第9話 使者リターンズ

道があった。

辛うじて通れる道があった。


「道があったァアアアア!!!!!」


ウォオオオオオオオオオ!!!!!


と、騎士を初め魔法使い達が雄叫びを上げた。

道を探し初めて4日。

みんなそれぞれの服装を整えるのを諦め、やや野性味の増した使者達が壁に沿ってようやく見つけた道へと向かって猛ダッシュ。


「…………道??」


その後ろを隠れつつも着いていくシャドウが首をかしげながらその道を見る。

どう見ても木の根だった。

道ではない。

しかし、あれを見つけるまで向こうに渡る手段が全くなかったので、テンションが上がるのも仕方がないと言えよう。


「はっはっはっはっ!!!脇が甘いわ大魔術師!!!ワシは諦めが悪いんじゃあー!!!!」

「ヒュー!ヒュー!流石はズブドイ騎士!!」

「私たちも粘りに粘りますわよ!!!」

「絶対にたどり着いて見せましょう!!」


みんな目が血走って怖い。


ハァーッハァーッと獣のように荒い息のまま、というか、息切れしたまま根っこに辿り着くと、打ち合わせを始めた。

あの根っこは上まで続いているわけではない。

壁まで伸び、そのまま壁の中へ続いている。しかし、騎士達が通れる隙間などない。


「いいか!!!壁まで辿り着いたらカズマが飛び上がり、壁にこの杭を打ち込んで待機!!!わしらはこのロープで杭のもとまで行き、そして今度はアマンナが飛び上がり同じようにして上がっていくんじゃあーー!!!!」

「おおおおおおおお!!!!」

「ファイトオオオオオオ!!!!」

「イッパーーーーツ!!!!」


夜なべして魔法と手作業で造り上げた杭と、足掛けが付いたロープを持って根っこへと雄叫びを上げながら突撃していく。

踏み込む度に根っこが弛むが、目的地が近く、更に疲労がピークに達していることもあり恐れることなく駆けていく。


「作戦開始ィィイ!!!!」


騎士の号令に合わせてみんな雄叫びを上げながら先ほど打合せした作戦を遂行していく。

見事な連係プレーだ。だが、なんだろう。

正直不気味すぎて一緒に行動したくない。

しかし、これも仕事だ。たえろ、私。













登れ!!登れ!!!登れ!!!!登れ!!!!!


ガシリと最後の取っ掛かりを握り、体を持ち上げる。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ、うう…」


視界が開ける。

霧がうっすらと晴れ、目的地である森が姿を表した。

なんて幻想的な姿だろうか?

そう思ったのも一瞬。瞬く間に凄まじい達成感が駆け登っていく。


急いで後ろに続いていた魔法使い達を引っ張り上げ、横に並ぶ。

辿り着いた…っ!!


思わずみんなで手を繋ぎ、上へと振り上げた。


「「「「 やったどおおおおおおおお!!!!! 」」」」


おー、おー、おー…。

と、四人の声が森中に木霊していった。















「ええ…」


グリフォンのグロウと、ヒポグリフのヒウロが拾いものをしてきた。

人間四人。

どうやら僕の造り上げた壁の上で騒いでいたのを発見し、こちらの姿を見てあわてふためいていたところを纏めて捕まえて連れてきたのだという。


『俺のが大物だ』

『何を言う。体重が重いだけだろうが。こっちなんかメスだぞ』

『性別は関係ないだろう』

「はいはいはい、喧嘩はしないの。もー、まじかぁー…」


呆れ通り越して感心する。

よくあの壁を登ってきたな。てか、堀はどうしたんだ?飛んできたの?

結界は、流石に人間はあの壁突破は無理だろうって対象外にしてたから抜けられたのか。いやー、もう、ほんと。なにこの執念。


改めて四人を見る。

ズタボロであった。

それがグロウとヒウロのせいなのか定かではないが、まさか戻ってくるなんて。


「はぁぁぁー……」


全力ため息。


『どうしますか?放り出しますか?』


と、メナード。


「とりあえずこのまま放り出して死なれても困るし…。もー、仕方ない。一泊だけさせて帰って貰う。メナード、ごめんだけどクー呼んで治療してやって」

『かしこまりました』


はぁー、もー、本当にどうしよう。

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