第28話 忘れられたメルーさん

 お店が終わった後メグちゃんに起こされた、何かしてた様な気がするんだけど、ほら夢って忘れるって言うじゃない?それそれー。


 ヤベー、寝ちゃった、千代さんに怒られる


 しょうがないだろ?話し相手が居ないのに話を永遠にしなきゃいけないんだ、寝るに決まってるぁ!返事しろー!虚しいんだよー!


 大体な、召喚失敗した西が責任取れやっ戦争したいだけで勇者召喚とかしてんじゃねーよ!喧嘩はなぁ己の拳ですんだよぅどっかの偉い人も言ってただろ、右フックされたら左でカウンターってなっ!


「きゅーちゃん?うにゃうにゃしてどうしたの?まだおねむ?」


 夢であれ




 仕事から閉店後のお店に帰ってきたおっさんの傍にメルーさんは居なかった、排除されたか南無ー。


「お疲れ様です、済みませんお疲れの所」


「いいさね、お互い様だろうに、で?王都で収穫はあったのかい?」


「あの…叔母さん、セリさん、王都にきゅーちゃんを連れて行ったのって何か理由があって連れて行ったの?」


 俺を抱っこしてるメグちゃんが不安顔。


「それを今からセリに説明して貰うんだよ、メグもちゃんと聞きな、その犬の事だからね?」


 ぐっ、メグちゃん不安なのはわかるけどちょと苦しいですぅ…


 メグちゃんの腕をペシペシ、ギブ


「っごめんねっ」わたわた、落ち着け。


「座りましょう、長くなりそうなので」


 三人でテーブルを囲って座る、腕は締まりそうだからメグちゃんのお膝に丸くなる。




 おっさんが王都の巫女の話から、俺を見て確認の為に連れていった事、俺が犬神だと言う事、勇者召喚が失敗したこと、順序だてて話す。


「ええっ!?い、犬神…様?きゅーちゃんが?えっ?神様なのっ?」


「正確には神の愛し子と言うらしいです」


「へぇただの犬にしか見えないけどねぇ髄分と大層な犬なんだねぇ」


 大層な欠陥犬ですよーケッ!


「で、勇者召喚のツケってのは解ったけど、西もロクでもない理由で大層な事したもんだね、魔族との戦争がしたいが為に呼ぼうとして失敗したなんて、そりゃお触れも出せないさね?国中の笑いもんだよ」


 俺は泣きたい。


「きゅーちゃん…神様の子なの?ほんとう?」


 残念ながらそうらしい、メグちゃん、俺の事腫れ物扱いしないでね?お願いぃ必殺うるうるお目目で見上げる、俺の想いよっ届けっ!


「かわいいなぁっーもうぅっ!」


 へへっやってやったぜ!


「メグ、あんたねぇ、事の重大さわかってんのかい?」


「え?」


「失礼ながら存在するだけでいいとはいえ、そんな存在がいざ他の国や金欲しさの輩がそれを知った時、やはり狙われると思っています」


 そうか?居るだけでそこまで価値はないと俺は思ってたがそうでもないのか?


「じゃあきゅーちゃんは神の愛し子という事を知られたら危険だと叔母さんもセリさんも思ってるんですね?」


「そうですね、用心に越したことはないと思っています」


 メグちゃんが小声でボソッとメルーさんは知らない方がいいのかな……


 さりげにヒドイけど同意のななのでざっつらいとー!あれは危険だと思う、ポロっと具合が日常会話にしてしまう可能性は否定出来ないし擁護も出来ない、そう言う類いの天然だ。


「話を聞く限りでは特に何もしないのはわかったけどねー、ただの犬って扱いにした方が良い訳だね?」


「はい、そうして貰えれば助かります」


「そっか、普通の飼い犬として育てればいいんですね、そしたらきゅーちゃんは誰にも狙われないんですねっ!」


 せや、特にメグちゃんには是非そうして俺を存分に可愛がってほしいですっ!


「まあ、努力はするよ、でも万が一があればあんたに責任取ってもらうからね?セリ」


 結構人扱いが荒いっすね叔母さん。


「はい、それはお任せ下さい、一応護衛としてこの食堂に人を送りますが宜しいでしょうか?私も仕事上ずっとここにいられる訳じゃ有りませんので。」


「それは構わないし人手が足りていなのは困ってたから歓迎はするけどね、給金の件はどうするんだい?出せる金はないよ?」


 が、がめつい、堂々としている恐ろしい


「それも問題は有りません、此方に迷惑はかけないようにします」


「ならいいよ、家はそれで問題ない、メグも少しは楽になるだろう?」


 ぽかーんと聞いていたメグちゃんが慌てる


「凄く魅力的な相談ですが、セリさんに負担が多きくなりすぎないか不安もあります……」


 やっぱええ子やん、純粋とはこの事か


「はは、大した問題は有りませんので、これでも結構儲からせて頂いていますから」


 儲かってるのか、メルーさんじゃなくおっさんに養って貰うのも手か?いや、メグちゃんに早々会えなくなるのは嫌だ、まのままがいい。


「メグ、腹決めな、悪いことはないし、その犬可愛がってるんだろう?飲まない手はないよ?」


 じっと俺を見て少し考えるが


「とても嬉しいですけ、セリさん、本当に有り難う御座います、きゅーちゃんは大事に育てます!」


 かくして、俺はメグちゃんから離れる事もなく一緒に居られるのだっ!!

 ……誰か忘れてる様な気がするが今は都合よく忘とこうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る