第9話 矢
新入生の制服。身の丈に合っていない、ぶかぶかの衣装。それに違和感は感じない。真新しく目新しい、初々しいという点では、彼らと彼らが身に纏う制服とは、完全に合致していて、それ以上のおあつらえ向きはないであろうとも思える。とかく、彼らはこの時期においては平等(明らか)に、完璧なファッションデザインを匂わせるモデルとなれるに相違はない。少なくとも、親は子をそういう目で見るのである。何せ、親と言う一個存在にとって、子とはおのが人生に共存する第二の主人公であるのだから。だから人間は、親になって、つまり子を授かることによって、真に利他的になれるのである。だがその根底にあるのは、利己的な選択が結果として利他的なものになってしまうという、フロイト的に言うならば、無意識下の反動形成にほかならない。だが一方で、その効力が肉親のみならず、赤の他人と呼ばれる生命体に対して発揮したなら、我々は累進課税によってでしか釣り合いのもてないこの資本主義という経済格差の抜本的調和を、正の方向性をもつ共産をもって実現できるであろう。そこから得られるのは、精神的安寧である。この安寧が、衆愚という忌まわしき傾向を排擯するのである。ともすれば、国家とは、生産年齢人口のレヴェルに伴った発展しか遂げないとも考えられる。これは論ずるまでもない道理ではあるが。 親の慈悲に連なる利他的な傾向と反映される国家の形態。
留意点 本論文は、経済的効率性を論じたものではない。利他的な傾向に期待する経済的公正性を述べたものである。
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