第20話 魔法は存在したらしい

「わんちゃん痒いとこないですか?」


 今俺は体を洗われている、何で美容室風なのかわからねぇが、うっす!気持ちいいっす!


「きゃん!」あんた上手やなー


「可愛いねーいいないいなーこの子いいなー欲しいなー」


 先約済みっす!


 なんて事を内心でやり取りしながらわしゃわしゃ洗われているが流石商人と言うべきか犬用のシャンプーなんかがあったりして、これ買って帰りたいなーとか思うが一文無しである、悲しい……


「よーし綺麗になったね、フキフキして乾かそうねー?」


 おおっ、タオルも中々いい物じないっすか、買って…ふっ、いいんだ可愛い犬で満足さ。


「風よ囁け」


 はい?何ですかいきなり、と思ったら店員さんの手からそよ風が!こっこれは魔法!?初めて見たっ感動!

 

 あったんだ魔法とか、メグちゃんやその周辺の人間は使ってなかったからてっきり魔法は無いものかと思っていた。


 櫛で毛をとかしながら乾かされるがドライヤー程ではないので少し物足りない感じはある。


「はい、出来上がり!サラサラもふもふー良い毛艶だねー」


 え、やっぱそうっすか、や、照れるぅ


「刈り取ったらいい値段で売れそう……」


 逃げてー俺超逃げてー!


 わたわたし出したら店員さんが冗談だと言った、いやマジな顔してましたよ!そんな恐ろしい店員さんから逃げて部屋のソファーの影に隠れる、おっさんはよ来て。


 少し経ってドアからおっさんが入って来たので早足で近づき足元に避難する。


「おや?どうしました?怯えてます?」


「はは、セリさんすみません、中々賢い子なんですね?ちょと冗談を真に受けちゃったみたいで」


「きゃん!きゃん!」冗談に聞こえんかったぞ!


「そうなんですよ、賢い子ですから物騒な事は言わない様に」


 はーい、と返すが真剣さがない、この店員やらかすタイプか?そんな人に預けるのやめてやー?必殺ウルウルお目目攻撃をおっさんに披露する、メグちゃんに効果絶大技よ。

 

 そんな俺の目を見るがおっさんは?マークらしい、研究をもっとせねば!使命感に駆られる俺を抱き上げておっさんはお店の二階へ向かう、どうやら家とお店は兼用の様だ。


「寝る場所は毛布でいいんですか?確かメルーさんの所ではそうでしたよね?」


 ええで、床でも問題ないが、と思いつつ若干残る人間だった頃の名残が床に寝るのを躊躇わせるのだった、でも庭の芝生は最高。


 おっさんの用意してくれた毛布で丸まって具合を確かめる、やはりいい物使ってますなー買っ……寝よう……。


「きゅーちゃんさん、明日は王城に行きますからね?ゆっくりおやすみなさい」


 なんて?


 俺も行くの?何でって聞きたいのにー?もういいや、なるようになれーってんだ。


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