第22話 衝撃の事実

 少し急ぎ足で隠れるように城内を進んでいく隣の知らないおじさんとおっさん、何故にコソコソする必要があるんだ?何かがおかしい。


 そもそも何で犬の俺を宰相様の所に連れて行くの?俺は何か知らない内にしたのだろうか?異世界に来た事に何か関係があったんか?


 俺のかつての実は勇者でしたパターンとか今更やめてよ?いやまじでもうそんな気全然ないから、内心でビクビクしながら進んでいく。


 結構歩いた距離に有る大きな扉の前で二人が止まる、おじさんの方が扉をコンコン


「セリ様がお着きになりました」


 カチャッと扉が開く、あー逃げたい!


「失礼します、お待たせして申し訳ありません宰相様」


 中にはおっさんの言う宰相様だろうか、四十歳程の眼鏡をかけた神経質そうな男が一人ソファーの前で立って居る。


「構わない、早く見せて貰おう」


 偉そうだな、って偉いんだっけ……部屋の中に入る二人と一匹、何が起こるんだ?


「ほお、このちんちくりんな犬がそうなのか?」


 ぐっ何かこいつ嫌いだわ!可愛いお目目は封印してガンつける、眼鏡めっ!


「まだ確定は、巫女様に確認して頂くまでなんとも申し上げられません」


 おっさんー?巫女だって?確認って俺に何かしら疑問がある確定やんけ!


「ふむ、それもそうだ、連れていこう」


 お前に俺は抱かせはせんぞ!威嚇したる、可愛い歯を見せて「キュルゥウ」かぁいい?


「ん?何だ、怒っているようだな」


「ああ、言葉を理解している様なので、普段は威嚇なんてしないんですが、申し訳ありません、きゅーちゃんさん、宰相様はぶっきらぼうですけど乱暴な方ではありませんから安心してください」


 宰相がセリのおっさんを睨み付けるが超スルー、俺の中でおっさんのランクか上がった。


「まあいい、行くぞ」


 三人と一匹で外に出て何処かへ、いや巫女って言ってたな、その人に会いに向かうんだろう、巫女かー可愛いのかな?テンプレ美少女期待してます。




 また結構な距離を歩いて行くと、城とは少し雰囲気の違う場所に着いた、遠くに建物が見える、城の中に神殿って感じの四角い箱型の白い建物がある、巫女がいかにも居そうな雰囲気だなー、もう訳わからないから他人事って気分だわ。


 武器を武装した門番らしき人が宰相を見て頷く、そして神殿ぽい建物の扉を開ける、そこへ三人と一匹は無言で入る。


「巫女へ謁見だ」


 案内役だろうか、いかにも神殿に居そうな白い僧侶服を着た人へ宰相が偉そうに言う。


「お待ちしておりました、ご案内します」


 そして歩き出す、つか長いわ、馬車降りてから此処まで来るのに徒歩で三十分位は掛かってるぞ、城が大きいのはわかるけど思ってた城と違ってシンプルでゴージャスでもなかったし、神殿はひたすら真っ白な壁や家具で目に悪いし何かつまらん。


「此方でお待ち下さい、巫女様を呼んで参ります」


 神殿の中の応接間だろう所に案内された。


 俺は既にうとうと状態、おっさんの腕の中で本格的に寝そうになっていたら扉が開いた。


「お待たせしました」


 恐らく巫女なんだろう、恐らくなのは想像と違って結構な婆さんだった、夢なら覚めろ!


 覚めてたわ、現実ですわ


「巫女殿、この小さいのがそうらしいぞ、視てくれ」


 黙れ宰相、眼鏡割るぞ?おん?


「はい、セリ様その子をお預かりしてもよろしいですか?」


 巫女にも様づけされてるおっさんがオソロシヤそんなに有名なおっさんだったの?これからはちっと態度変えて媚びってみようかな?そして巫女様に手渡される俺、まあ宰相以外なら抱かれてもいい、許す、なんか変な意味に聞こえるな?


 俺を抱っこして目を瞑る、瞑想?


 他の三人はソファーに座って此方をじっと見ている、おじさん三人に見られるとか誰得だよ、早く終わって欲しい、説明もなく居るのは案外怖いんだぞ?


 暫く瞑想していた巫女のばあさんが目を開けると、目がなんかちょっと輝いて見える。


「皆様、此方の方は犬神様で間違いありません」


 ちょ急に何か言い出した、犬神?一族的な?んな訳ないのは分かるが、神は居たのか!?


「ほお、セリの予想通りだったか」


「やはりそうでしたか……」


 おっさん?何か浮かない顔している、俺急に不安になってきた、だってよーただの犬じゃないの?テンプレ神様に会ってもないんだけど?


「何処に落ちてしまったのかと不安でしたがご無事で何よりです」


 落ちる?落ちて来たの俺?よく生きてたな


「それでは、その小さいのは此処での預かりでいいのか」おい、宰相何を言うか!


「申し訳ありませんが、それは考え直して頂けませんか?この子には飼い主がおりますので」


 お、おっさーん!そうだよ俺は飼い犬なの!


「しかし、犬神様を危険に晒すのは如何なものかと、神殿でお預かりした方が安全ですよ?」


 ばあさん巫女が譲らない、やだー!俺はじたばた暴れて巫女の手から抜け出す、腕力がないおかげて抜け出せた、颯爽とちまちま走りおっさんの足元に駆け寄り隠れる。


「大丈夫です、こんなに可愛らしいのですから誰も犬神様とは考えないでしょう?」


 さりげなくディスった?おっさん…


「まあ、確かにこんなちんちくりんな犬が神とは思わんだろうな」宰相お前は黙れやー


 あっ、俺が神様テンプレに出会わなかったのは俺自身が神様だったから?


 いつの間に神様になったんだし?

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