺める。


アヴァロンだから平気だったかもだけど、意外な使い道が発見できた。


かといって次も上手くいくとは思えないけど。

本気で吃驚したし。


瓶をしっかりし舞い込む。今度は袖が裂けても落ちないように更に服を頑丈に、魔法陣も改良した。

服を手に、森で遊んでいるだろう三人の元へと向かった。

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