第19話 “ラビ”リンガス

二人のおつかい騒動から3日。


飛んでる最中ポケットから風で吹き飛ばされたメモをキャッチして秘密裏に届けたり、メナードの書き忘れを付け加えたりと忙しかったけど、なんとかおつかい任務を達成できたようで機嫌が良い。


全く、グロウが余計なこと言うからいけない。


「まぁ、でも」


二人が他の小精霊も交えてお店やさんごっこしているのを見る。


「知識が広がるのは良いことだしね」


何かあったのか知らないけど、人間の文字の勉強をきちんとするようになった。良いことだ。


『ウィル・ザートソン!!!!!』


結界に何かが接触した。

というか、なんか聞き覚えのある声が聞こえた気がしたけど。


「んー?」


空を見上げる。

特になにもない。気のせいだったかな?









お昼頃。

ヒウロがやって来た。


『主、結界の外でウサギの獣人みたいなのが伸びているんですけど』

「みたいなのって、なに?」


獣人じゃないの?

もどきなの?


『ウサギの獣人なのにコウモリの羽があります』


頭のなかについ最近“お仕置き”で魔力を弄って送り返した悪魔を思い出した。


「自力で解けなかったのか」


一応頑張れば解けるようにしていたはずだけど。

うーん、まだ難しかったかな。知恵の輪みたいにしたのがいけなかったか。


「連れてきて、僕が対処して送り返すから」

『わかりました』



きゅー、と結界に仕掛けていた罠に嵌まって目を回しているラビリンガスをヒウロが俵担ぎして持ってきた。

いや、運び方…。一応女の子だよ?


椅子に座らせて、手に魔力を乗っけて強制覚醒。

ぱーんっ!!


「おはようございます!!」

『はっ!!』


めっちゃキョロキョロしてる。

そして僕を見るなり襲い掛かってきた。


『きっさまぁああああ!!!!』


前回魅了が効かなかったから剣を持ってきたのか。

関心関心。


「ああ、メナード大丈夫。今日はちゃんと魔法使ってるから」


ハンマーで殴ろうとしているメナードを制しつつ、頑張って攻撃しているラビリンガスを眺める。

ガンガンガンガンと結界に剣がぶつかっている。

太刀筋は良いんだけど、全体に力が入って安定感が無いな。

でも伸び代はありそう。

そんな余裕な僕を見て更にラビリンガスはヒートアップ。

おやおや、魔力まで纏って。

うーん、おしい。あともうちょっとだな。




数分後。




ラビリンガスは息切れを起こし、バテて動けなくなっていた。


「気がすみました?」

『………っ』

「なんなら僕が貴女の剣の評価と改善点等をまとめた資料を作成しま──」

『断る!!!』

「そうですか」


三ページくらいに纏められるのに。


「それで、今日はなんのご用で?」


遊びに来た訳じゃないんでしょ?


すると、とたんにモジモジし始めた。

え、なになに?


『…………を解除しろ…』

「え?なんですか?」

『この変な!魔法を!解除しろ!!』


両ウサミミ掴んで叫ぶラビリンガス。

えー、せっかく可愛いのに。


「なんで?前よりもやり易くなかった?」


色々ついでに付属効果つけてあげたのに。


『つ、使いやすくはあった!!効率も確かに上がったがっっ!!……………………仲間にばかにされるんだよ…』

「あー…、なるほど」


わりとサキュバス含め淫魔達の性格悪いからねぇ。

虐められているのか。


『あと、これだと男しか襲えない!!インキュバスになれない!!!』

『必要?』

「必要だから困ってんだよぉ!!!(怒)」


と、剣を投げてきた。

カンッ!と結界で弾かれたけど。


そうなのか、必要なのか。

このウサミミ魔法は女性専用だったからな。


ていうか。


「魔王さんに解いてもらえば良いじゃん」

『おまえ…』


無言で地獄に落ちろサイン。


「もしかして無理だったとか?」

『……………』


図星か。


しかたないなぁ、もう。


「手をだして」

『次変なことしたらガチで●●こ捻り千切る』

「怖いこと言わないの。ほら」


手を出すラビリンガス。

その手をとって、ちょちょいともう片方の指で手首に印を書くと、小さいウサギの痣が浮かび上がる。


「はいどうぞ」


ラビリンガスが恐る恐る頭をさわると、硬い角に触れるなり号泣した。

そんなに嫌だったのか。ごめんね。


「この痣触ればまたウサミミになったり戻ったりできるから」

『余計なことしやがって』

「捻り千切る?」

『…………多目に見てやる』


まさかのお許し。

やったね。


『じゃあな』


そして帰り支度を始めた。


「もう帰るの?」

『敵に向かってその言葉はおかしくない?』

「あ、そっか」


そうだそうだ。


『ほんと調子狂うわ。礼なんか言わないし、次来たときはその首ぶっ飛ばしてやるからな』

「ハイハイ楽しみにしてますよ」


剣を拾い、ラビリンガスはコウモリの羽を使って帰っていった。


『打ち落とさなくていいので?』


メナードがそんなことを言う。


「いーよいーよ。さっきの魔法に発信機能仕込んでおいたし。これでなんか異常があれば分かるしね」


これで僕は余裕をもって行動できる。


「さーて、剣眺めてたら試合したくなってきちゃった。メナード相手して」

『かしこまりました』

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