第6話 王都の行商人

 王都の知識豊富らしい行商人が来るまでの俺の生活といえば、食べて寝て食べて寝ての繰り返し、見る人間は未だに少女メグちゃんと叔母さん、配達人のメルーさんだけだ…

 

 店は中々繁盛しているようでワイワイ声が聞こえて来るが、客の一人位裏庭に来ないか期待してみたけど誰も来やしない、もしかして客にはルルさん恐れられているのか?


 裏庭の入り口からメグちゃんが出て来る、休憩のようだ、繁盛しているのに働いてるのは叔母さんとメグちゃんだけ、他の店員を雇っている様子はない、大丈夫なのか?

 

 そういえば叔母さんとやらは余裕がないと言っていたが何ぞ理由があるのか、食っちゃ寝していると申し訳なく感じる。


「きゅーちゃん、もうそろそろセリさんが来るからね?飼い主さん見つかるといいねー」


 おお!ついに情報源が来るようだ、どれだけ情報が聞けるか楽しみだ。


 数分メグちゃんと裏庭で遊んでいると遠くの方からガラガラと馬車の音が聞こえて来る、此方に向かって来ているようだから行商人だろうか?


 耳を澄ませていると裏庭の門の前に馬車が止まった。


「あ!セリさん来たよー、知ってるといいね!」


 俺を抱き上げたメグちゃんが裏門へ向かう、と同時に馬車からふくよかな四十代程の男性が降りてきた。


「やあ、メグちゃん、久しぶりだね?元気にしてたかい?」


 ふむ、印象は悪くない、行商人と聞くと色々な奴が居るから少し警戒もしていたがお父さん的ポジぽいぞ?


「はい!メグは元気です!」


 宜しい、何よりだ、などと考えていると行商人がメグちゃんに抱き抱えられている俺をじーっと見ている、ちょと怖い位真面目にだ。


「あっセリさん、この子なんですけど迷子なのか捨てられたのか分からないんですけど見かけた事ないですか?」


「犬、ですよね?私は見た事はないと思うんですが、拾ったのですか?可愛いですねー」


 なんと、俺の可愛さは中年男性をも虜にする様だ、少し気分が良いぞもっと誉めて遣わす


「裏路地でルルが見つけたんです!」


 うん、ほんと喰われなくてよかった


「残念ですが見かけた事はないですねぇ、これだけ可愛ければ忘れませんよ」


 よせやい照れるだろう


「…そうですか、じゃあ捨てられたのか、お母さんが育児放棄しちゃったのかな…」


 年のわりに難しい言葉知ってるね?


「その可能性もありますね、所でメグちゃん?その子はここで飼うつもりなのかい?食堂も賑わってるとはいえ余りお金の余裕はないだろう?」


 んぇ?そこまでだったの?ご飯ガツガツ食べてたけど、遠慮しなさすぎたわーすまぬ。


「はいっ!セリさんでも知らないんですね?だったら私が飼いますっ、まだきゅーちゃんも小さいので大丈夫です!」


 おっおお、何か凄い罪悪感があるんですけど、目の前の行商人はなにやら難しい顔で俺を見ている、なんぞ?


「メグちゃん、提案があるんだけど、その子私に売らないかい?」


 えっ?

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