第31話 別荘へ引っ越し完了しました
「マリちゃん。ちょっと付き合って」
「ふぇ?」
メナードに庭の薬草の勉強をしているマリちゃんを借りた。
「ウィ…じゃなかったお師匠さんどうしたんですか?」
「これから新しい拠点を築くために、君に彼女役をしてもらおうと思って」
「かかかかか彼女っ!?」
テンパるマリちゃんに通過許可書を手渡す。
そこには少女の顔の許可書。
実はこれも万が一用に作ってた性別を変えたやつ。他にも種族を変えたりとかいくつかある。その中のひとつにマリちゃんが化けて手伝って貰う。
「服はこれ」
「凄い可愛い…。誰のですか?」
「メナードの」
「え!」
マリちゃんが驚き思わずメナードを見ると、メナードはニコリと微笑み返した。
嘘ではない。本当にメナードの私物である。
早速着て貰うとぴったり。
昨日メナードに寸法を直してもらったのだ。
「じゃあ目をつぶって」
「はい…」
素直に目を瞑るマリちゃんの顔辺り、触れるギリギリの所を魔力を集めて撫でるとみるみるうちに写真の通りの顔になった。
といってもあの許可書作ったのはちょっと前だからもう少し大人っぽくした。
髪も長く、緩くウェーブ。
体つきも少し変えて、と。
「なんだか暖かいです」
「でしょ?あともう少しだからね」
最後に色彩を調整して出来上がり。
「目を開けていいよ」
「わあ!これ私ですか!?」
目の前の姿見を見てびっくりしている。
本当に自分なのか信じられないと色んな動きをしている。
「この魔法覚えたいです」
「いずれね。まだ難しいから。はい、じゃあこれとこれ持って、設定は冒険者から街に住み着くって感じなんだけど、僕が大体の手続きするから後ろでニコニコしながら街を見てるといいよ」
「わかりました」
その後、馬車と馬を簡単に作り上げ、街の近くにテレポート。
そして自然な感じで門へと行き、色々説明。
マリちゃんが演技派なのは吃驚した。
役所にいって正式に住民登録を済ませると、おばあちゃんの家に家財を運び込んだ。
ノジコさんはおばあちゃんから僕の事を聞いたのか、色々気を使ってくれた。
そんな感じで順調に終わり、扉に繋げた道を使って森へと帰還。
「ありがとうね、マリちゃん。助かった」
「いいえ!貴重な体験でした!良いですねこの魔法、追っ手を気にせず街を歩ける…」
相当楽しかったみたい。
これは通過するだけで変身できる魔法の開発をしないといけないかな。
さて、それではマリちゃんを鍛え上げますかな。
壁も結界もあるけど、僕以外に魔法が使える人間が増えるのはとても良いことだし、いずれ独立するわけだからね。
「じゃあ、これから魔法のお勉強をしよう。その前にどのくらいまで知ってるかテストしてもいいかな?」
「それで、一気に力を集中させて下に向ける」
「こうですか?」
「そうそう、いい感じ」
目の前に魔法で造り上げた小さな雲から雨が降ってる。
僕のは本物の積乱雲をミニチュア化みたいにしたやつ。威力は申し分なし。
隣の黒い綿雲はマリちゃんの。シトシトと量は少ないけど雨っぽくできてる。
「凄い、難しいですね…っ」
まだ適切な魔力の量が把握できてないマリちゃんが疲れている。
「慣れかな。でもできるようになったら色々便利だよ、これ」
魔法陣描くよりも簡単。
「普通、水を出すっていったらアクア・マギアとかじゃないですか?」
魔法陣から飛び出す消防車の放水のごとき水。
「まぁ、あれも良いんだけどね。マギア系列だと魔法のスムーズな移行ができないんだ」
「スムーズな移行、ですか?」
よくわからないと言った顔のマリちゃん。
これは見せた方が良いな。
「例えば、こう。雨から雷」
僕のミニ積乱雲が雨を降らせる主体の雲から分離し、ピカピカ光ると放電を開始。
「強風」
雨が止み、雲の外側と内側で風の流れが変わって扇風機のような風が吹く。
「向きを変えて竜巻」
斜めに流れを変えていくと雲が渦巻き、つむじ風。
「規模を変えて台風」
風主体から雲の比重を変え、風の広さを変えていくと大嵐。つまり台風に。
「そして結合を緩めてやれば霧」
積乱雲がボヤけて霧になる。
そして風を使って晴れ。
「って感じ。素材を追加すれば雪やアラレもできるね」
マリちゃんが目を丸くさせて「わぁぁ…」と感嘆の声を上げていた。
「今のをマギア系列の魔法だと凄い魔力を消費しないといけないけど、積乱雲をひとつ作っちゃえば、方向や規模を変えるだけでこんなにできる。何か質問とかある?」
「兄さんが言っていたお師匠さんが攻撃の速度が化け物っていってた訳がわかりました」
「マジリックそんなこと言ってたの」
なんという誉め言葉。
光栄だなぁ。
「それにしても凄いですね、私、雲の事舐めてました!やる気が沸いてきてます!」
「本当かい?じゃあ、今度はさっきの雨を降らした状態で森を散歩しようか、ゴールは森の泉まで」
「わかりました!」
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