第32話 特に何も変わらない日々である

今日は午前中早々に魔王が来て、壁の外でお茶会をしたあとにお土産持たせて帰した後、マリに魔法を教えたり、薬を作って過ごしたりと平和に過ごしている。


「うーん」


そんな平和な森の中、僕は机の上に広げた紙に設計図を書いていた。


何の設計図か?

さくっと簡単、変身魔法の道具の設計図だ。

実は僕あんまり人を変身させることしたことないんだよね。だからはずかしながらも、こういう用途のための魔法があまりない。


一回やっちゃえば次からはサクサクと時間短縮をできはするけれど、万が一僕がいないときに必要になってしまうととても困る。


クーちゃんに教えても良いんだけどね、筋がいいし。


ただ、変身魔法にハマっちゃうと、元の姿を忘れてしまって存在が崩壊するっている事故もあったから、少し躊躇しちゃう。

人間の記憶なんてバグの塊みたいなものだし。


「こんなもんかな。どう?メナード」

『良いと思われます』

「あとはどんな形にしようかなって」


地面に設置してもいいし、門にしてもいい。

あ!姿見にしたら、自分がどんな風に変身できているか確認できるからそっちがいいかも!


「決めた。鏡にする」

『相変わらず早い決断で』

「時間もないしね」


そっから改良もできるんだし、初めはシンプルなものの方がいい。


硝子を作り出し、表面に銀をメッキする。さらにそこに黒いエナメルを付けて硝子を挟み込む。そのあと上から魔法陣を重ね掛けて木の枠に嵌め込んで…。


『簡単に選択できるようにボタンかつまみを付けられては?』

「なるほど採用」


メナードの提案に従い左右にボタンをいくつか。

登録はどうしようか。いっそタッチパネルみたいにした方が楽しそうだな。


追加で魔法を付属。


関係ない人を巻き添えにしないために指定の魔法もちゃんと付けてと。


「どう?これ」

『流石でございます』


見た目はただの鏡だけど、ボタンを押せば近くにいるモノを指定し、変身させる。

とりあえず実験でワーウルフ化してみた。


モフモフの耳にふくよかな尻尾。うーん。癒し。


『あ!ウィルいっしょ!』

『いっしょー!!』


獣型の二人がやって来て体当たりしてきて、わたあめの体におもいっきり弾き飛ばされた。

相変わらず弾力が水風船。


『ウィル様ー!!!』

『あ!』

『ごめんウィル!!』


地面に転がりつつも無事ですと合図を出す。

これ、マリちゃんにはやらないように言わないとね。

普通に怪我する。


「お師匠さ……あれ?」


マリちゃんが来た。


「あれれ?声が聞こえた気がしたけど…」


この姿の僕に気が付いていないようだ。


「マリちゃん僕、僕」

「えええ!!なんでそんなチャーミングになっているんですか!?可愛い!!狐ですか!?」

「キツネ、ではないけど」


ふっくら尻尾のせいか。

てか、マリちゃんめっちゃ耳触るね。凄い首もとゾワゾワするからやめて。

変身解除すると露骨に残念そうな顔。

ごめんね。


「ちょうどよかった。ちょっとこれ使ってみて」

「なんですか?」


マリちゃんを鏡の前に立たせる。


「ボタンを押してみて」

「これですか?えい」

「躊躇なくいくね」


ポチっと押せば姿が変わる。

あ、男女別にするの忘れてた。


シュンと姿が変わり、マリちゃんはマリ“君”に変身。

色彩が似ているせいで男バージョンのマリちゃんに。

これはこれで使えるかも。街にいても違和感ない男の子じゃない?


使おう。


「これいいですね!へー、こんな感じになってんだー、へー」


ペタペタと体を探り、ふと、動きが止まる。

どうしたの?


「……昔の兄さんに似ている…?」

「ほんとだ」


言われてみればそうだ。これ小さいときのマジリックだ。

あれ?なんで僕これ登録したんだろう?


「あ」


思い出した。

これ使ってマジリックごっこして大変なことになった奴だ。

黙っとこ。


「ふーん、へー、このボタンはこれか。ふぇえー、おっぱいおっきい」


次々に姿を変えていくマリちゃん。楽しそう。


『性能は良さそうですね』

「ね。マリちゃん。それ使ってから街に遊びにいって良いからね」

「ほんとうですか!?嬉しいです!!」


おっきいおっぱいポヨポヨしながらこっちを見るマリちゃん。

女の子でも巨乳が好きなのか。


「でも出掛けるときは僕に報告忘れないでね」

「はーい!」


そうして遊んでいると、私も私もと使い魔達が集まってきて、みんなで変身後ファッションショーをして遊び、見事メナードが優勝した。

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